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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その18~プレゼント

作者: 天海樹

「宅配便です」

夫が業者から荷物を受け取ると、

それは奥さん宛ての荷物だった。

早速荷物を渡し

「なんか買ったのか?」

と訊いてみたところ

「何も注文してないわよ」

と不思議そうに荷物を受け取った。

送り主に心当たりはない。

恐る恐る箱を開けてみると

中には茶系の高級ブランドバッグが入っていた。

それを見た夫は怪訝な顔をしたが、

奥さんはそんなことは気にせずに

「わー、これ欲しかったやつ!」

とバッグを手にして満面の笑みを浮かべた。

そしてもう一度配送伝票を見て

自分宛てであることを確認して大いに喜んだ。

もう送り主が誰だかなんて気にしていなかった。


それから数日後。

また奥さん宛てに荷物が届いた。

包みを開けると

今度は高級ブランドのアクセサリーだった。

その次は財布、その次はワンピースと

様々な高級品が毎週のように届いた。

「誕生日でもないのに、

 こんなにもらっていいのかしら」

と、屈託なく喜んでいた。

その横で夫は、奥さんとは対照的に

ずっと怪訝な顔をするばかりだった。

しかも奥さんは、

「今度は、セーブルのコート? それとも車?

 届いたらもう最高ね!

と舞い上がっていた。


1ヵ月前。

奥さんは、

ここ最近の夫の態度がおかしいことに気づいて

興信所に調査を依頼したところ、

外に女がいることが判明した。

ただ、その報告書を夫に突き付けたところで

謝って女と別れるだけで終わってしまう。

それじゃあ怒りが収まらないと思い

ある計画を思いついた。

無論、それが上手くいったとしても

決して許すわけではないけれど、

そうでもしないと怒りのやり場がなかった。


まずは浮気相手に連絡をすると、

まずは夫から手を引くことを約束させた。

その上で

「ちょっと協力してくれない?」

と計画の手伝いをすることをお願いした。

その代わり慰謝料は請求しないという条件を付けて。

浮気女は夫とは金目当て付き合っただけで

そこに愛があるわけでもなかったので、

慰謝料を払わないでいいのならと

二つ返事で承諾した。

それを聞いて

「賢い選択よ」

と奥さんは笑った。

「その女の若さと美貌を持ってすれば、

 いとも簡単に半永久的に続けられるから」

それが何か分からないが女は

「いつまで続ければいいの?」

と訊いた。

すると奥さんは

「あの人が観念するまで」

とだけ答えた。

女は驚いて言葉も出なかった。

ただここで断る選択肢もなく、

仕方なく女が計画の内容を尋ねた。


「私が欲しいものを夫にねだって、

 それを私に送ってくれるだけでいいの」

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