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戦い、そして出会い~中編~

 荒れ狂う風系第四級魔法〈暴風ストム・ウインド〉。


風の斬撃が飛び交い、アジェスタへと降りかかっていく。俺はこれを御するのに魔力の大半を用いたので、倒せなければここで詰みの大博打だ。


半年の期間でリハビリの一環として強制的に武術や基礎体力のトレーニングもやらされていたお陰なのか、初めは魔力不足で描けなかったこの第四級魔法も成功する確率は半々。


これが最善としか言いようがなかったのだ。

斬撃によって舞った土煙に、注意深く魔眼を凝らす。


「…マジか」

その中には確かにこちらへと歩を進める者の魔力が写し出されていた。

「中々の術式精度だったな。並大抵のものはこれで倒れるだろうが―俺は違う」


「俺の〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉でも盗んだか」

「いいや。斬撃を剣で受けて打ち返し、斬撃同士を衝突させて相殺しただけだ。あとは避けた。多少ダメージは負ったが」


これで多少だと?マズい。魔力の回復量が追い付かないので近接戦闘―魔剣での打ち合いをするしかない。先の戦闘で魔眼を使って人間の時よりかは剣がスローに見えたが、こいつとやるのは分が悪すぎる。


「さっきのお返しだ。受けてみろ」

途端にアジェスタの魔力が跳ね上がる。その衝撃で空気が振動を始めた。


俺は妖刀を構えて攻撃に備える。

「真体を表し我に力を与えたまえ。炎陽剣サネス、絶魔剣グロウルス」

二本の魔剣はそれに応えるように、炎陽剣サネスはさらに激しく燃え上がり、絶魔剣グロウルスはより一層と冷たさを増す。


「炎陽剣、相伝秘技―〈爆陽フレア〉」

途端に周囲は熱波に覆われ、その源となる燃え盛る魔剣が上から振り降ろされた。俺は妖刀を振るい、アジェスタの炎陽剣を受け止めようとした。一閃。


確かに受け止めたはずの炎陽剣が妖刀をすり抜け、左腕を切り裂いたのだ。俺は素早く後退し、妖刀を鞘にしまう。


素早く右手に魔法陣を描いた。

「炎系最下級魔法〈火球ファイヤボール〉!!」

回復魔法用の魔力を残し、今撃てる最高火力の魔法を放つ。


アジェスタが魔剣を十字に重ね、魔法を受け流す姿勢をとった。

瞬間、俺は駆け出していた。

先の魔法を目くらましにし、一撃を入れようとしたのだ。


姿勢を低くし、素早く放った一撃は確かにアジェスタの脇腹を捉えた。


だが、浅い。皮一枚切れたかどうか、というところだ。

俺は反転し、回復魔法〈治癒ヒール〉をかけながら次の攻撃に備える。


 「中々やるな。俺に一撃をいれるとは」

「は。しれっと人にカウンターしといてどの口が言うんだか」

そう、先程の攻撃で背中を浅く切り裂かれていたのだ。


治癒ヒール〉にて左手は動かせる程度には回復した。だが、限界が近い。

「まだ刀を信じきれてない戦い方だ」

「どういう意味だ?」


「刀を道具のように扱っていては俺には届かない」

そういってアジェスタは絶魔剣グロウルスと呼んだ魔剣を構えた。


恐らく再び秘技を使う気だろう。もう一度受けきる自信は、俺にはない。

道具、か。身体の一部になるには、まだ時間が足りないだろう。


それでも、だ。ここでアジェスタを倒さねば助からない。逃げたとてプライドがある。

もう逃げないのではなかったのか?

「…力を貸してくれ、俺の魔剣」

いや、折角だ。名を与えてやるか。それでこそ“身体”の一部にし易いだろう。


ならば、旧友と書いていたあの小説で、主人公に持たせていた最強の一振りの魔剣の名を―

「…黒妖剣グラビティエス」


瞬間、黒妖剣グラビティエスの魔力が跳ね上がり、より妖しい黒色へ、鈍い光を放つ魔剣へと変化していた。魔剣を通じて俺の身体にも魔力が流れ込み、左手の傷は癒え、魔力も全回復した。


 「…気づいたか、まぐれか」

アジェスタは続ける。


「魔剣は名を持たない。そして使い手を選ぶ。魔剣への向き合い方で引き出せる力も変わる。名を与えれば一種の契約が成立し、その身が滅び無となるまでその刀を振るい続けねばならない。故に魔剣に名を与えない者が多い。アタリだな、その魔剣は」


「魔力も全回復したことだ。第二ラウンドといこうか、アジェスタ」

両者の視線が交錯し、二人は同時にスタートを切った。黒妖剣と絶魔剣が激しくぶつかりあい、魔力が衝突しあう―








次回でこの戦いは終わる予定です。お楽しみに!

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