十一、赤ずきん少女と……。
前話の回想。
……長いので略。
「何その手抜き!」
セレアは百一匹の犬のお巡りさんに完全包囲されてしまいました。
その百一匹の内の……えっと……たぶんずっと追いかけていたお巡りさんだと思う――その犬のお巡りさんがセレアに向かって叫びました。
「君は完全に包囲されている! おとなしく投降しなさーい!」
「同じ種類で百一匹も総出演するから地の文が困っているじゃない!」
「たとえ君が黒いノートを持っていようと怖くも何ともないぞー!」
セレアはどこかに向かって怒ったように叫びました。
「明らかに童話以外の物語のことを言っているんですけど!」
犬のお巡りさんは怯えました。
「誰と話している!? 死神かッ!? 死神と話しているんだな!」
「止めなさいよ、あれ!」
このまま放っておくと著作権に触れそうだったので、セレアは行動に出ました。
「――って、私に何やれって言うの!? 丸投げしてこないでよね!」
なかなか投降してこないセレアに犬のお巡りさんはある手段に出ました。
「君のことを聞いて、君の大切な人がここまで駆けつけてくれた」
犬のお巡りさん達の前に進み出てきたのはセレアの知らない少女でした。
少女は涙ながらにセレアに訴えました。
「私です! 人魚姫です! どうして助けに来てくださらなかったのですか!」
「あ。忘れてた」
セレアと地の文は彼女の存在を思い出しました。
人魚姫はとても悲しんでいました。
「私、この出演の為に巨大なセットをご用意してお待ちしていましたのに」
「王子様のところへ行った目的って、それ!?」
「人魚の国をかけての一大イベントが全部ムダになってしまいましたわ」
「ワケわかんないから! 私が助けに行く意味がわかんないから!」
「この結果を、私は民たちにどう伝えれば……!」
その話に感動した犬のお巡りさん達が全員泣き出してしまいました。
その内の一匹が涙を流しながらセレアに訴えました。
「君はこれを聞いても胸が痛まないのか!」
「泣いてる基準が全然全くよくわかんないんですけど!」
「君に人としての心はないのか!?」
「お願いだから説得するならもっとわかりやすい人にして!」
困った犬のお巡りさんはちょうど通りがかった花咲か爺さんに出演交渉してみました。
心優しい花咲か爺さんは出演オッケーしてくれました。
「枯れ木に花を咲かせましょう~」
「どうだ!? この人なら分かりやすいだろう!」
「意味違うから!」
「これでもまだ投降しないというなら強制逮捕するしかない!」
「――って、なんでそんな展開になるのよ!」
犬のお巡りさん達が一斉にセレアに向かってきました。
セレアは目を閉じて悲鳴を上げました。
「きゃぁぁぁぁ――
◆
ぁぁぁ……あ……あれ?」
セレアが悲鳴を上げて身を起こせば、そこは見覚えのある森の中のお花畑でした。
セレアはきょろきょろと辺りを見回しました。
「どうして私、こんなところに……」
「このまま目を覚まさなかったらどうしようかと本気で焦ったぞ」
セレアは自分の隣へと目を向けました。
その隣にはあの時葡萄酒をぶつけてしまった黒狼の少年が心配そうな顔で見つめていました。
「あなたはたしか……葡萄酒をぶつけて流血していた狼さん――」
「流血? 何言ってんだ? 童話で流血なんて、あるわけないだろ?」
「でも……」
「こんなところで寄り道をするから森の妖精がお前にお仕置きしたんだ」
「森の妖精?」
「全身白タイツの格好をした――」
「嫌ぁぁぁ!」
遠く葬っていた記憶を思い出し、セレアは悲鳴を上げました。
そんなセレアに黒狼の少年は仕方ないといった表情でめんどくさそうに手を差し出しました。
「これからお祖母さんの病院にお見舞いに行くところなんだろう? また寄り道をするといけないから俺も一緒についていってやるよ」
セレアは顔を真っ赤にして激しくそっぽを向きました。
「べ、別に――そんなつもりで言ったんじゃないんだからね!」
セレアはちらりと恥ずかしそうに黒狼の少年を見てから……。
やがて、そっと。
セレアは黒狼の少年と手をつなぎました。
その後二人は仲良く一緒に、お祖母さんの病院に行きましたとさ。
めでたしめでたし。
※ ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
大切なお時間をこの作品にいただけたことを心から感謝いたします。
本作品は一応これで完結となっておりますが、続編をただ今作成中でありまして、しばらくは構成作りに――え? いや、あの、『これに構成なんてあったんだ……』なんて呟かないでください。一応骨組みはしてるんです。……まぁぐだぐだですので説得力に欠けますが。
――と、いうわけで。続編が仕上がり次第、懲りずにアップしていきますので、見かけましたら、『まだ続いてたのかよっ!』などとツッコミ入れながら読みに来ていただけたら幸いです。