猫又
二〇二四年、東京。高層ビルが立ち並ぶ都会の中で、忙しい日常を送る人々の喧騒が響く。二宮は、広告代理店で働くサラリーマン。彼は毎日の激務に疲れ果て、心の拠り所を探していた。
ある日、二宮は帰宅途中に不思議な店を見つける。「eternita」と書かれた看板に引かれ、中へと足を踏み入れた。店内には古びた家具や美術品が所狭しと並んでいた。その中で、特に目を引いたのは一匹の古い猫の人形だった。
「これは?」二宮が店主に尋ねると、店主は微笑みながら答えた。
「かわいいでしょ。猫又のお人形。長寿を祝う象徴とも言われているわ。ただ取り扱いには気をつけてくださいね。」
二宮は何か心惹かれるものを感じその人形を購入した。
人形を持ち帰った二宮は、早速部屋の棚に人形を飾ってみた。大きな目が愛らしく二本に分かれた尻尾が独特な存在感をはなっている。二宮は猫又の人形を気に入っていた。しかしその夜から奇妙なことが起こり始める。その日から部屋の中で不思議な音が聞こえ始めた。まるで猫の爪が床を引っ掻くような音だった。
そして、翌朝、二宮は鏡を見ると自分の背中に猫の爪痕が残っているのに気づく。驚きと不安が募り、彼は再び骨董品店を訪ねるが、店は突然閉店してしまっていた。
日が経つにつれ、二宮の周りでさらに奇妙な現象が続いた。会社の同僚が急に倒れたり、謎の病気にかかったりする。しかし二宮自身は決して体調を崩すことなく、仕事の成果もどんどんあげていった。
二宮は何かがおかしいと思い、インターネットで「猫又」について調べ始めた。猫又は古くからの妖怪で、長生きした猫が変化する存在。人々に災いをもたらすこともあるという。
その日の夜、二宮は夢の中で猫又に遭遇した。人間の言葉を話すその猫又は、二宮にこう言った。
「僕には昔飼い主がいたんだ。でも歳をとったら捨てられちゃったんだ。あまりにも悔しいから僕はどれだけでも自分勝手に生きて長生きし続けてやるって思ったんだ。」猫又の目が急に鋭くなりこう続けた。
「たとえ他の人の寿命を奪ってでもね。」
二宮は恐怖に震えながら目を覚ますが、現実は夢の延長だった。棚に置かれた猫又の人形の目は鋭く冷たい。二本に分かれた尻尾はもはや禍々しささえ感じられる。猫又は静かに二宮に近づき、彼の耳元で囁いた。
「君も長生きするといい。その代償は高くつくけどね。」
その瞬間、二宮の視界は暗転し、意識を失った。
数日後、二宮のアパートで原因不明の火事がおきた。その様子はニュースでも報じられた。アパートは跡形もなく焼け焦げてしまい、奇跡的に二宮だけが怪我一つなく生き残り世間を驚かせていた。
二宮は今日も猫又の人形と共にあてどなくさまよい続けている。鋭く冷たい目を携えて。




