5 愛の園と尋問
体力測定の次の数日間は、ユバルやジミーたちを含めた一年生たちの実力試験が行われた。この数日間、一年生たちは試験という作業に一心不乱に集中する時期らしかった。彼らは、試験を受けた後に、試験内容と自らの答えを確認し、また次の日の試験に備えて勉強という作業をし続けるのだった。
ユバルにとっては、試験内容が簡単であるためにこの数日間は、今までの分析を深める機会となった。
「私を通じてジミーが覚醒しうることはわかった。でも、そのきっかけにはさまざまな事情が絡んでいる。彼の周りで何かが起きた時に、それがジミーに伝わって....」
彼女はそこまで考えたのだが、それ以上のことは、まだカオスのままだった。
他方、ヤバルは、ジミーについての別の調査方法を研究しなければならないと感じられていた。
「破戒僧ジミーは、女性の裸身で激高するかもしれないし、気絶しつつ何かをするかもしれない......それも、気絶したままでもことごとく我々の作戦の邪魔をしている。何らかの潜在能力があるかもしれない。ただ、これだけの情報では、敵となると預言されているジミーについて、まだ情報が不十分なままだ......」
ヤバルは、ジミーが何らかの能力を好きな時に発揮できると考えていた。それゆえ、ヤバルは、引き続きユバルやジミーたち一年生たちの実力試験の様子と結果を観察し続けた。だが、ジミーはヤバルの予想に反して、まさかの最下位の結果に終わっていた。これほどに能力の無さが明白になったことで、ますます破戒僧ジミーと言われた人物が分からなくなり、今後どのような作戦をとるか、結論が出なかった。
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ヤバルは、捕獲部隊分析指揮官として、破戒僧ジミーに関係した人間たちを対象にして、尋問してさらに情報収集を図ることにした。とりあえず、ヤバルたちには、対象とする人間たちを尋問する手法を研究する必要があった。そこで、ヤバルはユバルを伴って、今まで捕獲された原時空人類たちがどのようにしてヤバルたちカインエルベン族に心を許すようになったかを調べるために、彼らが収容されているいくつかの自由恋愛花園を訪れた。
最初に訪れたのは、ネンドールエルベン領の地、一年中温暖な地に設けられた自由恋愛花園だった。ここには、五年前に、異常執着者と呼ばれた者たちが、煬の首都北安からこの世界に連れて来られ収容されていた。
ユバルは、そこで彼らが来たばかりのことを思い出し、そして今の風景を考察した。
今では、彼らは彼らなりの生活を尊重されている。しかし、この自由恋愛花園へ連れて来られたばかりの彼等は、非常に強い反発を示していた。
「この施設内で待ち受けていた男女たちは、何者ですか」
「あ、彼らは、自由を愛するあなたたちと同様に、自由を愛する者たちです。仲良く交流し、自由を謳歌してください」
この答えと同時に、待ち受けていたエルフ(カインエルベン族)の若者たちは、羽織っていた上着をとり、男たちは連れて来られた女性に、女たちは連れて来られた男性に、それぞれ手を広げて施設へと引き入れて行った。
「さあ、この世界に降り立った女神たちよ。ここに居る僕たちホストは、あなたたちに仕える下僕です。さあ、麗しき女性たちよ。自由を謳歌しましょう」
「さあ、この世界に降り立った勇者たちよ。私たちはあなたたちのメイドです。めでるも苛めるもご自由になさってください。」
だが、しばらくすると、施設の各部屋からは原時空人類たちの怒号と悲鳴とが挙がった。
「何よ、このホスト達は? 私を裸にして何をしようというの?」
「女たち、僕に近づくな。相手かまわずの愛なんて、おかしいぞ」
確かに収容されていた男女たちは、自由を愛した。しかし、彼等は政治犯であったがゆえに、何が自由として大切にされなければならないのかを十分に理解していた。彼らからしてみれば性的な自由は単なる乱れにすぎないものであって、それらは自由とは何ら関係の無いものであると思ったのだろう。彼らは、施設を訪れて彼らを見に来たヤバルたちの前で、この施設で与えられた自由恋愛にたいして強い拒否感を示した。
「僕たちを馬鹿にしているのか。こんな下品な恋愛などあってたまるか」
「私たちは、ある特定の一人を一生のあいだ愛すると誓ってから愛を交換するのよ」
彼らは、ヤバルに対して公然と自由恋愛を否定して見せた。それほど彼らのなかでは特定の相手に添い遂げることを、強く意識していた。それゆえ、5年前からは、彼らはカインエルベン族から彼らそれぞれが選んだ特定の配偶者を選ぶことが許されのだった。
カインエルベン族から特定の配偶者をあてがうにあたり、ヤバルは水面下でカインエルベン族の配偶者候補に十分な準備をさせておいた。それは、カインエルベン族の配偶者が相手に愛されるように導くため、配偶者候補に房中術を体得させたことだった。カインエルベン族の配偶者に原時空人類の心を向けさせるには、それだけの艶かしい接触が必要だ、と考えた上での懐柔手法だった。
ヤバルが教え込んだ和合房中術は、極めて良く構成されていた。
ヤバルが体得させた和合房中術の具体的な流れは、おおざっぱに言って以下のようなものだった。
配偶者候補となった彼らは、まず、指先へのキスで賞賛をしめす。
「あなたは素晴らしい方」
そう言ってから、相手が心を許し始めたところを見計らって、腕へのキスで「恋慕」を示し、続けざまに手のひらへのキスで懇願をしめす。
「その貴女へ僕はすっかり虜になりました。どうか私にあなたの愛を示してほしい」
さらに脛へのキスで服従を現し、頬へのキスで信頼を示すのである。
「ああ、私はあなたのもの。あなたに属するもの。どうかわたしを側へおいてほしい」
これらの手順を踏むと、相手は心を許し、肌にタッチし合い、ボディランゲージで感情を伝え合うほどの仲になっていく。こうなれば、後は心からほとばしる思慕を髪へのキスで表し、体からにじみ出る欲望を手首へのキスで伝え、耳と首筋へのキスで誘惑に至ると、もう後は唇へのキスで情愛を伝える段階に至る。
こうなれば、二人だけの愛の行為に至るのだった。そして、愛の行為の後には額へのキスで祝福を現しつつ、鼻へのキスで慈しみを表す。この順序だてられた術式によって、カインエルベン族から来た配偶者候補は、原時空人類の相手が心を許すように誘導できたのだった。
こののち、その施設に連れて来られた原時空人類のすべてが、子を成した。今回、ヤバルたちが再び訪れた時には、ペアごとに4~5歳になる子供が1~3人はいた。しかも、その子供たちはいずれもカインエルベン族特有のとがった耳、透き通った目と肌と髪を受け継いでいた。
「施設長、此処ではペアになってから、子供が確かに与えられたようですね」
「ユバル殿下、あなたの目論見通りにことが成りました。さすが殿下、素晴らしい考察と実行でした。そこで、相談を申し上げたいことがありまして......」
施設長はなかなか切り出しにくいように、声を低くした。ヤバルは、仕事柄部下たちのこのような声には敏感だった。
「どうしたのだ。遠慮なく言え。すべては私があんたたちに銘じて得た結果だ。成功も失敗も、私のものだろう」
「は、では、......実は、此処の子供たちは全て4歳以上です。実は四年ほど前から、子供がパタッと誕生しなくなったのです」
施設長の報告通り、子供たちはすべて4,5歳だった。4年ほど前から少し前から子供が生まれなくなったことで三歳以下の子供がいないことが、ヤバルやユバルの心を暗くした。それでも懐柔手法が有効であることを発見できたのは、ヤバルにとって今の任務上では満足の行くことだった。
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次にユバルとヤバルが訪れたのは、ランクウェンディ領だった。そこは、秘書官ベラティス・ランクウェンディの地元で、農作物と魚介類の豊かな海岸地方である。そこにある自由恋愛花園には、躺平と呼ばれたやる気のない若者たちが、煬の北安にあった是正院という収容施設から連れて来られていた。
この施設の管理者の報告によれば、彼らに対しての扱いは、今でも変わらないという。躺平と呼ばれた者たちが此処に収容されたばかりの時、収容施設では常時、傍にまたは隣に異性がいるように図ったという。しかし、彼らは利益がないと思ったらしく、一切関心を示さずに警戒感を示して、自らは動かなかったらしい。施設長はその時のことをヤバルたちに語った。
「ここの各所で近寄ってくる男女たちは誰だ?」
そのとき、躺平たちにこう問いかけられた此の施設管理者は、躺平たちの傍に近づけていたエルフ族の男女たちからの誘いかけの意味を込めて答えた。
「彼らは、みなさんにどのような奉仕をしようかと、みなさんの反応を見ながら考えているのですよ。みなさんは、此処では何をする必要もありません。ただ、ただ横になっていてください。そうすれば、女性には美男子たちが、男性には美女たちが、奉仕に伺います。その時になったら、彼らからのボディータッチに応えてください。そうすれば、彼らはあなたたちに対して何が必要なのかを悟ってくれますよ」
「なんで私たちに色目を使ってくるのかしら?」
「それは、みなさんに自由の一つを分かち合いたいという働きかけですよ。みなさんは、今本当の自由を得ようとしています。皆さんは今まで寝そべりによってあらゆる束縛に抗議してきました。それによって、自由は得られましたか。ここでは、目の前に自由があります。目の前の異性と情を交わしてみてください。そこには、必ず自由を見出せるでしょう」
この説明で、躺平と呼ばれていた原時空人類たちは、彼らの周囲にいる薄着の男女たちに目をやった。一応は心を許したように見えた。しかし、躺平たちはそれ以上関係を持とうとはしなかったという。
その時のヤバルたちは、彼らを後ろ手に拘束して、数人の異性で囲む強制的房中術を導入した。すると、躺平たちは動けないまま、強制的に性的接触をしてきたカインエルベン族の異性達との間に子を成したという。
施設の担当者によれば、それから5年経って今回ヤバルたちが訪問した時になっても、躺平たちは無気力のままであるという。いまでは、以前の強制的房中術によって促せば繁殖行動は行うものの、それ以上のことを為そうとはしないところは、以前と同じままだと報告されていた。
そこでヤバルは、洗練された最新の強制的房中術を此処で尋問術として活用することを考えた。早速、施設内ではその新しい方策によって躺平たちにアプローチをかけることになった。ヤバルとユバルはその観察をすべく、ランクウェンディの現在の自由恋愛花園の一室を覗き込んだ。
その施設内の確執には、男女一人づつが後ろ手に拘束されたまま寝かされていた。
「また、縛り付けるのかよ」
「放しなさいよ」
彼らは解放を求めて暴れていた。従前どおりにこの段階で、彼らそれぞれに催淫剤を強制的に飲ます。すると、彼らの体温が上昇し、次第に男女全員が悶え始めた。新たな強制的房中術により、このタイミングをとらえて彼らの二の腕と太腿を全て固定した。無気力な者たちであるとはいっても、万が一逃げられては困るため、全てを固定したままでこれから施術をすることになっていた。
「もう、こうなっては...」
「だめ、もう、ダメ。限界」
この段階になると、彼らはうめきと悲鳴を上げ始め、固定された腕や足を突っ張り、首を振り始めた。さらに体温が上昇すると、男女とも火照った肌がしっとりと汗ばんだ。
「さあ、施術師たちをあてがえ」
その指示とともに、各部屋にカインエルベン族の男女たちが入ってきた。彼らはハードな房中術を体得した者たちで、入室するとすぐに二人一組で一人の男、もしくは女に施術を施しはじめた。彼らは、男や女の敏感な部位、例えば太腿の付け根に向けて、もしくは例えば胸の敏感な所に向けて、指先を滑らせたり押したりしはじめた。
「あふ」
「うう」
指先の所作を繰り返すと、拘束された男女とも次第に股間を緩め始めた。こうなると、下着ごしに何が起きているのかが分かる。そこで施術者たちは、容易に敏感な所に徐々に手を滑り込ませ、触れていった。その先には、施術者が狙った通りの柔らかい非常に敏感な秘所が隠されている。それを表すように、縛られている躺平の男女たちは、先ほどの苦悶の声が悲鳴に変わっていた。
「ハウ」
「う、う」
この段階に至れば、施術者たちは、周辺に優しく時には強く、さらには激しく十分に刺激を与えた。躺平たちは、徐々に激しい反応を示し始めた。施術者はその状態を冷静に確認しつつ、さらに強い刺激を与える。もちろん拘束された躺平たちはしっかり固定されており、逃げられるはずもなかった。
こうして、拘束された男女は固定されたままで激しく悶え始め、激しい性的興奮に基づいた体の変化を示した。この後は、男女とも施術者とともに複数人での激しい愛の交換が始まった。
この洗練されたアプローチは、数日間繰り返された。今では躺平たちは、縛られたままで、いつも快感を待つ、さらにはそれを欲するために、様々な尋問や要求に応じる姿勢に変わっていた。
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ヤバルとユバルは、過去の捕獲収容者たちを収容した二つの施設見学をしたものの、詳細な説得懐柔手法をはっきり構築出来てはいなかった。それでも、おおざっぱな類型化は可能であり、おそらくは、二つに分けられるだろうという推論も可能だった。
衝動的もしくは意識を高くない者には、強制的な刺激を与えて快感におぼれさせればよいだろうと、という一応の見立てができた。他方、意識の高い人類たちには、特定の相手に操を立てようとする意識が高すぎ、扱いづらい奴らだと判断した。
これらの事情を考察した結果、ヤバルたちは、今後、捕獲作戦の際には、衝動的もしくは意識の高くない者たちだけを対象にする必要があると、考えた。その判断を基に、ユバルは、以前葛飾の地でジミーに壊滅させられた房総族の残党を捕獲した。また、その後ジミーが中学卒業後、彼が荏原へ向かう途中で半殺しの目にあわせた、ハングレの集団をも捕獲した。これら二つのグループを、破戒僧ジミーに関して何かしらの情報を得る為に、この異次元へ転移収容したのだった。
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ユバルは、ウーマンヤール領の谷あい深くにある施設へ、捕獲収容されたばかりの房総族残党たちの様子を見に行った。
そこには、15歳になった妹のモゼスト・ネフィライム殿下が指揮官として派遣されていた。彼女は皇帝の下で三女として育てられたのだが、生物学的両親は原時空人類であるため、成長が非常に早かった。
「モゼスト殿下、第二皇子ヤバル様 第一皇女ユバル様がお着きです」
衛兵がそう告げると、モゼストは付き人に声をかけ、謁見の間へと出かけて行った。
「ノイ、サネを房総族たちの施設で準備するように、指示をなさい。私たちは寿命が短く成長が早いゆえ、今のうちに十分に意思疎通を図っておかなければ」
「はい」
ノイと呼ばれた付き人は、執務室から外へ駆けだしていった。モゼストはその姿を見送りながら、彼女自身は謁見の間へと出て行った。ここでは、職員全てが女性のエルフ族であった。それは、迎え入れる房総族残党が全て男であり、不要な嫉妬心を起こさせないためだった。
ヤバルとユバルはすでに謁見の間に着いていた。今日の仕事が捕獲部隊と監視部隊の仕事であるため、ヤバルとユバルはそれぞれの制服で来場していた。
「兄上、姉上。ようこそ。ご指示の通り、ここに収容した奴等に対する説得懐柔手法を準備してあります」
「早いね。結構な人数だから、施術者を揃えるのが大変だったと思うが」
「いえ、問題なかったです。元々、サネやノイをはじめとした我々の仲間達には、複数の男女間での愛の交換に深い経験と知識がありますから。皆、早く習得できたようです」
「そうか、それは今後に参考となる話だ。よくやった」
ヤバルはモゼストの準備の仕方が首尾よく行われていることに、満足だった。
さて。モゼストは、兄姉達の歓迎会や連絡事務をこなしたのち、ヤバルとユバルとを房総族たちの収容施設へと案内した。そこにはノイとサネの二人が待機していた。これから、ヤバルとユバルが考案した説得懐柔手法を試すことになっていた。
この日、すでに房総族残党は施設内の個室に収容されていた。入所以来行われていたのと同様に、この日も、個室周辺の廊下、また彼らの周辺などにはカインエルベン族の水着の美女たちが展開していた。房総族残党たちは、それに強く反応するほど、息がよかった。特に、重田泰一や明間利美達リーダー格は、積極的に水着の美女たちにモーションを掛けていた。
「へえ、美女ばっかりだねえ」
「そうよ。あんたたちもいい男じゃないの? ねえ、あそばない?」
「え、俺たちと遊んでくれるのか?」
「そうよ。この世界の戒律は、複数の男たち複数の女たちみんなで、自由な愛を全うすることよ」
「ほお、それはいい戒律だねえ」
「あんたたちはこの戒律を敵視しているのかと思ったわ」
「え? 俺たちは大歓迎だぜ。ここまで逃げて来られたんだ。もう、イサオもハングレたちももいないんだ。たのしませてもらうぜ」
彼らの反応を確かめた彼女達は、水着での絡み合いを仕掛け、さまざまに問いかけながら時間を過ごした。彼らはことごとく美女に魅惑されていた。ただし、それ以降は、それほど簡単ではなかった。
「あんた、他の女たちとは違うな。何しに俺たちのところへ来たんだよ。俺たちと愛の交換しにきたのか? 違うよな?」
先ほどまで活きのいい反応を示したはずの重田泰一や明間利美の二人は、水着の美女たちとの遊びには反応したものの、そこに紛れ込んでいた監視部隊係員の口調にはすぐに警戒感を示し、口をつぐみきったあとは何もしゃべろうとはしなかった。
この段階になって、ヤバルとユバルの考案した説得懐柔手法を試すことになった。
そのために、房総族残党たち全員は、一人づつが後ろ手に拘束されたまま寝かされた。まず、あれら一人一人には催淫剤を強制的に与えられた。この薬剤により、そのうちに体温が上昇しはじめ、次第に男たちは悶え始めた。そのタイミングをとらえて、彼らの二の腕と太腿が全て固定された。腕力のある彼らに万が一逃げられては困るため、体のすべてが固定されたのだった。
この段階になると、彼らはうめきと悲鳴を上げ始め、固定された腕や足を突っ張り、首を振り始めた。さらに体温が上昇すると、男たちは火照った肌がしっとりと汗ばんでいた。
「あ、これは何だ。放せ。自由にしろ」
「なんだよ、これは?」
すると、ノイとサネに指示を受けたカインエルベン族の女たちがその部屋に入ってきた。彼らはハードな房中術を体得した者たちで、入室するとすぐに二人一組で一人の男という組み合わせで施術をはじめた。彼らは、男の敏感な部位である太腿の付け根に向けて、指先を滑らせたり押したりする。それを繰り返すと次第に拘束された男たちは、股間を緩め始めた。
「う、う、くはっ」
こうなると、下着ごしに何が起きているのかが分かる。そこで施術者たちは、容易に敏感な所に徐々に手を滑り込ませ、触れていった。その先には、施術者が狙った通りの柔らかい非常に敏感な秘所が隠されていた。それを確かめると、施術者たちは、周辺に優しく時には強く、さらには激しく十分に刺激を与えた。
「さあ、我慢しなくていいのよ」
「よく味わってね。今を味わうのよ」
「後のことは考えないのよ。今を楽しみましょう!」
すると拘束された男たちは、徐々に激しい反応を示し始めた。
「う、もう、勘弁してくれ。確かにもう怖い奴らはいない。だから、もう十分に楽しんだ。だから...もうやめてくれ...」
施術者は彼らの反応と興奮の状態を冷静に確認しつつ、さらに強い刺激を与えていく。もちろん拘束具はしっかり固定されており、逃げられるはずもなかった。
こうして、拘束された男たちは固定されたままで激しく悶え始め、激しい性的興奮に基づいた体の変化を示した。この後は、男とも施術者とともに複数人での激しい愛の交換が始まるのだった。
このあと、洗練されたアプローチを数日間繰り返すことによって、残党たちは縛られたままですっかり抵抗する意志を失い、快感を欲するために様々な要求に応じる姿勢に変わっていた。
一連の働きかけにより、ヤバルとユバルは彼ら房総族の残党たちに尋問を始めることができた。たしかに、彼らは確かに従順に応じた。しかし、彼らが破戒僧ジミーに関して有していた情報は、ただ兄イサオの保護下にあった変人であり、ジミーが彼ら房総族を壊滅させた不思議な現象も、イサオが怪物であるから守られただけだということだった。
そのご、用済みとなった彼らは、従来から連れて来て躺平と呼ばれた者たちと同じような扱いをした。つまり、自由恋愛花園でカインエルベン族の繁殖のために活用されたのだった。
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新小岩のハングレたちは、イサオの警告を軽視していた。ユバル達にしてみれば、彼らがこれ以上破戒僧ジミーを怒らせてはならなかった。そこで、ヤバルたちは、ファラスリムの領海にある孤島の収容施設に、新小岩のハングレたちすべてを捕獲収容させていた。
ヤバルは、モゼストによる尋問の手際の良さを高く評価した。そこで、ヤバルとユバルは、モゼストを、新小岩から連れ帰ったハングレたちの尋問に活躍してもらうために、かれらが収容されているファラスリム領へと連れて行った。
その施設では、ウーマンヤール領の施設と同様、水着のカインエルベン族の女性たちをハングレたちの周囲に侍らせていた。彼らは房総族とは少し異なり、彼女たちに対する積極性がつよかった。というより、欲望をそのままたぎらせ、鬼ごっこを始めていた。
「まてよ」
「いやよ」
ヤバルたちは、彼らがこのまま繁殖行動へと走るのではないかと考えていた。だが、彼らが真に欲したのは、大人の女たちではなく、彼らと同じ年代のノイとサネ、そして指令のモゼストであった。
彼らは急に暴動のように攻撃的な姿勢に変わり、ノイとサネ、そしてモゼストを施設の奥に引っ張り込み、さらには侍らせていた水着の女性たちを人質に取って立てこもってしまった。
ヤバルたちが駆けつけた時には、すでに施設の周囲には彼らが作り上げたバリケードがあり、どこから仕入れたのか、施設内に備え付けられていた魔剣、巨人剣、火炎剣、槍剣を持ち出して完全武装をしていた。
ユバルは彼らの攻撃的で衝動的な行動パターンを、思い出していた。このままでは、彼らが人質を力づくで押し倒すこと、さらには殺すことにも躊躇しないことは確実だった。そこには、戒律が命ずる自由な愛が欠如しており、明らかな戒律の破壊行為だった。
「まさか、あいつらが破戒僧だというのか」
ヤバルはそうつぶやいたが、ユバルは首を横に振った。
「いいえ、確かに戒律破戒でしょうが、これは単なる破戒ではなく、暴力的な行為です。我慢なりませんね。このままでは妹のモゼストの身も危うい。ここは私に任せてください」
ユバルは、施設に残っている魔道具を見て回った。そこには、不毛土回収装置のほか、干将、莫耶、魔槍(ゲイボルグ、魔槍、魔楯、魔鎖網だけが残っていた。ユバルは、しばらく考えた上で、まず不毛土回収装置によって傀儡くぐつ:龍ゴーレム、騎馬騎士ゴーレム、兵士ゴーレム、飛翔体ゴーレム を形成した。そして、彼らに将、莫耶、魔槍(ゲイボルグ、魔槍、魔楯、魔鎖網を持たせたうえで、モゼストたちが監禁されている中央監視ルームに空中転移させた。これらゴーレムたちによって、ハングレたちは一気に壊滅し、彼らは一斉に逃げ出した。
ユバルは、モゼストたちを無事に救い出すと、モゼストは怒りに燃えて、サイキックによって逃げ回るハングレたちを押しつぶし、残った中心人物に対して、彼女のサイキックによって彼らの脳内のスキャンをした。
こうして分かったことは、「イサオがジミーを恐れていたこと」、「ジミーが初めて激高して粉砕した直後、イサオがなにかを奪われたと感じたこと」、それで「愚かなままのジミーが母親の助力で逃げ出し、伯父ラバンのいる荏原へと逃げたこと」、しかし「ジミーは愚かなままであり、横取したというのは何かの特殊な能力だということ」だった。
施設占拠事件に至ったことにかんがみ、ユバル達は方針転換をせざるを得なかった。今後、ジミーの関係者たちをさらってきたときには、彼らを興奮状態に持ち込んだうえで、彼らをサイキックでスキャンすることとした。興奮状態で活性化した脳であれば、すべての脳をスキャンできることを利用して、情報をすべて取り上げられることが分かったからだった。
また、その後の捕獲者たちを繁殖に使うことは、従来通りだった。
この後、煬の首都「北安」の指導階級者たちの収容されていたファラスリム領の収容所を訪れた。だが、そこにいたはずの捕獲された者たちは、全てが連れ去られていた。ユバル、ヤバルは、彼らがその傲慢さゆえに、繁殖に使われてしまったのだろうと、推察したのだった。
なお、これまでに捕獲二グループの尋問によっては、ジミーが激高する真の原因は結局わからなかった。ただ、破戒僧ジミーが口にするフレーズや行為が、カインエルベン族の様々な作戦行動や組織に混乱をもたらすため、彼による被害を何とか最小限に抑える必要性はより強く感じられたのだった。