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魔王様、夢を語る

 ここは世界の端と呼ばれた地。マナのバランスが崩れた、人類無き土地。ある場所は消えることなき獄炎の大地。またある場所は、魂も凍り付くと言われるほどの、絶対零度大地。人類が生きていくには困難な世界、それが世界の端。

 だが、人類不毛の地で生きていく者共は居た。その名は魔族。過酷な世界に耐える、頑丈な肉体に魔力の素養。これに加え、何百年何千年を生きると言われる程の長寿命。何処から見ても、非の打ちようがないと言える種族と言えよう。自身の収める世界が、過酷な世界である事を除けば。


 一人の魔族が目を閉じ、何かを探っているようだ。その魔王は漆黒の暗闇で、唯一人佇んでいる。彼は無の魔王、ディサピア。無の大地を支配する魔王であり、何千年も続けてきた魔族同士の争いに終止符を打った、魔族の王なのだ。 

 漆黒の空間に灯された、青白い光。それは、魔王ディサピアの元に近づき、彼の顔を僅かに照らす。人間で言えば、20代前半の見た目なのだが、白髪に魔族特有の縦に尖った耳が、人類との違いを引き立てている。


「感じる、感じる! 勇者(男の娘)の目覚めを感じるぞ。余の男の娘センサーが反応をしたのだから、間違いない」


「ディサピア様、その男の娘センサーと言うものは如何なるもので」


 配下と思わしき魔族は思わず、ディサピアに問いかける。その中性的で美しい声は、漆黒の空間に凛と響き渡る。


「男の娘センサーは、男の娘センサーに決まっておるだろう」


「いや、説明になっていません……」


 配下魔族は、ディサピア言葉に飽きれた様子であった。


「ではディサピア様、男の娘勇者を抹殺すべく、精鋭部隊を派遣しますか。誕生したての勇者であれば、赤子の手を捻るよりも簡単な事です」


「ふむ」


「豪風の魔王、紅蓮の魔王等々、総力を結集して叩き潰します」


「フリィジィよ、お主の妥協なき姿勢。余は大変評価している」


「ありがたき幸せ」


「だがな、誕生したての勇者を叩き潰したところで、何になる? 余は何を得るのだ?」


「は?」


「今の勇者であれば、叩き潰すのは赤子の手を捻る位容易いであろう。だが、余が得るのは身の安全くらいであろう。それでは困るのだよ」


「ディサピア様・・・・・・」


「人類をまとめ上げる程の英雄となり、世界征服の障害となる勇者を倒してこそ、人類は我ら魔族に畏怖の感情を抱くのだ」


「いけません、ディサピア様! 危険すぎます。歴戦の魔王は、勇者を叩き潰せるときに叩き潰さず、機を逃し、敗れたのです。同じ轍を踏まぬためにも、今すぐに勇者を叩き潰すべきです!?」


 ディサピアの考えが危険と判断したのか、フリィジィ声を荒らげ猛反対をする。その余りの激しさの為か、顔を覆っていたベールが落ち、彼女の顔があらわになる。氷を思わせる青白い髪に、縦に尖った耳はフリィジィを魔族だと認識させる。


「も、申し訳ありません。ディサピア様」


 自身の行いが使えるものとして相応しくないと判断したのか、頭を垂れ片膝をつく。


「なあ、フリィジィよ。勇者に敗れし魔王として、後世に語り継がれる。それも一興だと思わぬか?」


 予想の範疇を超えた言葉に、思わず黙り込むフリィジィ。


「余の目的は、人類に畏怖の感情を植え付けた上で、世界を征服する事だ。人類を焼き尽くし、灰にしたいわけではない。それが出来ぬのなら敗者となり、笑いものにされても構わん。故に勇者は泳がせ、成長を促す」


「……」


「万が一余が敗れたとしても、心配はない。魔族には余と同じくらい優秀な者も数多くいる。何なら、余が敗れた後、お主が魔族を引き連れ世界征服をしても良いのだぞ、極寒の魔王フリィジィ」


このお方は、何千年にわたる魔族同士の抗争に終止符をうち、魔界を一つにまとめたお方。格が違う。


「しかし、楽しみだ。勇者(男の娘)屈服させ、余の嫁にするのだからな。フリィジィ、偵察用モンスターに勇者の採寸をさせ、ウエディングドレスを作らせるのだ!」


男の娘さえ絡まなければ、非の打ちどころの無い素晴らしいお方なのだが……



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