魔法と魔力の関係
妖精の世界では、「魔法」については
古代から議論・研究され続けているが。
未だにその全貌は明らかになっていない。
しかし、その性質がまったく不明ということではない。
断片的にわかっていることも多い。
魔力との関係:
「魔力」とは、魔法を使うための力である。
魔力の無い生物は、魔法を使うことができない。
「魔力」とは、魔力の無い生物で例えれば「体力」のようなものである。
魔力は、魔法を唱えると一時的に消耗するものの
時間の経過によって元来の持つ力まで回復していく。
魔力の回復量は、個々に差があるものの
一般的には、一晩ほど休むことで、おおよそ最大まで回復する。
「魔力」と「体力」の決定的な差は
「魔力」は、産まれた時点でその最大の力が定まっており
そこから増減することはない、ということである。
「魔力」は、この点では、魔力の持つ生物が持つ
その生物の能力を決定する、遺伝情報のようなものであるとも言われている。
そして、魔力には奇妙なメカニズムが存在している。
魔力を持つ生物(妖精)の親は、その子供を産む際に
両親から子供に魔力を分け与える。
これにより、親妖精は、子供を産むことで魔力が減少する。
出産のとき、魔力を使い果たしてしまえば
親妖精も消滅してしまうため、子供の引き継ぐ魔力の量は
ふつう、無意識にコントロールしている。
この性質により、妖精は
多くの子供を産もうとすることはあまりなく
妖精の寿命は数百年(長い個体で数千年)
あるが、比較的晩婚のケースが多い。
兄弟姉妹が多い妖精の家族であっても
子供ひとりひとりの魔力が少なくなる傾向にある。
近年では、この魔力を引き継ぐ量は
認識さえしていればある程度、調整できることがわかっている。
この、子供に魔力を引き継ぐために使用する魔法は
「分配の魔法」と呼ばれており、妖精の病院で
どれくらい子供に分配するのかを事前に決めておくことも多い。
反面、この「分配の魔法」で引き継がれる魔力の量は
そのまま「親妖精からの愛情の量」と捉えられてしまうことも多い。
親妖精から引き継がれた魔力の量によって
その一生が決まってしまうためである。
このメカニズムは、妖精の社会の基盤となっているが
種族としての限界を暗に示している。
親妖精にもある程度の魔力が残され
子妖精にすべての魔力が引き継がれるわけではないということは
つまり、代を経るごとに、妖精族の持つ魔力の総量は段々と減っていき
やがて枯渇するということである。
これについて、本能的に、あるいは明確に気付いている妖精も多いが
社会的には大きくは触れられていない問題である。
みな、この現実を直視したくはないのだ。
あるいは、未来の話であって、自分たちの代には
関係ないと思っているのかもしれない。
また、「消えた魔力はどこへ行くのか」という問題は
神話の時代から議論され尽くした話題である。
結論から言えば、消えた魔力は
そのまま世界から消失することがわかっている。
これは、人間世界で
一般的に言われている物理法則とは異なる。
もしかすると、宇宙のどこかには
引き継がれているのかもしれないが
自然界に還元されたりすることは
決してないことは明確にわかっている。
これは、古代に生きていた、魔力を持った種族。
たとえば、かつて栄えた種族である「魔法使い」「竜」「神」などが
魔力の枯渇によって徐々に衰え、現代では滅んでいること。
そして、現代においても「魔力を持った新しい種族」は
あらたに産まれていない現実が物語っている。
妖精の魔力とは、人間でいう体力である。
いつか魔力が枯渇し、生きるだけの魔力がなくなったとき
やせ衰えた妖精は消滅し、生きていくことができない。
また、現在の「人間界の生物」は
このメカニズムを克服していると言われている。
人間界の生物は、もともと「魔力」を持たず、魔法も使えない代わりに
魔力がなくても生きていけるように進化したのだ。