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戦い、そして出会い~前編~

 〈空間移動スイシャル〉によって移動してきた俺と謎の剣士。

転移先は荒野だった。ここなら確かに被害は少ないだろう。


「何者だ、お前は」

俺は剣士に問いかける。


「名を聞くなら、そちらから言うのが礼儀だろう」

ふむ。頭も回る、か。一筋縄ではいかなそうな相手だな。

「俺はライア・フェルゼド。フェルゼド家の長男だ。まさか、知らずに連れてきたわけではあるまいな」


「いや。オマエがあの訓練場で魔法行使をしているところを見てな。面白そうだったから誘ってみただけだ」


 目の前に立っている名も知らぬ剣士に腹が立ってきた。というかこいつは強者と戦いたいだけ、力比べをしたいだけなのでは?


まあとはいえ、自分が第三級魔法なんて試し撃ちするからこうなったのかと思うが、時すでに遅し。

後悔先に立たずとはこういうことを言うんだろうな。今後第三級魔法以上を練習するには何か対策しよう。


「目的はなんだ」

「さっきも言っただろ。オマエはあの家の中でも上位―いや、圧倒的強者と見た。いろんな強者と剣を交えてきたが、その中でも別格。一戦やりたくなったのさ。この俺、“密偵剣士”アジェスタ・クロイドの名にかけて」


「成程。加減を確かめるにはちょうどいい。まだ魔法が使えるようになったばかりでな」

「俺は戦いたいだけだ。理由はどうであれ―かかってこい、といいたいが」


そういってアジェスタと名乗る剣士は収納魔法陣を展開し、鉄剣をこちらに投げて寄越した。

「丸腰の相手とやるのは俺のプライドに反する」

「今から殺されるかもしれない相手でもか?」

剣士は表情を崩さなかった。


「剣士の誇りを持って死ぬか、丸腰相手に戦って死に、恥を晒すか。同じ死でも天と地ほどの差がある。まあこれはアンタが俺より強いことが前提だ。卑怯な手で勝ったとしても嬉しくはない」


「それは同感だな。ではそのお前のプライドに敬意を払い、全力で相手をしてやる」


俺は鉄剣を抜き放つと同時に、魔力を全開放し、こっそり練り上げていた覇気を纏う。それはアジェスタとて同じだ。両者の視線が交錯し、覇気によって大地が激しく揺れる。同時に奴の手には二本の魔剣が召喚された。


轟々と燃え盛る一振りの魔剣と、冷たい異様な雰囲気を醸し出すもう一振りの魔剣。

途端に奴の魔力が跳ね上がり、俺の覇気を押し返そうとしてくる。


全く、何が卑怯な手で勝ったとて嬉しくない、だ。こんな鉄剣では一撃で折れるだろう。まあ、魔力を鉄剣に纏わせれば勝てるだろうが…やるしかない。

俺は〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉を五層重ね掛けし、自分の覇気を抑え込んだ。


瞬間、アジェスタの覇気が押し寄せるも、〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉の一層を突破されただけで済んだ。覇気に回していた魔力と俺の魔力を鉄剣に送り込み、魔力を纏わせようとしたその時―


持っていた鉄剣が消え、代わりに異様な妖気オーラを放つ日本刀のような長剣がそこにはあった。そこには確かに俺の魔力が存在している。


「面白い男だ…鉄剣でどう相手をしてくれるか試していたが、魔剣、しかも妖刀を作るとは…アイエル、といったな。かかってこい。どこまでその力通用するか、確かめてみろ」


「わざと作ったのではないがな。では―」

そういって俺はアジェスタの間合いへと飛び込んでいく。

「―はじめるとしよう」


俺は既に妖刀を抜いている。アジェスタの脇腹へ向けた剣はしかし、二本の魔剣によって阻まれた。

俺は素早く後退するも、アジェスタは攻撃を受けた時の勢いを利用し、体を回転させて燃え盛る魔剣を振るう。


辛うじてそれを受け止め、弾き返そうと力を込めるが、先程の力を利用した動きでもう一方の魔剣が横薙ぎに振るわれる。


俺は咄嗟に刀から左手を放し、〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉を纏わせて受け止める。


ギリギリかと思ったその一撃は、〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉を切り裂いた。たまらず俺は後ろに素早く後退するも、アジェスタの剣はとまらず、僅かな時間の間に交わした剣は千を超えた。


互いに同じタイミングで後退し、剣の間合いを離れた。

魔力で体を強化し、身体能力も向上しているが、それを考慮しても危なかった。


しかし、あの魔剣。秘める魔力の総量といい、先程展開した〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉を容易く切り裂くのは難しいのではないか?


「この魔剣が気になるか」

アジェスタが問いかけてきた。


「もちろんだ。俺の〈反魔法防御結界ディフェンド・マジックフィールド〉をこうも容易く切り裂かれては、気にならぬ方がおかしいだろう」


「といっても、教える義理はない。この勝負に勝ったら教えてやろう」

その瞬間、アジェスタは俺の目の前にまで迫っていた。魔眼で見てみたが魔法を使った形跡はない。

ならば、この男の素の速さだ。俺は妖刀を素早くアジェスタに突き出すも、体を反転されて躱された。


一連の流れでアジェスタの魔剣が俺に襲い掛かるも、体を回転させて魔剣を打ち払う。

空中で剣を受けた衝撃で一度間合いから出ることができた。


 「中々やるな。技術は拙いが動きには見どころがある」

「呑気にそんなことを言っていていいのか?」

途端に、俺の魔力が跳ね上がる。


アジェスタはそれを察知したか、後退して二本の魔剣を構えた。その表情は変わらないが、気迫が明らかに異なる。焦っているのだ、俺が行使しようとしている魔法に気づいて。


「まさか魔力の属性もわからん子供が第四級魔法とはな。かかってこい。その魔法ごと、お前を切り裂いてやろう」

「やれるものならやってみろ」

俺が描いた魔法陣は第四級魔法。三重の魔法陣を重ね、全属性において広範囲の攻撃では最上級魔法を除いて最強の地位に君臨する、最も少ない魔力属性の風。その中でも上位の使い手でなければ使えない魔法を、発動する。


―第四級魔法。

「〈暴風ストム・ウインド〉!!」

ぎりぎりの魔力量だったが、どうか?




ギリギリで放った広範囲魔法。

ライア対アジェスタの結末は…?

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