四季編 5+
現実的に考えると、「ありえないんじゃね?」となる箇所もあるかと思いますが、この小説は夢いっぱい希望いっぱいチートいっぱいのファンタジーということで、どうかご了承ください。
――201×年××月04日 22:13
その動画は、某動画サイトに投稿された。
『エンターテイメント』『四季』『CG』『ファンタジー』などのタグが付けられたその動画のタイトルは、『【CG】実写そっくりのCGが出来たよー【四季】』。
サムネイルには、緑色の髪のエルフの少女。
その128×96ピクセルが映しているのは、当初、写真かと思われた。
「どうせ腐女子のコスプレだろ?」
「はいはい釣り乙」
「エルフ( ゜∀゜)o彡°エルフ( ゜∀゜)o彡°」
そう呟きながらも、とりあえずその動画をクリックするユーザーたち。
ただの興味本位。
釣られに来た。
他の動画を探す間の暇つぶし。
エルフは正義!
そんなそれぞれの理由から、ユーザーたちは、動画を読み込んでいく。
動画の説明文には、簡潔にこれだけが書いてあった。
『こんにちは、四季です。実写と見まがうほどのCGを作りました。
今私たちは、この技術を利用して、VRRPGを作っています。
その内テスターを募集しますので、その時はよろしくお願いします。
詳しくはこちら→ ttp://seasonsxxxxxxx.xxx.xx/』
そんな説明文、最初は誰も信じなかった。
当然だ。
CGの技術はまだそこまで発達していないし、それにまだどんな大企業だって、どんな研究機関でだって、VR技術は開発に成功していない。
VRなど夢のまた夢の技術なのだ。
そんなものを、こんな動画サイトなんかに投稿する人間が開発だなんて、信じるほうがおかしい。
「VRとかありえんwww」
「腐女子の妄想乙www」
「釣りだろ釣りw」
「エルフさえいればそれでいい」
だが、そこまで宣言する動画に、ユーザーたちは興味を持った。
そこに混じる感情が何であれ、ユーザーはその動画に感心を寄せた。
そして、疑いながらも、再生ボタンをクリックする。
無音のまま動画に映し出されたのは、どこまでも広がる、白い空と黒い床。
それだけで、その世界が現実とは違うのだと、ユーザーは認識した。
まさか本当にCGなのか?
そんな期待を抱くユーザーたちは、次々にコメントを残していく。
『1get』『釣られにきますた』『支援』『期待』『wktk』『全裸待機中』『エルフ( ゜∀゜)o彡°エルフ( ゜∀゜)o彡°』
そして、映し出されるものたち。
その空間を縦横無尽に飛び回る、亜麻色の髪の妖精。
その空間で自由自在に炎と踊る、褐色の肌の少女。
その空間に一閃の光を飛ばす、無機質な美貌の女性。
そして、金色の光翼を広げ、画面をじっと見つめてくる、深緑髪の美麗なエルフ。
どう見ても、何度見ても、本物にしか見えない映像。
コメントを忘れ、人々はそれに魅入っていく。
それは、たった5分間の、奇跡。
最後に流れた『実はこの動画のキャラクターは、私たちが動かしています。VRの部分は殆ど完成していますので、あとはRPGの部分だけです』という言葉。
奇跡の目撃者のほんの一部は、その有り得ない言葉すらも信じた。
どんなにすごいCGが作れたからと言って、VRに結びつくことなどないというのに。
だが、夜なことも手伝ってか、それくらい彼らのテンションは異常だった。
『すげえwwww』『え、操作……?』『嘘だろ?ww ……嘘だよな?』『てかVRとか抜きにして普通にすごくね?』『これマジ?』『……ど、どうせ全部合成だろ?』『合成だとしてもすごくね?』『エルフだけじゃなく機械娘だと……( ゜Д゜)? ……それでも俺はエルフだ!( ゜∀゜)o彡°』『マイリス余裕でした』『機械っ娘萌ええええええええ!』『SUGEEEEEEEEEE!!!』『ちょwww超技術wwwww』『■越えたんじゃね?wwww』『←■の方が凄いに決まってんだろ』『←信者乙』『つか四季って何者よwwww』『←どうやら4人組のサークルらしいが』『←素人ってこと? やばくね?』『GGGGGGGJJJJJJJ!』『←もちつけwwww』『※鳥肌注意※』『くぁせdrftgyふじこl』『このCGでミク作ってくれ!』『えーりんも頼んだ』『つかもうこれ三次元じゃね?』『つ ○○○○』『zip希望』『高画質希望』『合成乙』『合成ってこんなに綺麗に出来んの?』『つかただの特撮じゃね?』『やっべえ超ハリウッドwww』『この映像だけだと何とも言えないが、特撮でも普通にすごい』『背景的に特撮は無くないか?』『じゃあ何だよ?』『合成?』『全然わからんことだけはわかったwww』『すげーとしか言えない』『テスター募集したら絶対応募する!』『超期待』
ヒートアップするコメント。
『キモイしwww』『ただの特撮だろww見る価値なしww』『自演乙』『工作動画』『クズ動画注意』なんていう荒しコメントも当然蔓延るが、しかしそれ以上に支援コメが増えていく。
増えていく再生数とマイリス数。再生数は1万を軽く突破し、2万、3万とその数を積み上げて言った。
タグも、どんどんと付け替えられていく。
『謎の技術』『超技術』『ミコミコ技術部』『野生のプロ』『野生のFF』『野生の■』『野生のハリウッド』『プロの犯行』『液晶が邪魔』『科学の限界を超えてやってきた』『初回※無し推奨』『2.8次元』etc...
また、四季の運営するホームページのカウンターも、加速度的にその数字を増やしていった。
ホームページには大したことは書いていない。
ただ、四季と四季のメンバーの説明、それと開発中のVRについてと、投稿した動画だけが載せてある。BBSどころか、拍手やメールフォームすらないサイト。
日記は「工事中」になっており、人々はそれが開通するのを心待ちにした。
動画内は、祭りとなっていた。
コメント職人が現れ、4人の周りに星や花、ハートを散りばめた。
また、早すぎるAAが出来上がり、『ジェバンニww』『職人すげえwww』などのコメントで流されていく。
――201×年××月05日 18:52
投稿から僅か20時間と39分後。
その動画は、速すぎる10万再生を達成した。
『10万オメ!』『はええええええええ』『キターーーーー!!!』『殿堂入りオメ!』『ktkr』『10万記念にミクを!』『←ボカロ厨うぜえwwww』『っひょおおおおおおおおおおおおおwwwwwwww』『すごすぎる……』『きたああああああああああ!!!!』『お前らの愛で見えないwwww』『俺は今歴史の瞬間に立ち会ってる』『四季はじまた!』『次元が違うな』『VR楽しみにしてます』『気が向いたらまたCG投稿してくれー!』『いやっほおおおおお!!!wwww』
沸き立つ、動画。
人々は、四季の反応を待つ。
――そして視点は、少女たちへと戻る。
後々調べたら、今使われているCG技術とか合成技術って、もう殆ど3次元と変わらなかったりするんですよね。
……んなこたぁいいんだよ!(AA略
まあ、この小説内では、まだあんまり発達していないってことで。