((((((コドク))))))
「オ宅ノ息子ハ預カッタ 2000万円ヲ用意シロ 通報スレバ息子ノ命ハナイ」
よし、後は事前に調べておいた隣県の山でこの茶髪のガキを埋めつつ、近くのバイパスの上から現金を放り投げさせる。回収してから逃亡すれば完全犯罪だ。ガキは埋める場所まで運ぶのは面倒だから生かしておいた方がいいな。ガキを埋める穴もガキに掘らせよう。
カードローン等の借金が膨らみ、知り合いからも借りれるだけ借り、違法なところからも借りて首が回らなくなった。誰かに俺の不幸を押し付ける方法しか選択肢がない。
そう。
仕方が無い。
しょうがない。
自己中心的である事は十分に分かっている。俺も一部の借金は他人の自己中に巻き込まれたせいでこのような底辺にいるのだから。ただ幸せそうな家庭が妬ましく壊してしまいたい気持ちがあるのは事実だ。
今回の誘拐劇に用いる盗難車も準備しているのでもう後には引けない。こんな小さい頃から茶髪にされてるガキってことは親は近所で有名の噂の金持ちではあるが相当の阿呆に違いない。きっとこの誘拐への対応も誤り俺は逃げ切れるだろう。
今、俺は車の後部座席に誘拐したガキを乗せて隣県の山へ向かっている。ここからは時間との勝負でもある。
この誘拐自体は俺だけが関わっている単独犯だが、誘拐したガキには
「俺にはたくさんの仲間がいる。お前を家に返すまでの1日の間、お前が言うことを聞かなかったら、両親と妹。つまりお前の家族を俺の仲間が殺すことになっている。俺はそのような事は望んでいないから頼むから言うことを聞いていてくれ。たった1日の事だ。食事も出すし、痛い事もしない。」
と伝えている。ガキはそれにうなずき、拘束していないが俺の言う事にひとまずは従っている。
俺が信頼していた人物にされたような事を今度は俺がガキにしているのだ。
大まかに決めてあった隣県の地点で車を降りてガキと一緒に森の中に入り斜面を進む。すぐそばには県を跨ぐバイパスがありバカでかい柱が等間隔に並んでいる。20m程上を車がバンバン走っている音が柱の根本であるこの場所でもしっかり聞こえる。この辺りが金を上から投げ落としてもらう地点であることをGPSで確認する。ガキは後ろに付き従っていて、俺が何をやっているのか意味は分からないだろうが尋ねてはこない。
引き返せるのならこのタイミングまでだが俺は躊躇しなかった。そしてその地点からさらに森の奥へ。10分程入ったところでそろそろガキをこの辺で埋めようと考えていたら、、、
「もし。」
70歳ほどの老夫婦と見られる2人に話しかけられた。
しまった!
森の中にしてはやや歩きやすいと思っていたが、見回してみると遠くにぽつんと建物が確認できた。夫婦でこの山の中でカフェのような店をやっていると言う。俺は咄嗟に息子とキャンプ地の下見に来たのだと嘘を伝える。くそ、茶髪のガキの親として見られて、非常識な親だと思われてるんだろうな…。ガキの方を見てみると、ガキは無表情で否定も肯定もせず、夫婦に助けを求める事もしなかった。
「カフェの営業時間内では無いですが、お昼過ぎの時間。お腹すきましたよね?こんなところで会ったのも何かの縁。私、ジビエ料理を得意としていますので無償でいかがでしょう?捨てるのももったいないのでね。」
断っても良かったのだが、腹は確かに減っていた。どちらにせよ近場に人が住んでいるならばこの周辺でガキを埋める事、金を奪う事は考え直さなければならなかった。時間がよりかかることを見越すと食事はしておかないとな…。俺はその誘いに乗る事にし、老夫婦、俺、ガキの4人で一緒にカフェを訪れた。
こんな山の深くにあるとは思えない程に、インテリアは豪華ながら落ち着いた素晴らしい内装であった。出された水も非常に美味しい。ガキがあまりに動かないのも違和感があるので水を飲むよう促す。ただあまりここでのんびりしている訳にはいかない。さっさと食事を済ませ計画を練り直さないと。と、思っていたのだが、老夫婦ともに俺達のテーブルの近くに立っている。なぜ調理をしない?誰か他に調理担当がいるのか?と聞いてみると、
「えぇ。食材はあなた達ですからね。意識を失うのを待っています。私達お腹すきましたからね。早くしてほしいものです。」
!!さっきの水か!指先が痺れて動かない。麻痺毒?…指、腕、胴体、体全体に力が入らない。向かいに座っているガキも同様に体が動かないようで、恐怖で歯がカチカチと鳴っているのが聞こえる。そしてとうとう上体がテーブルに突っ伏し、意識が無くなってしまった。
俺の人生の結末は友人に刺されるか、借金取りに殺されるかだと思っていたが、老夫婦のお昼ご飯になるとは思っていなかった。さて、俺の物語、ついでにガキの短い人生も供にここで潰える訳だが、栄養・食材としての俺とガキがどこに行ったかという話をすればまだ続きがある。
老夫婦の胃に分かれ収められた翌日。そのカフェの建っていた山そのものがひっくり返り牙を剥く。2000年に1度。その化け物の山・伊吹という伝説生物は食虫植物のように背に乗る動植物を根こそぎ平らげる。数百haに及ぶ森や数千人の人間の住む町々はすべて更地へと化した。俺を含む、老夫婦も化け物の栄養の一部となった。
その翌日、新潟-静岡間が割れ280kmにも及び口を開ける。日本アルプスであり日本で最も高い山脈があった地帯は一転、海溝に飲まれ、その深さは10kmにも及んだ。地球という生命体の食事によって俺達の体は伝説の生物の伊吹ごと飲み込まれた。
その翌日、地球上の生命はその生涯を終える。それは圧死による。1年後、地球を含む太陽系は天の川銀河のブラックホールに飲み込まれた。2つのネオジム磁石が唐突に引き寄せあうように、ブラックホールに何かしらの意志が存在するかのように長年育ててきた天の川銀河内の恒星、惑星を唐突に引きずり込んだのだ。俺達の体…はもう
そのブラックホールによる食事が終わりに近づく頃。宇宙を回遊する、銀河を食らう渦喰みという超巨大生物が、天の川銀河に目をつけた。
「狩りや~、何かに熱中している最中が~。一番~無防備だからね~」
そう言って天の川銀河を核であるブラックホールごとペロリと飲み込んでしまった。
その様子を別次元から俯瞰で見ている子供がいる。その子供は近くにいた両親に尋ねる。
「もうこの宇宙は随分育ったからもう折り畳んで食べちゃってもいいよね?」
「ダメダメ。宇宙全体を殺す程の茶髪の毒を持った子供がいたの見てたでしょ?死んでても毒は残り続けるから食べたらお腹壊しちゃうわよ?噂ではお隣のお子さんがソレが発生してたのに親に黙ってこっそり食べちゃってまだ危篤で目を覚まさないって噂よ。」
「ちぇっ」
タイトルのコドク→子毒です。食物連鎖の中の茶髪の子がいるイメージで付けてます。ホラーで扱いやすい厳重な壺の中の蟲毒や、ガクブルする孤独へのミスリードとしましたが、何せギャグホラーなのでお察し。
魚を釣るための餌「ゴカイ」、、、ごと魚を食べるよねというゾッとする話。違うか。