雷の乙女
さてさて2戦目の試合だ。
ヴァンのチームからは予想通りナキだ。
同属性の子の試合は初めて見る。
楽しみだ。
情報通りレイピアを使うようだね。
装備は軽装。ってことはやっぱり雷は速度に重きを置くんだろうな。
それ以外の戦闘スタイルもあるかもだけど。
てことは僕に近い戦い方なのかな。
相手はまた槍使いか。
本当に多いな。まあ誰でもある程度使えるし、安全圏からの攻撃がしやすい。
それこそコカトリスみたいに飛んでるやつに対してもリーチがあるから戦いやすいだろうしね。
「では始め!」
先に動き出したのはナキ。
レイピアを構え走る。
いや走ると言うより、地面を蹴って前に飛んでいるように見える。恐らく地面を蹴るのと雷によるブーストで前に出ているんだろう。
でも話に聞いていた通り体自体を雷にすることはできないようだ。
リンもできる人は少ないって言っていたし、ナキって子もできないんだろう。
と言うか僕の雷速とナキってが使うブーストどっちがコスパとか燃費良いんだろう?
僕は使える魔素が多いわけじゃないから、ブーストの方が少なく済んで、性能もそんなに落ちないなら使いたいよね。
ナキが相手に詰め切るところで、相手は槍で牽制した。まあどちらも尖った先端で刺す武器だ。
お互いガードはし辛いだろうね。
そうなると避けるか、槍ならレイピアを薙ぎ払うことができるね。いやレイピアで槍を薙ぎ払うこともできるけど、槍なら安全な距離からできるってことね。
それよりも槍使いは、槍をナキの腹辺りに当たるよう構えた。ナキも速度を出しているし、咄嗟に身を屈めて避けながら進むとかできないんじゃないかな?と、なると左右に避けるしかないかな?
しかしナキの行動は僕の予測とは違った。
勢いを殺さず、上に飛んだのだ。
そのまま相手の後ろまで飛んだ。空中で方向転換して相手の方を向いている。
槍使いも驚いてはいるが背後を取られたわけではない。しっかりとナキを見ている。
「取ったッ!雷槍!!」
ナキはここで魔法を使う。
僕の雷撃のように雷の槍をレイピアを持っていない左手で構えた。
僕の雷撃は短めの槍、ミサイルのようなイメージだ。対してナキの雷槍は槍使いが持っているような誰もがイメージする槍の長さをしている。
つまりはここでリーチの差での有利不利はなくなった。
なんなら魔素でできた雷の槍なら多少は長くできるのでは?
ナキはその雷の槍を槍使い目掛けて投げた。
槍使いは確かに背後を取られたわけではない。
咄嗟の判断で後ろを向いている。
しかし体を捻っているような状態。
避けるのは難しそうだ。
「土よ!我を守りたまえ!」
わお、地属性使いだったのか槍使い。
ここで槍使いの得意な属性が炎や水だったのならダメだったろうに。何せ守るには物理的に守らないとね。
そりゃ極めれば炎や水の盾だってあるんだろう。
しかし炎や水は物体を防げるものではない。
まあ魔素でできた雷を魔素でできた炎や水で守れない理屈はないのかもだけれど。
正直そこら辺は詳しくない。ただの予測だ。
まあだけど土ならどちらだろうと明確な盾になる。
槍使いからすれば属性相性は良かったわけだ。
勢いを殺さずに飛んでいたナキはそのまま地面を滑りながら距離を取る。
少し驚いた表情を見せていた。
決めれると思っていたのだろう。
まあ僕も驚いた。今ので勝負が決まったと思ったよ。僕らの予想よりも槍使いは結構なやり手らしい。ロウと同じく努力タイプだね。
「なら…」
ナキは先程とは違って相手の右側に着くように走り出した。
そして…
「いつまで守りきれるかな?雷槍!!」
槍使いの周りを走りながら何本も何本も槍を投げる。
「ッち、くそぉぉぉおお!土よ!」
それを何度も何度も土の盾を作り、防ぐ。
しかしそのたびに土の盾は割られる。
先程よりも雷槍の出力を増したようだ。
それに加え走る速さも。
槍使いはその走りを目で追い、雷の槍を土の盾で守るので精一杯なようだ。
20は投げられたと思う。
ナキの攻撃は速い。
時間で言えばそれほど長くないだろう。
しかし連撃を加えていると言う点では長いだろう。
その時間も槍使いは必死に守り続けている。
だが限界も近そうだ。
「エンチャント…」
小さな声でナキがそう言ったように思えた。
いや実際は聞こえてないと思う。
口の動きとかから見て。
何より今度は両手に一つずつ雷の槍を持っている。
ただその動作は洗練されていて槍使いは気づいていないだろう。
さらに走る速さを上げて、その二つをタイミングをずらして槍使いに投げた。
槍使いは片方を守りきれなかった。
恐らく槍の持ち方的にも利き手だろう、右の肩に攻撃を喰らった。
かすっただけのように思えた攻撃だけど、受けたと同時に片膝をついていた。
恐らく当たった方はエンチャントしたレイピアだったのだろう。
そう考えていた時、片膝をついた槍使いの前にナキは立っていた。
その手には今度は雷のレイピアと表せば良いだろうか。
雷槍と変わりのない形だが、長さがレイピアと同じサイズだ。
その先端は槍使いの喉元に当てられている。
「そこまで!勝者ナキ!」
うん、鮮やか。何というか綺麗な試合だったな。
「チームヴァンの勝利ってことだね」
「そうだな。まあ結果は予想通り。どうだった?同じ属性の戦い方は」
「僕とは違って魔法を多用している戦い方だったね。勉強になった。それに彼女、使える魔素多いのかな?僕が僕なりに同じことをしたらガス欠になりそうだよ」
僕のは出力も速さも高いけど、コスパと言うか燃費が頗る悪い。なにより僕自身が使える魔素が多分そこまで多くない。
多くないと言うより自分が使う魔素に比べて使える量が少ないって方が正しいかな。
「まあそうかもな。でもお前より遅いな。なら楽勝だろ?」
「はは、どうだろうね。まあ負ける気はない。
僕が勝つ」
うん、少し燃えてきてたよ。
競える相手っていうか、何というか。
倒したいと思える相手だよね。
「そろそろ準備しなきゃ。次私たちだよ?」
セレナの掛け声と共に僕らは動いた。
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