序章~目覚めると、異世界~
学生ですので不定期投稿です。異世界系第一作目、慣れないことも多いですがよろしくお願いします!
2023年、東京―
「あーあ、今日も暇だったな」
俺―高原奏太はバイト先のコンビニから見慣れた道を帰っていた。
もちろん、彼女いない歴=年齢の冴えないフリーターだ。
旨そうな匂いが漂い、思わずその方向へ行きかけた。
危ない危ない。
家賃を払う前に破産するところだった。
「新曲、そろそろアップしないとな」
バイト以外の稼ぎにと思って始めた作曲活動もかなり人気になってしまった。
どんな曲にしようか。前回は少しロックに傾いていたからジャズ系にしてみるか。どんどんアイデアはあふれ出してくる。
そんな自分の力が嫌いだった。こんなの、自分の才能じゃない。何も遺さず逝った両親の才能だ。毎日こんなことばかりを考えている。
歩くスピードを上げ、大通りに出た。
その時だった。
目の前を歩いていた女性に、車が突っ込んできたのだ。
とっさに俺は、走って彼女を突き飛ばした。
次の瞬間、激しい痛みが体中を襲い、体が宙に舞った。
薄れてゆく視界の中で、先程の女性が駆け寄ってくる。
「無事でしたか。よかったです」
「でも…あなたは…」
「大丈夫です。俺なんて、生きる楽しみのないフリーターですから。最期に素敵な女性を救えてよかったです。お願いですから、泣か…ないで…くだ―」
その先は声にならない。視界が真っ暗になっていった。
人よりも不幸な人生だった。
音楽家だった両親は早くに亡くなり、叔父に引き取られた。
そして高校でいじめにあった。
逃げるようにして卒業と同時に上京した。
バイトを掛け持ちして買ったパソコンで曲を作ってSNSに上げ、収入も得るようになった。
だが生活は楽にならなかった。
人生勝ち組の連中を恨んだ。
ああ、もう少し、ほんの少しでいいから幸せだったら。
そして今、人生の最期を迎えている。
完全に意識が消えた。
こうして、俺―高原奏太はあっけなく死んでしまったのである。絶世の美女を救って。
目覚めると、木でできた見慣れない天井が見えた。
「…どこだ?ここ。俺は確かに死んだはず…」
って俺の声こんなだったか?
慌てて起き上がると、民家のようだった。
しかも、かなり古い。
(どこだ…?たしか、車にはねられて…)
とりあえずあたりを見回してみる。
少なくとも病院ではないようだ。
とりあえず体に異常がないか…って、え?
―小さい。手が小さいのである。
よく見ると、身長も縮んでいる。
「まさか、顔までは―」
窓で自分の顔を確認した。
まてまてまて!顔面偏差値が爆上がりしてるんだが?
誰だよ、この美少年は。
本当に俺なのか?
あとなんだよ!外をゴブリンが普通に歩いていたんだが…?
とまあ、ルックス改善といういいこともあったが、その話は置いておいて。
実際は認めたくはない。
これは―異世界。
どうやら、俺―高原奏太は、異世界転生という小説の中でしかありえないことに巻き込まれてしまったようだった。