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ねこが棲む者達  作者: ねこおう
らくがき事件編
9/44

9話 スーパーに寄ろう

 学校の帰り道にいつも買い物をするスーパーが目の前に見えてきた。


 あ、そろそろ食材補充しないと。


「藤根さん、僕、スーパー寄るから」


 そういうと藤根さんは不思議そうな表情をした。


 あれ?僕変なこと言ったかな?


「まだ早いですよ」

「早いって何が?」


 そこで藤根さんははっとした表情をして「なんでもないです」と言った。


 いや、気になるんだけど……ま、いっか。


「じゃあね」


 そう言って藤根さんと別れた。

 ……はずだったんだけど。


 何故か藤根さんは僕について来た。

 買うものがあるのかと思いきやカゴを手にしてないし買わない気満々?に見える。


「朝昼晩全部自分で作ってるのです?」

「全部じゃないよ。朝は食パンが多いかな」

「食パンには耐性があるのです?」

「耐性って……焼けば食べれるよ」

「焼いたものなら何でも大丈夫なのです?」

「まあ、自分で焼けばね」

「お弁当に生野菜入ってました」

「しっかり洗えば大丈夫だよ」

「自分で洗えば、です?」

「うん」


 僕達はお惣菜の前を通りかかる。


「お惣菜もダメなんです?」

「うん」

「ではお弁当も?」

「ダメだね」

「そうですか」

「どうしたの?」

「今、私は時宗君のいい所を初めて見つけた気がします」

 

 藤根さんの言ってる事はサッパリだ。


「どこがいいところだったのかな?」

「お弁当を買わないところです……やっぱりまだ安くなってないです」


 ん?安い?ってまさか。


「僕のいいところって、値引きした弁当とか買わないとこ?」

「はい、……いえ、秘密です」


 いや、今、はいって……そういえば、藤根さんとこのご両親は離婚してたんだよね。

 母娘の生活は苦しいってことかな。

 って、それよりも、僕のいいとこってそこだけなの?!

 全然うれしくないよっ!


「……何か?」

「なんでもないよ。藤根さんは料理しないの?」

「ママは仕事で忙しいので平日はあまり料理しないのです」


 ……うん?

 僕の言葉は藤根さんの中で、

 藤根さん→お母さん

 に変換されたようだ。


 ちゃんと名前で呼ばないとダメだったみたいだ。

 といってもう一度質問する事はない。

 もう答え出てるよね。

 だから「そうなんだ」って言ってこの話は終わりにした。



 僕が食材をばんばんカゴに放り込んでいくのを見て、


「すごいたくさん買うんですね」

「うん、一週間分くらいまとめて買うんだよ」

「なるほど。だから部屋に不釣り合いな大きい冷蔵庫があったのですね」

「うん。何度も買いに行くと無駄遣いしちゃうし、人と接触する機会も増えるからね」

「そうですね」


 藤根さんのも思い当たる節があるらしく小さく頷いた。


 あれ?

 今更だけど、これってもしかして、側からは恋人同士が買い物してるって、見えるんじゃないかな?

 

「どうしました?」

「え?」

「悪代官のような顔をしてました」

「それ、どんな顔かな?」


 やばい、顔がにやけてたかな?

 しかし、藤根さんは気づいていないのかな?

 それとも藤根さん、美人だし、前の学校では彼氏とかいてこういうの慣れてるのかな?

 てか、なんで藤根さんが今フリーだと思ったんだ?!

 前の学校に彼氏いるかもしれないじゃないか!

 今も遠距離、かは知らないけど付き合ってるのかもしれないじゃないか!


 ……あー、なんか気分が沈んできたよ。


「どうしました?」

「いや、ちょっとね」


 藤根さんが不思議そうな顔をする。


「あのさ、前の学校の友達とかと連絡取ったりしてる?」

「……何故私があなたに個人情報を開示しなくてはいけないのです?」

「いや、そんな事細かに教えて欲しいわけじゃないよ。こっちでは友達いないんでしょ?だからちょっと気になって」

「友達などいなくても生きていけます」

「彼氏は」

「更に必要ないです」


 そう言った藤根さんは別段隠しているようには見えなかった。


 ちょっと元気が出てきたよ。


「どうしました?」

「ん?また変な顔してる?」

「それはひとまず置いておいてニヤけてます。今まさに性犯罪に走りそうな表情です。近づかないでください」

「ちょ、ちょっと流石にそれは酷いよ!」


 藤根さんはクスッと笑った。


 あ、かわいい。



 支払いは電子決済でスマホのアプリで済ました。

 このスーパーを利用している理由の一つが現金を使用しなくて済むからだ。


 藤根さんは悩んだ挙句、お菓子を一つ買った。

 柿ピーだった。


 って、なんでその選択?

 全然女子高生らしくないんだけど?

 


 スーパーを出た所で正面のガードレールの上に白猫がちょこんと乗っていた。

 絶妙なバランス感覚だ。

 その器用な子猫の頭は異様にデカく赤いマントを羽織っていた。

 風は吹いていないのに何故かマントはなびいていた。


「あれ?この猫……」

「……カッコいい」

「うん、進藤さんの、え?カッコいい?」


 藤根さんの視線の先はその子猫だ。

 間違いなくこの猫のことを言っているようだ。


 いや、カッコいいというより可愛いだよね?

 あれ?前にかっこいいって言ったのは進藤さんのことじゃなくて肩に乗ってた子猫の方だったの?


 どう見ればこの子猫がカッコいいって……ん?


「この子、進藤さんの猫じゃない?」

「カッコいい」


 うん、それはいいから。

 姿はそっくりなんだけど、探偵の帽子かぶってないし、その口元は右に少し吊り上がっててまるで僕達を見下している、そんな印象を与える。

 少なくとも進藤さんと一緒にいた猫、確かみーちゃん?はそんな表情をしなかった。


 飼い主がいないから本性を現したとか?


 藤根さんがそっと手を伸ばすと、その子猫はふっ、とその手を避けて地面に降り立つ。

 そのままトコトコと歩いて去って行った。


「……カッコいい」


 藤根さんほんと大丈夫かな?


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