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第八話 亡くなった妻と、お茶を一緒に。6

 

 俺が初めて、ドロドロと醜い感情を抱いたのは、春香が成人し、振袖姿を見せに来てくれた頃だったと思う。

 可愛いらしさを残しながらも、春香は時々、大人びた(つや)やかな表情をするようになっていた。

周囲の男が、春香に対する目が変わっていたことも感じていた。


 しかし、自分の立場は他の男たちとは違うのだと、どこか楽観的だった。

それは少なからず、春香も自分に対して異性として好意があるのだろうという空気に、あぐらをかいていたからだ。


 しかし、俺が思っているよりも、春香の人生を左右する状況は進んでいた。

多くの交際の申し込みをされ、中には求婚もあったのだという。


 田舎のコミュニティは狭い。良い噂も悪い噂も、あっという間に広まってしまう。

春香の恋愛事情も、その情報網から知った。


 そして、俺はそこでやっと焦った。

誰かに盗られる前に捕まえなければ。

自分だけが、彼女を独り占めできる立場を得たいのだ、と。


 今も、あの時と似たような焦燥感を覚える。

以前と違って、闘う相手は天使や死神なのかもしれないが……。

たとえ、天使のように清らかな存在であったとしても、春香を渡すわけにはいかない。

 もう二度と離さないと決めたのだ。

年甲斐もなく、熱い思いが湧いてくる。

それは独占欲にも近い感情なのだろう。


 この思いは、都合良く捉えれば「純愛」と呼ぶのかもしれない。

しかし、独り善がりで醜い感情がそこに混ざっていることに、もう気付いてしまった。


 脳裏に、底なし沼に首まで浸かりかけている自分の姿が過った。

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