九、赤ずきん少女と天然白雪姫
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――前話の回想。
シンデレラがセレアに向かってきた。以上。
「短ッ!!!!!」
「覚悟なさい!」
シンデレラが重い一撃を振り下ろしてきました。
セレアはそれを剣で受け止めました。
しかし、今度の一撃は弾き返せそうにありません。
もはやこれまでかと、セレアは覚悟しました。
その時です。
柱時計が夜の十二時を知らせる鐘を鳴らしました。
シンデレラはハッとしました。
「しまった! 魔法が……!」
シンデレラは女戦士から元の白雪姫の姿に戻りました。
「――って、人物自体が変わってるじゃない!」
セレアは叫びました。
何も知らない白雪姫はきょとんとした顔で小首を傾げました。
「あら? ここはどこかしら? たしか私、家で魔女にリンゴをもらって――」
「白雪姫のおかあさーん ! いったいリンゴに何仕込んだのー!?」
セレアはどこかに向かって叫びました。
白雪姫は柱時計を見て驚きました。
「まぁ大変。もうこんな時間。小人さん達が帰ってきちゃうわ」
「――って今、夜の十二時だよね? 小人さん達何十時間働いてんの?」
白雪姫はセレアの手を取り、お願いしました。
「ちょうど良かった。あなたもお料理を手伝って」
「え、ちょっと!」
白雪姫はセレアの手を引いて、家路を急ぎました。
城を出て、森に入り、奥へ奥へとずんずん歩いていくと……。
白雪姫の家にたどり着きました。
白雪姫は口に手を当て、恥ずかしそうに笑いました。
「ごめんなさい。狭くて汚い家だけど、どうぞ入って」
セレアは家にいる誰かに向けて叫びました。
「小人さーん。この家の所有権、きっと取られているよー」
白雪姫に招かれて、セレアは家の中へと入りました。
すると、――
一体どうしたことでしょう!
六人の小人が家の中で泣いていました。
白雪姫は「どうしたのかしら」と理由を尋ねました。
「一体なにがあったの? 小人さん達」
「四番目の小人がそこにあったリンゴを食べた後、起きなくなったんだ」
セレアは冷静にツッコミました。
「それ、立場逆じゃない?」
小人は泣きながら続けました。
「七人みんなで一個ずつ、カゴにあったリンゴを食べたのに、四番目の小人だけが毒入りのリンゴを食べてしまったんだ」
セレアはお城に向けて叫びました。
「何ゆえロシアン・ルーレットにしちゃったのぉー? 白雪姫のおかあーさーん!」
白雪姫と六人の小人はとてもとても悲しみました。
「――ってか、もう白雪姫が脇役の一人になっちゃってない? これ」
セレアはため息をつきました。
「ネタバレになっちゃうけど――あ、白雪姫を読んでない人は回れ右及びプラウザ・バックでお願いします。――で、その後の展開としては、白雪姫が王子様のキスで目覚める予定だったんだけど、仕方ないわよね」
セレアは口にしてはいけない白雪姫という物語の結末と、童話の禁句である近代用語をさらりと言ってしまいました。
「かと言って、私のファースト・キスで目覚めさせるわけにもいかないし……」
セレアはしばらく考えました。
ずっとずっと考えました。
そして、
「よし。病院に連れて行こう」
セレアは四番目の小人を背負うと、白雪姫の家を旅立ち、病院へと向かいました。