十、赤ずきん少女と三匹の子豚警察24時
目指すはこの先にある町の病院。大好きなお祖母ちゃんが入院している病院でした。
セレアは四番目の小人を背負って町へと続く道を全力疾走していました。
その後ろからは犬のお巡りさんが追いかけてきています。
「なんでいきなり急展開!?」
「止まりなさーい! 君の行く手は全て封鎖されている!」
「――って、しかもなんで私が犯人扱いされなきゃいけないわけ!?」
おそらく、通報したのは白雪姫だと思われます。
セレアは憎々しげに呟きました。
「何ゆえあの女……! こんなぐだぐだの為にそう易々と捕まってなるもんですか! ばっちゃんの名にかけて!」
セレアはスピードを上げて走りました。
背後で犬のお巡りさんが無線で誰かに連絡しています。
「マル被、第一入ります」
『こちら長男豚。第一封鎖完了いつでもどうぞ』
セレアが向かう先に検問所らしき建物が見えてきました。
何やらワラを山のようにして積み上げ、巨大な要塞を造り出していました。
そのワラ要塞の前で、一匹の豚が仁王立ちで笑っていました。
「ハハハ! この要塞の前では、貴様はもはや蟻も同然!」
セレアは不敵に笑いました。
「北風と太陽という童話をご存知?」
セレアは大空を仰ぐように見上げると、叫びました。
「北風と太陽! この要塞を壊せるのはどちらかしら?」
するとどうでしょう!
何の前触れもなく、突然強い突風が吹き荒れました。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
ワラ要塞と長男豚は北風に飛ばされて、どこかへ行ってしまいました。
犬のお巡りさんは驚きました。
「なんて女だ……。奴はこの世界の神か?」
『こちら次男豚。第二封鎖完了。小人を背負った赤ずきんの少女確認しました』
セレアの行く手を阻む要塞がまたしても現れました。
次男豚は要塞を描いたベニア板の前で仁王立ちで笑いました。
「もはやこの芸術とも思える僕の描いた要塞を前に――」
「しゃらくせぇ!」
セレアは問答無用にその要塞に蹴りを見舞って、次男豚とともにお空の星にしました。
犬のお巡りさんはまたまた驚きました。
「一見暴走しているように見えて童話の筋書きを突き進む。最強だ……あの女最強過ぎる……」
『こちら末っ子豚! 赤ずきんの少女確認! 虹の橋封鎖できません!』
セレアと末っ子豚は町に架かった虹の橋ですれ違いました。
『こちら末っ子豚、マル被がレンガ要塞に向かいました!』
犬のお巡りさんには、まだ余裕がありました。
「要塞はレンガ造り。いくら童話最強の女といえど――」
セレアは膝を落とすと、隠し持っていたバズーカを肩に構え、放ちました。
レンガの要塞は木っ端微塵に吹き飛んでしまいました。
犬のお巡りさんは叫びました。
「あり得ねぇー!」
セレアはようやく町中に入ることができました。
「やったわ! これでやっと病院に行ける! このままお祖母様の見舞いも済ませてハッピーエンドよ!」
セレアは勝利の笑みを浮かべました。
油断した――まさにその時です!
病院を目前にして、セレアの前に百匹の犬のお巡りさんが立ちふさがりました。
「そ、そんな……!」
セレアは がく然としました。
絶対絶命の大ピンチです!
――次話に続く。
「って、またッ!?」