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戦い、そして出会い~後編~

 アジェスタが振りぬいた二本の魔剣は、俺の黒妖剣によって阻まれていた。


力の鬩ぎあいが続くも、互いに距離を取り、再び剣を交える。その回数は二千を超えた。双方息を切らし、軽い傷はあるが、まだ余力を残している。


 「まだやる気か、俺と」

「オマエも中々だったぞ。名は覚えておこう。だが―これで終わりだ!」


そういってアジェスタがスタートを切る。次の瞬間、アジェスタが眼前に迫っていた。

(どういうことだ…?〈空間移動スイシャル〉を使った素振りもなく、ただ目の前に現れただと…?)


思考を巡らせつつも俺はアジェスタの振るった魔剣を受け止め、反撃に転じる。魔剣にて打ち払われるかと思ったその一撃は、ただ空を切った。


「まだ足りないのはコレだな」

「なら打ち払うのみだ」

そう言って俺は〈飛行魔法陣フライア〉を使い空に飛びあがる。


アジェスタもそれに続いた。

「どういうつもりか知らないが、悪手だな。オマエの負けだ」


「それはこれから決まることだろう」

俺は再び魔法陣を描く。使ったのは、水系最下級魔法〈ウェド〉。だがこれは俺のオリジナルだ。最上級魔法を行使できないからこそ、類似した魔法になるよう一部を書き換えてある。


「行け」

それは一瞬。アジェスタの前に水のビームのようなものが迫っていた。


たまらずアジェスタは魔剣で打ち払おうとする。だがあの魔剣は炎系の魔力を秘めている。故に相性が悪いはずだ。

想像していたようにアジェスタはもう一振りの魔剣を重ね、受け流した。


アジェスタが魔眼を光らせる。

「…成程。水やり程度にしか使えない魔法を結界による圧力で一方向に噴出させることで疑似的に最上級魔法を再現したのか。威力も申し分ない」

「その通りだ。だが遅かったな、アジェスタ」


 俺の魔力が跳ね上がる。黒妖剣を鞘にしまい、両手に魔法陣を展開していた。


右手には四つの魔法陣を、左手には三つの魔法陣を描いている。

「何をする気だ」

「まあ見ていろ」


そういって左手と右手を体の前で重ねる。完成したのは七重の魔法陣。さながら砲塔だ。


「ライアよ、滅びる気か」

「やっと名前で呼んだか」

「これを放てば俺もオマエもただではすまないが、承知の上だろうな」


「やらねば死ぬだけだ」

そう言葉を返すと、アジェスタも魔剣を構えた。

一瞬、目を閉じる。俺は重ねた魔法陣に集中し、全魔力をもってその超高音の炎を抑えつけていく。


炎が腕を焼き牙を剥こうとも、生と死の狭間に位置している俺の魂は最期の輝きを放つ。

通常よりも魔力量は多くなっているからこそ、この魔法行使が可能となる。


完全に炎が抑え込まれた時、透き通った青色の炎が魔法陣の深奥に輝いていた。

「行くぞ」

そう言って魔力を魔法陣に送る。


瞬間、一直線に青き炎がアジェスタに襲いかかった。

アジェスタは避けようとするも、この魔法はそもそも相手を自動追尾するようになっている。


反魔法結界を展開して難を逃れるか、攻撃によって魔法を相殺するかだ。

予想通り、アジェスタは後者を選んだ。


俺がこの魔法を行使したのには理由わけがある。一つは、これまでの戦闘からアジェスタにダメージを与えられる可能性の高い攻撃であったこと。


もう一つはアジェスタの見せた歩法だ。

あれは恐らく足に水を纏わせて滑らかな動きを可能にする、奴のオリジナルの魔法。

最上級魔法には最上級魔法か、それと同等の威力を持つ攻撃で対処するしかないため、特殊な歩法を封じることができるという訳だ。


後退したアジェスタが収納魔法陣に炎陽剣サネスを収納し、もう1振りの魔剣を両手で構える。

「絶魔剣、我流秘技ー〈術式暴走トライト〉」

魔剣が折れた。

「な…」


耐えきれなかったのだ、絶魔剣が。

あっという間にアジェスタは最上級魔法によって焼き尽くされていた。

防御結界も殆ど意味を成していない。このくらいで終わりにしておくか。


ー魔法が止まった。アジェスタは焼け焦げながらもギリギリ耐えたようだ。さて、助けてやるか。配下に加えてーって、え?


視界が反転した。体が言う事を聞かない。そうか。

ギリギリだったのだ。こちらも。

本当に奇跡だと思えるくらい、ギリギリの勝利だったのだ。


ー流石に無理しすぎたな。

仕方がない。この場で魔力の回復を待つしかない、か。


さっきみたいに黒妖剣から魔力を貰うのは無理だな。既にあちらも限界だったようだし。


突然だった。その場を、光が包んだのは。




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