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第二話 魅力すぎるのも問題あり

 シンと静まり返った夜の古城。雲の隙間から月明かりが、薄暗い一室を僅かに照らす。幻想的な雰囲気を醸し出している空間なのだが、壁に出来た人型の空洞が雰囲気をぶち壊している。時を遡ること数分前。


                   ◇


 マークはアリサの顎をくいッと持ち、鼻先が触れんばかりの距離まで詰める。しかも後ろは壁なので、逃げ場はない。すると彼は何かに取り付かれたかのように、アリサの瞳をじっと見つめる。王子様が乙女を口説くかの様に。


「いやいやいや、待ってよマーク。前の私ならキュンキュンしていたシチュエーションなんだけどさ、今の私は男の娘で第3の足も生えてるんだよ」


「アリサ様、性別など愛の前には小さき事。目の前に居らせれられる貴女は、全世界を魅了する存在。アリサ様が、魅力的すぎるのがいけないのですよ。さあ、すべてを私に委ねてください。愛しき勇者、アリサ様」


「いやー!!!!!!」


 右手は眩いばかりの輝きを見せ、薄暗い室内を日中の様に照らす。その光輝く拳から繰り出された右ストレートは、マークを弾き飛ばし壁に人型の空洞を作り出したのであった。


「え? マーク、大丈夫? もしかしてマークはお亡くなりに・・・・・・」


 自身の右ストレートで、マークを死なせてしまったかもしれないと焦りだすアリス。いくら自分を守るためといえど、死なせてしまったのでは目覚めが悪い。


「あ痛たたた。咄嗟に身体強化の魔法を掛けていなければ、壁にめり込んで天に召される所でしたよ」


「今のはマークが悪い。これは正当防衛よ」


「返す言葉がありません」


「まあ、ちょっとやり過ぎたかな。ごめんね」


 マークの生存を確認し内心ではほっとした、アリサであった。

 

                  ◇




 マークはローブから色々と道具を取り出している。ここかな? それともここかなと、ローブの中にどうやって隠していたんだと言わんばかりに、道具を出していく。

 このまま探し続ければ、部屋が道具で埋もれるのではないかと心配になるほど。その様子をアリサは、椅子の背もたれを前にし、ただただ終わるのを待つ。


「お、あったあった。これでステータス測定が出来る。では皆さんお待ちかねの、アリサ様のステータス発表!」


「皆さんて、私たち以外誰も居ないじゃん」


 一人で盛り上がるマークはアリサの突っ込みを気にするそぶりは見せず、どこ吹く風といった様子。空中に映し出された、半透明のコマンド画面をポチポチと入力していく。いくつかの手順を踏み、コマンドに現れたステータスという項目をクリックする。


「ポチッとな」


「うわー、ファンタジーの世界観ぶち壊す掛け声・・・・・・」


「まずは身体能力から。筋力B、敏捷A、頑健C-、器用A+。頑健のC-が前衛としては気になる水準だけど、それ以外は素晴らしい」



「これよこれ。異世界転生らしくなってきたじゃん。しかもステータスは大体高水準、外れを引かなくてよかったー」




「アリサ様。感激をするのは、後半のステータスやオリジナルスキルを見てからにしてください」




「そ、そうよね。赤文字のバッドステータスがどっさりの可能性もあるし・・・・・・」




「では、後半のステータスっと。こっ、これは!?」


「どうしたの?マーク」


 ステータス画面表示されたの能力の数々に、驚愕するマーク。普通の人間ではありえない数値のステータス。

 有用なオリジナルスキルを複数所持。数多くのステータスを見てきたマークだが、これには驚愕の表情を隠せなかった。


まさか、これほどの能力をお持ちの方とは。アリサ様なら必ず、世界を一つにまとめ上げ魔王を打ち倒すに違いない。


「すみません、私とした事が取り乱してしまいました。続きを読み上げます。教養D、知性A、魔力B、精神B」


「ちょっとストップ!?知性Aなのに、教養Dて何なの?」


「うーん、これに関しては憶測ですが、アリサ様が高等教育を受けきる前に亡くなられたからだと思います。ですので、教養Dは仕方ないかと」


「そっかー」


「ですが、アリサ様は頭の回転が速くとても賢い。知性のAが、それを示しています。幾多の困難が貴方に立ちふさがるでしょうが、それらを解決する知性をアリサ様はお持ちなのです」


 アリサはフムフムと興味深げに、相打ちをうつ。


「では、続きを。魅力SSS、特殊スキルはクリエイトウェポンと英雄を魅了する瞳。以上となります」


「魅力SSSってはた目から見ると凄そうだけど、実際の効果はどんなものなの」


「具体例を挙げれば、王族や│為政者いせいしゃを│篭絡ろうらくして国家を意のままに操ったり。民衆や軍を先導してクーデターを起こせる可能性があるレベルですね。まあ、過信は禁物ですが」


「何その、チートスキルならぬチートステータスは。ん? まって、マークが過ちを犯しかけたのは、わたしの魅力が高すぎたせい?」


「それは一つの要因。私がアリサ様に無礼を働きかけたのは、英雄を魅了する瞳が原因でしょう」


「どんなスキルなの?」


「メリットとしては、アリサ様の元に英雄候補となる人材が集まりやすいと言う所」


「じゃあ、デメリットは?」


「デメリットは、アリサ様の貞操が危ないという所です」


「え、性別は関係なく発動するの?」


「はい、もちろんです」


この時アリサは、改めて自覚した、自身の貞操が危なく、それを解決するためには、魔王を倒さねばならぬと言うことを。


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