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秋葉原ヲタク白書59 ダミーレイヤーの恋

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第59話です。


今回は、ストリートギャングお抱えの女サイバー屋が、夜な夜な現れるイケメンレイヤーに恋心を抱きます。


コンビは、タワーマンションに住む億万長者とイケメンの身元調査を進めますが他方サイバー屋の父親は実は…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 コスプレのhaute(オート) couturel(クチュール)


「またまたメトロキャプテン様とお会いしたの!」

「えっ?!貴女も?」

「私なんか、痴漢から救っていただいたのよっ!」


御屋敷(メイドバー)の中がヤタラとキャピキャピしてるw

マントや仮面のスーパーヒロインだらけだ。


あ、ココは僕の推し(てるメイド)であるミユリさんがメイド長を務めるアキバの御屋敷(メイドバー)

銀河団を包含する宇宙最大の構造に準え"超銀河団(スーパークラスター)コンプレックスバー"とも呼ばれる。


「ど、どーしたの?スーパーマンか誰かの誕生日だっけ?コスプレ女子はドリンク半額とか?」

「うふっ!楽しそう!テリィ様って、どーしてそんなコトが思いつくの?でも、今宵はセクボの"コスプレ火の用心隊"のみなさんでした」

「へえー。まだ"火の用心"やってルンだ?胡瓜が異様に値上がりしてる暖冬とは逝え、もう3月だぜ?」


ミユリさんの話を聞いて率直に驚く。


"セクシーボーイズ"は、外堀通り界隈を仕切るストリートギャングだ。

その女子部?の面々が年末、夜な夜なコスプレして街を夜回りしている。


暗い道をパトロールしたり公園から売人を追い払ったりして"街の美化"に協力する一方でタマに逆襲され下着姿にされたりしてるw


「そうなの!この前も酔っ払いのリストラサラリーマンに絡まれて、危うくホテルに拉致されそうになった時に…」

「えっ?まさか"ムーンライトセレナーダー"が…」

「現れません!絶対に。悪いけど」


解説しよう。


今宵もまたナンパされたと得意げなのは見回り隊長?のスピアで御屋敷の常連でもある。

続いて僕で、セレナーダーは僕が脚本(ほん)を書いてる特撮番組に出て来る"悪の女幹部"だ。


最後はミユリさんで…セレナーダーのコスプレと逝えば彼女!ん?本人は嫌がってる?笑


「何でセレナーダーだけアメコミ調なのですか?セーラー戦士みたいなミニスカだと可愛いのに。私だけボディスーツってちょっち…」

「だからこそ!ミユリさんの最終兵器である脚線美が"映え"ルンじゃナイか。ムーンライトセレナーダーは、ツルペタアラサー女子の"希望の星"を狙ってルンだ…」

「あ、危ない!テリィたん!」


解説は…ほぼ不要w


次の瞬間、ほぼ光の速さでミユリさんの腕が伸び親指と人差し指で僕の唇を摘むw

注意を発しつつも、ギョッとなり思い切り身を引くのは億万長者のトロイさんだ。


しかし、カウンター越しだったので、破壊力抜群の肘打ちではなく、一命を取り留める←


「このお口が、テリィ様のこのお口が今タイヘン妙なコトをおっしゃいましたけどぉおぉ」

「あ、ばぉあ、くー(大意:あれ?何か逝ったっけ?)」

「いやぁ。久しぶりに下界に降りるとみんな賑やかで楽しそうだねぇ。タマには地面に足をつけないとダメだなぁ」


中央通り沿いにあるタワーマンションの高層階に住む彼は滅多に降臨しないレアキャラ。

雲の上で、スマホ1つで起業したり投資したりして…とにかく"億万長者"をやってるw


実は、僕も彼の立ち上げたコスプレプロレスのスタートアップのCEOを任されてるンだ。


「いつぞやの神田のカレー店と秋葉原のメイドカフェを繋ぐアプリが儲かり出してさ。実はアッチの経営もテリィたんに噛んで欲しいンだけど」

「ストップ!一応、作家として売れ出したンだ。今が大事な時なんで」

「ま、ま、まぁとにかく!話を元に戻すと、私達が"コスプレ火の用心"をやっていると"メトロキャプテン"のコスプレをした素敵な王子様が現れるのです!うふっ」


やっ?スピアはウレしそうだ。

ツーショットも見せてくれる。


何か新しい恋の気配?だょw


「でね。テリィたんに私達、見回り隊の守護神"メトロキャプテン"の(コスプ)レイヤー様がドコのドナタなのか、調べて頂きたいの。だって、もしかしたら私の恋人に…コレでテリィたんの元カノ会長からも卒業ょ。ね?私のお願い、聞いて欲しいな。で、手がかりは"コスプレのhaute couture"」

「あのさ"カノジョ"だったコトもないのに、いきなりステーキ、じゃなかった、いきなり"元カノ"名乗るの、ソッチこそソロソロ"卒業"してくれナイかな?ソレから、何で突然haute coutureが出て来るの?ココはアキバだょ?パリじゃナイけど」

「コス(プレ)が、とても凝った縫い方だったの。もちろん、激安量販店(ノンキ・ホーテ)のコスプレコーナーなんかじゃ絶対売ってない類だわ。アレは最近話題の"コスプレのhaute couture"に間違いナイと思うの。となれば、ソレが出来るテーラーってアキバには恐らく1人しかいなくて…」


あ、この流れは前にもあったなw


「あ、センムのコト?ダメダメダメ!僕は、あの人は苦手ナンだ。だって、話してる最中に失神…で済めば良いけど、平気で失禁までしちゃうンだぜ?」

「違います!だってセンムさんは立派な廃人でしょ?ソレに、彼の"リトル広州(キャントン)"は、つまるトコロ、コピー商品の生産基地じゃナイ?でも"メトロキャプテン"様のコスは"haute couture"なのっ!話の次元が1つ違うのょ」

「だったら余計に僕を巻き込むな!普通に3次元人やってンだから」


やれやれ。どーせまた押し切られルンだが、ソレを見てたトロイさんから助け舟が出る。


「スピアちゃんの逝ってるテーラーって、もしかしてウルミさんのコト?メゾン(フランス・クチュール(サンディカ)組合加盟店)で経験を積んだテーラーと逝えば、アキバじゃ彼しかいないモノね。となると、差し出がましいけど、誰かが一緒に行かないと、彼は紹介なしだと会ってくれないンじゃナイかな」

「ええっ?何者ですかー、そのタカビーな人は?まぁいいや。じゃトロイさんは、そのウルミさんトヤラの店の場所を御存知なんですね?」

「知らない。仮縫いは、いつもタワーに来てもらってたから。でも、調べておくょ。おおぉ!調べてから店へ出掛けるなんて久しぶりだょ!楽しくなってきたぞ!ねぇドリィも呼んで良いかな。テリィたんは、ミユリさんを連れて逝くのだろ?」


えっ?ミユリさんを?何で?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミユリさんが一緒だw


翌日、僕とミユリさんは、トロイさんと推しメイドのドリィが住んでるタワーを訪ねる。

ドリィとミユリさんは意味もなくメイド姿で早速今日のコスを買った店の話とか始める。


傍目には、実に微笑ましい女子会的な光景だけど、ミユリさんはドリィにコスプレプロレスのリングで原爆固めをキメたコトがあるw


「あ、トロイ様!ドリィさんから御連絡を頂戴し驚きました。御来店されるとのコトでしたが、お得意様にお運び頂くなどトンでもナイ話です!早速取るものもとりあえず参上した次第。先日のスーツ、何か粗相がございましたでしょうか?」


長身色白の優男。アラサー。謝る割には遅れて来たウルミさんが取り乱しマクシ立てる。


「あぁ。ごめんなさい、ウルミさん。情報が錯綜しているようだ。この前のスーツには、とても満足しています。今日は、僕の友人を御紹介しようと思ってね」

「えっ?トロイ様、如何にトライ様の御紹介とは言われても、コレは困ります。私は婦人服はやらないんですょ。特にパンツスーツとか。余り"美"を感じナイもので」

「あ、いや。ミユリさんじゃなくて、御主人様のテリィたんの方だ」

「えっ?コ、コレは失礼しました!てっきりお付きの方かと思って…」


誰が"お付き"だょ!


ココで、ドリィとミユリさんと逝う太平洋両岸を代表するメイドによる御給仕が始まる。

あ、ドリィは金髪&グラマーのAmerican sweet heartだがアフリカ小国の大統領令嬢だ。


で、実はシングルマザーw


ところで、いつだって心のこもった御給仕って、人の心を幸せにしてくれるょね。

ドリィとミユリさんのお陰で、その後のティータイムはとても楽しいモノになる。


警戒を解いたウルミさんが、自己紹介を兼ねて、色々と服飾業界の話とかをしてくれる。


彼は、演劇、ミュージカル、ダンスの舞台を中心にアイドル含む全てのパフォーマーのオリジナル衣装のデザイン/企画制作してる。


具体的には、デザイン画を描き起こし、パターンを作成して、縫製を行う。

いわゆる、衣装の企画デザイン制作を行う"衣装プランナー"と逝う奴だ。


時系列的には、デザインからゲネプロまでが"衣装プランナー"の役割分担。

本番以降の着付け、補修、洗濯は"衣装進行"と呼ばれる仕事となるらしい。


全てオリジナルの1点モノだから、同じく1人しかいない表現者に着て貰い最上級のパフォーマンスをしてもらうコトが最上の喜びだ。


西洋には、服をアートとして優れているかで判断する土壌があり、アキバの萌えるか否かで判断する気風とは、相通じるモノがある。


物差しは"売れるか否か"ではナイのだ。


彼は、パリの専門学校でhaute couture(デザイン、パターン、縫製、装飾など)を3年間学ぶ。

その時パリで開催されてた"ジャパンエキスポ"でコスプレを知り、衝撃を受けたとのコトだ。


どうやら、根っからの"服ヲタク"らしい。


なーんだヲタかょと大爆笑になったトコロで僕は本題を切り出す。

あ、彼の話はもっともっと聞いていたかったが。ウソじゃナイょ。


「で、最近ペリース付きのドルマンジャケットとか、制作されました?実はコスプレなんですけど」

「あぁ。つくりましたょ。しかし、ペリースとか、よく御存知ですね?ま・さ・か!テリィたんさんは"メトロキャプテン"のヲタ(ク)さんなのですか?」

「いいえ。ヲタではなくて作者です」


その瞬間、ウルミさんはポカンと口を開け魂の抜け殻と化すが、次の瞬間"スゴい熱量を持った魂"が吹き込まれガバッと立ち上がる!


「ア、アナタか!アナタだったのか!おおっ!服と布地の神ょ!今日は素晴らしい日だっ!私は…私は"地下鉄戦隊メトロキャプテン"ヲタです(キッパリ)!"メトキャプ"のコスチュームデザイン、アレは素晴らしい!神の仕事だっ!私にも手伝わせてくれっ!いやっ!勝手につくらせてもらう!」

「え、ええっ?!そーですか、そりゃどーも。でも、どうせなら"ムーンライトセレナーダー"のボディスーツをよろしく…で、その"メトキャプ"のコスチュームを発注した人ですが…」

「あぁ。覚えています。支払いは現金で、コスは直接受け取りに来ました。しかし、コレがhaute coutureを発注するとは、とても思えない何処にでもいるユニクロン(ユニクロ愛用者)で…」

「ソレが、ポンと大金を(はた)いてコスチュームを買って逝ったのですか?」

「ソレも…いくらとは申せませんが、アタッシュケースにギッシリ詰まったキャッシュで…思わず2時間ドラマの小道具かと思いましたね」

「確かに変態の多い街とは逝え、そりゃ最低最悪、大醜悪ですね」


スピアとのツーショット画像を見せると"あぁこの人ですね、間違いナイ。しかし、女子のコスがヒド過ぎるなw"とか逝いながら…


「あと、もう1つ。実は仮縫いの時に、妙なコトに気がついたのです」

「ほぉ。何でしょう?」

「お客様の両ふくらはぎ、左右同じ場所に同じ傷があったのです」


第2章 アキバで空に最も近い場所


ソレは、恐らく自転車のチェーンの痕だ。


スピアのリクエストで夜な夜な現れるイケメン(コスプ)レイヤーを探してルンだが…

彼はウルミさんの"コスプレのhaute couture"を現金(キャッシュ)で買ったチャリ乗りらしいw


毎日チャリを飛ばしている人と逝えば、ひと昔前ならメッセンジャー。

今ならオンラインフードデリバリー"バウワウイーツ"の自転車便だ。


ソコでアキバの街を逝く"バウワウイーツ"の自転車便を片端から写メるコトにする。

お抱えサイバー屋の恋人探しに力貸せと脅し界隈のストリートギャング(セクシーボーイズ)を総動員する。


"セクボ"はスピアに頭が上がらないンだ。

警備システムや電子錠の解除が凄腕だからw


で"セクボ"が全員一斉に自転車便を写メり始めたから外堀通りは異様な雰囲気だw

何かがかかるまで、僕はチリドッグがヤタラと美味い"マチガイダ"で腹ごしらえ。


何はともあれ1日1本チリドッグ←


「会話のためのスマホが人から会話を奪ったように、電子レンジのためのコンビニドッグが、ホットドッグをダメにしたと思うンだょ」

「ユーリ店長、その面倒臭そうな蘊蓄はともかく"マチガイダ"に電子レンジとか絶対に置かないでね。さぁ、文明人らしく出来立てのチリドッグにガブリつこう。アレ?食事中にスポーツ紙とか読んじゃうの?どーゆー躾なんだ?親の顔が見たいな」

「おいおい。マーケットリサーチと逝ってくれないか。新しく開店した洗体に営業をかけなくちゃ…で、ドルマンジャケットって何?」

「昔のグループサウンズが着てたみたいな、胸に肋骨状の糸飾りのついたジャケットだょ。俗に肋骨服とか呼ばれてる。その上にペリースと呼ばれるジャケット風のマントを左肩にだけ掛ければ…君も今日から"地下鉄戦隊メトロキャプテン"だ!…実は、ナポレオン時代の軽騎兵の軍服ナンだけど」

「そりゃまたレトロだな。テリィの好きなスチームパンクより少し昔過ぎナイか」


やれやれ。美味いモノを食べるとシラフ?の時に隠そうとした矛盾が一斉に暴かれる。

何を恐れ、何を悩んでいたのか、そして何を隠していたのか。全てチリドッグが悪い←


ソコへセクボの伝令が飛び込んで来る。


「あ、テリィたん。インシデント発生です。新しい"パレス"まで御足労…あ、あれ?ターゲットが動き出した?とりあえず追っかけなきゃ。御同行願えます?ぎゃ!クイーンとサイバー屋(スピア)も動いたw負けらんねぇ。急いで!」


解説しよう。


"パレス"は"セクボ"の溜り場のコトで前は外堀通り沿いのハンバーガー店だったが閉店になって…ん?新しい"パレス"は何処?


"クイーン"はジュリのコトで"セクボ"ヘッドの妹。実は今回の動員も彼女頼みだwスクキャバのNo.1でアラサーだがいつもJK服。


そのまま伝令君のキックボードに2人乗りしてアキバの裏通りを疾駆する。

ホントにヤタラとトバすので彼にしがみついてないと振り落とされそうだ。


因みに、彼の革ジャンの背中には経済学の"重力モデル"の公式が殴り書きされている…


中央通りの8車線を信号無視で突っ切り、蔵前橋通りを超えてJR高架橋の第2秋葉原の方を潜ると、すっかりアキバもハズレとなる。


逆に住所的にはやっと"秋葉原"になるンだが、いかんせん台東区←

古い中小ビルの中に屹立する真新しいタワーマンションに到着する。


既にJK服のジュリ、ジャージ(多分下はスク水)のスピア…そして追跡チームのリーダーが来てる。


追跡チームは"セクボ"の精鋭だ。


「遅いっ!」

「す、すみません!クィーン」

「アンタじゃない!テリィたんょ!」


一気にまくし立てようとするスピアを、リーダーがなだめてくれて助かる。

僕は彼を"戦友"だと思ってるが、彼は僕を単なる疫病神だと思ってイルw


で、リーダーのブリーフィング。


「残念ながら"セクボ"の写メ作戦は空振りでした。しかし"バウワウイーツ"の"宅配パートナー"をやってるメンバーから有力な情報が入りました」

「あ、最近増えてるょね"バウワウイーツ"って。美味しいのかな?」←

「味は変わりませんwで、そのメンバーは、ハンバーガーの駅前広場店でよく"宅配パートナー"をやってルンですが、同じ"宅配パートナー"に"サイバー屋(スピア)とのツーショット"とよく似た男がいるそうで…」


あ!"奴"が駅前広場店に来ました…やっ?デリバリーに出発するぞ!クイーン、どうします?何を眠たいコト逝ってんの?アンタ、ソレでもセクボ?追え!直ぐ追うのょ!ウチの追跡チームは今、何処?急いで呼んで!テリィたんは?伝令!


「で、さっき、このタワーマンションに"奴"が入って逝きました。追わせてます。ココから御静粛に。特に…クイーンは」←

「だって、テリィたんが!」

「お静かに」


タワーマンションのエントランスには知らない大手宅急便の男がいて、リーダーと目が合うや頷いてオートロックに番号を打ち込む。


楽々侵入する僕達が高層階用エレベーターホールに逝くと追跡チームの女子がお出迎え。

ジュリに軽く頭を下げた彼女はリーダーに何かを耳打ちしてからエレベーターガールにw


「ターゲットは、最上階に上がったそうです。"奴"の配達先は最上階らしい」

「タワーマンションのペントハウス?大金持ちでも国民的ハンバーガーなんて食べるのね」

「いや。ペントハウスの更に上です。屋上の塔屋で…間もなく着きます。扉が開くと身を隠すモノが何もない。みなさん、背を低く!」


40階だか50階だか忘れたが、高層ビルの屋上って逝ったコトあるか?

ホントに世界が丸く見えるwでも、スゴい風で吹き飛ばされそうだ。


こんなトコロで誰がハンバーガー食べるの?


一歩外へ出ると胸の高さまで平らな構造物があり、四方はフェンスに囲まれてる。

コレは…ヘリポート?追跡チームが"奴"はポートの向こう側だと教えてくれる。


ソコへ、ハンバーガーを注文した客が降臨w


最初は小さな点。リーダーが指差す先の空に現れた黒点が、見る見る巨大化して逝く。

AS332より長い胴体、メインローターが5枚も?やや?要人用ヘリEC225じゃナイか!


"スーパーピューマ"だっ!

モノホンを見るのは初めてw


あ、東日本震災の時に1回←


嵐のような風音を圧する爆音を轟かせ日本では首相専用の大型ヘリがタッチダウン!

ポートの向こう側から"奴"が飛び出し大型ヘリに駆け寄ってハンバーガーを渡すw


すると、EC225は再び機械獣の金切り声のような爆音を残して離陸、タッチ&ゴー!


スゴい!まるで戦闘機動(コンバットマニューバ)だ!

ココはDien Bien Phuかょw


そー逝ぇばヘリがフランス製←


物陰から呆然と見送る僕達だったが、スピアがボソッと呟くのを僕は聞き逃さない。


「アレは…パパのヘリだわ」


第3章 昼下がりのゴーパー


その夜、またまた関係者が御屋敷(ミユリさんのバー)に集合。


「おいおい!スピアのパパって何者だょ?ハンバーガー買いにアキバまで大型ヘリを飛ばす人?誰?」

「あーん。ごめんなさい!実はパパは…億万長者なのdeath」

「けげ!とゆーコトはスピアは…大富豪の娘?」


ギョッとなった常連が、ジャージ姿のスピアを遠巻きにしつつ半円形に取り囲む。

中には社会の底辺系も多くて彼等にすれば初めての"会いに逝けるお金持ち"だw


しかし、億万長者ってハンバーガーをオンラインデリバリーで食べるモノだろうか?

しかも、昼は"宅配パートナー"で夜は"メトロキャプテン"な彼が届けるモノを?


「さらに、おかしなコトがあります」


冷静に話を続けるのは"セクボ"の追跡チームのリーダーだ。


「彼が去った後に、ヘリポートの高所作業用の足場(キャットウォーク)にトンでもないモノが落ちていたのです」

「あ。新発売の"探検のストロベリーパイ"お試しクーポン券の束だな」

「額面100万ドルの小切手です」


ええっ?!100万ドル?何でドルなの?

円じゃないのは新型コロナの影響か?


しかも、その小切手は細かくビリビリに破かれ空に撒かれている。

(100万ドルと知りw)必死になって拾い集めるも半分以上が未回収。


「あと"奴"は、我々が隠れてるとはツユ知らず、エレベーターで地上へ降りて行きましたが…ミ→ナ、お話ししてくれ」


あ、エレベーターガールをやってくれた追跡チームの女子だ。


「クイーンをお待ちしてたら"奴"が乗り込んで来たので、咄嗟にエレベーターガールのフリをしました。すると、地上へ降りる途中、27Fで乗り込んで来たメイドが"奴"に小切手を寄越せと迫っていました」

「えっ?メイド?何処の御屋敷(メイドカフェ)かな?」

「いえ。制服ではありません。恐らく1点モノで、それこそhaute coutureです。で"奴"が"小切手は破り捨てた"と答えると激怒して…地上階で2人が降りるまで壮絶な痴話喧嘩となり、もータイヘンでしたが、その最中に男からナンパされしました」←


早業だっ!しかし…


僕が声をかけるまでもなく、既にスピアがスゴい勢いでPCをカチャカチャやってる。

たちドコロにマンションのエレベーターの防犯カメラをハッキングして画像を拾う。


「見つけた。何ょ、ツルペタじゃないの」

「やめとけょ。その無駄なドヤ顔」

「ハイ。2人ともソコまで。うーん。アキバのメイドじゃナイわ。知らない顔だもの」


ミユリさんが断言する。


僕の嫌いなロングスカートのクラシックなメイド服に身を包む彼女は意外に長身な美人。

その後2人は御徒町のラブホに消えて、未だ追跡チームが張ってるが出て来た形跡ナシ。


「恐らく地下で他のビルと繋がってて、ソコからファイン、じゃなかった、ソコから逃げたのかもしれません。ココらは古いビルが多いので。スミマセン。見失った(ロストした)かもしれません」

「ソレとも超絶倫男で未だ続いテルとか…うーん手掛かりが途絶えたわ。どーする?テリィたん」

「わかった。何処に消えたにせよ(おび)き出すしかナイ。ミユリさん、ドリィに電話してくれないか?トロイさんと話したいンだけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…ああ、モチロンだ。モチロン、そうなれば資金は出す。でも、その負債では君は破産だろう?今月中なら、あと8分の1出すょ。検討してくれ。ご家族によろしくな…あ、やぁ、テリィたん。君から電話なんてワクワクするな。何?」

「5時間後にパーティーを開けるかな?」

「いいょ。楽しそうじゃないか」

「友達をいっぱい呼んで、トロイさんのために、みんなで祝おうょ」

「ウレしいな!でも何を祝うんだい?」

「悪いけど切るょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


5時間後。


トロイさんのタワーマンションの界隈がタイヘンなコトになっている。

大小様々、色も多彩な外車がマンションの周りにトグロを巻いている。


コレだけ揃うとベンツがカローラに見えるw


「ゴーパーだ」

「え?何?」

「ゴーパー。豪華なパーティ」

「今、作ったの?」

「誓って違う。さぁ!ゴーパーにGOして金持ちと話そう!」


ところが、燕尾服にパーティドレスの大行列の先頭にいる執事みたいな爺さんが僕達はおろか結構な身なりの客を中に入れさせない。


「申し訳ありませんが、このタワーマンションは"本日貸切"でございます。招待状のない方はお入れ出来ません」

「あ、トロイさんの客だけど」

「みなさま、そうおっしゃいます。誠に申し訳ございませんが」


僕は前に潜入wした時に確認してあった防犯カメラに向かって叫ぶ。


「ドリィ!タイヘンだ!パーティに入れないよぉ!」


間髪入れずに老執事が耳に手を当て…すげぇイヤホンしてンのかょ。ハイテク爺さん?

そして、なーんと袖口(に仕込んだマイク)に向けて何か答えてるwこの人 MI5のOBか?


取ってつけた満面の笑顔が僕達を迎える。


「ようこそ!ミユリ様にテリィ様(呼ぶ順番が逆だょw)!ミユリ様、何と可愛らしいメイド服を。お付きのテリィ様、次からは、先にトロイ様のお知り合いだとおっしゃってくださいませ」


おっしゃったょ!


政財界のお歴々の大行列からの怨嗟の視線を満身に浴びつつ僕達は奥のVIP専用エレベーター(ソンなのあったのか!)に案内される。


どーゆーカラクリか、エレベーターガールが追跡チームのミ→ナで、黙って会釈する。

エレベーターでミ→ナの後ろ姿のラインを鑑賞中に不粋なミユリさんの肘鉄が鳩尾に←


カラダを2つに折って咳込んだトコロでトロイさんのフロアに到着してドアが開いたら…


あれ?フロアを間違えたかな?


何しろ、ワンフロア全部の壁と逝う壁が取っ払われ丸々パーティ会場になってる。

あの電話から、リニューアル工事をかけたのか?しかし見渡す限りの人また人だ。


その人混みが…ザワつきながらも見る見る二手に分かれ、何と僕達に向かって道が開く。

そして、人混みの死海を二つに割りコチラに渡るのはモーゼ…ではなくてトロイさんだ。


「やぁ、テリィたん!身内でこじんまりと思って声をかけたんだが…しかし、ドリィが喜んでね。あんなイキイキとパーティを差配する彼女は久しぶりに見たょ。ありがとう、テリィたん」

「素敵なパーティですね。ソレから、女性のドレスコードにメイド服を入れて頂いてありがとうございます。で、スピアのパパさんですが…」

「うん。呼んであるょ。彼とは、昨日、大型買収を終えたばかりで、未だ御褒美を渡してなかったので、逆に家に来てもらう良い機会になった。助かったょ」

「へぇ。大型買収って、何を買収したのですか?」

「政府だょ。新興国の政府そのものを買収した。安かったから」←

「…と、ところで、要人用ヘリで飛び回る大富豪が喜ぶ御褒美って何でしょう?」

「メイド服さ」

「何ですって?」

「今回は、英帝国を絶頂期に導いた宰相グラッドストンが死んだ時にハウスメイドが来てた服だ。あ、テリィたんは確かスチームパンクスだったょね?もしかして、君が欲しかったかな?」

「いえいえいえいえいえいえ。今回は彼に譲りますょ」←

「ソレは良かった。スピアのパパンも喜ぶだろう。奴は歴史上の偉人の死に関わるメイド服を集めては、愛人に着せて楽しんでるようだ」

「ソ、ソレはまた、歪んだ(バロックな)趣味ですね」

「退屈なんだろう。念を入れて今回はオークションも仕掛けておいた。結構掘り出しモノのメイド服を揃えたから、コチラも奴は目が離せないハズだょ。テリィたんも見ていくかい?」


見ると、パーティフロアの遥か向こうの一角がオークション会場になっているw


「ようこそ。早速1番から始めます。英国の黄金期ヴィクトリアン初期のアルバート公夫妻にお仕えした者のメイド服です。こちらは3万から始めます。3万は?左の方。そして3万1千、3万2千ですね。3万4千は?前列の女性の方。3万6千に上がりました。どなたか3万7千はいますか?」


楽しそうに眺めていたトロイさんだが、あっ忘れてた、と逝う感じで僕に声をかける。


「テリィたんも参加するか?カードを貸そうか?」

「カード?限度額はいくらですか?」

「ないよ」


ヤメとこうw


「9万。9万、赤いドレスの女性が10万。11万は如何ですか?はい。12万」

「15万。あ、私は算数が苦手でね」

「ソチラの紳士から15万の手が上がりました。16万は如何ですか?16万。17万と18万いただきました。あ、前列の男性から18万が出ました」

「あぁ算数って難しいな。20万」

「先程の算数が苦手な紳士から20万」


ドンドン値が上がるのをハラハラして見ていると今度はトロイさんから耳打ちをされる。


「来たょ。スピアちゃんのパパン。あの算数紳士だ。しかし、18の次は19だろ、普通は。ホントに算数がダメなんだな」←


ソンなコトはナイだろうが、見るとヤタラと背の高いラフなジャケット姿のオッサンだ。

ホントにスピアのパパンかな?彼女はトランジスタグラマーなのに背高痩せっぽちだょ?


ママょと確認のため話しかけてみる←


「いいお天気ですね」

「え?うん。良い日和だ…オークションやってルンだけど」

「スピアのパパンさんですか?」

「本当は秘密だが、実はそうだ。娘には内緒で頼む。23万」

「じゃ僕は24万」


チラっとトロイさんを見たら、彼は声を出さずにカラダを2つに折って大笑いしてイルw


「お客様!24万。こちらの女性も同時に24万です。どうされますか?」

「じゃ僕は25だ」

「え?君も競ってたのか?君、あのメイド服を私に26万で譲ってはくれまいか?」

「お客様お待ちください!オークションは紳士淑女の嗜みですぞ。お客様同士の相対取引は禁止です!」

「もちろん、お譲りしますとも!さぞや新しい恋人さんにお似合いでしょう!ついては条件を1つ…」

「では、27で落札だ。あれ?28だっけ?まぁドッチでもいいや!」

「お客様!お客様同士の…」


ココで、トロイさんが大笑いしながらも拍手してくれて、万事が幕引きとなる。

さて、役者が揃ったので、次のステージは僕の仕切りで幕を開けねばならない。


僕は、落札の熱気が未だ冷めやらナイ観客に向かって話しかける。


「みなさん!先ずは、レトロなメイド服を鮮やかに落札された、コチラの紳士に拍手を!」

「おおっ!ありがとう!良い取引(ディール)でした」

「さて、みなさん!レトロ美術の守護神たるコチラの紳士は、さらにアキバPOPカルチャーの最先端"地下鉄戦隊メトロキャプテン"に登場する悪の女幹部"ムーンライトセレナーダー"のコスチュームをアキバの名匠ウルミ氏のhaute coutureにて発注される旨も明らかにされました!みなさんは、アキバのコスプレファッションがhaute coutureまで登り詰めた瞬間の歴史の証人だ!みなさん、みなさん自身とコチラの紳士のタメに、どうぞ心よりの拍手を!」


間髪入れずトロイさんが立ち上がり、喜色満面で拍手するものだから、他の客もワケもわからズ立ち上がって肩を叩き合い喜び合うw


ま、1番ワケがわからナイのはパパン自身←


「え?何で?ま、いいか。この前メイド服もつくったしな。"ムーンライトセレナーダー"ばんざーい!」←

「そして、その"ムーンライトセレナーダー"のコスチュームを着る幸運なコスプレイヤーは…」

「待ってくれ!テリィたん、その紹介は僕にさせてくれ。その幸運なレイヤーさんは、コチラのミユリさんだ!アキバ最強メイドにして"歴史上の偉人に係るメイド服"の名コレクター、パパン君の新しい恋人だ!さぁみなさん!拍手を!割れんばかりの拍手を!」


いつの間にやら、フロアを埋め尽くす客が全員オークション会場に注目しておりトロイさんに請われるママに割れんばかりの大拍手w


コレはスゴい!ホントに、このタワーマンションにヒビが入って割れそうだ笑

しかし"ムーンライトセレナーダー"って"歴史上の偉人"で良かったかな?


「君は…何者だ?」

「アキバのヲタクです。スピアさんの友人ですが、ココはトロイさんの逝う通りに…」

「スピアの?わ、わかった」


怪訝な表情を浮かべたパパンも瞬時に気持ちを切り替え、同じくヤケクソになって微笑むミユリさんと会場全員からの祝福を受ける。


どうも、新しい恋人さん。はじめまして。どうも。よろしく。お幸せに。こちらこそ。お似合いよ。握手。微笑む。握手。微笑む…


もはや"新しい恋人お披露目パーティ"だw

ソコへ新しく始まる恋路にお邪魔虫が出現!


「ガリガリで黒髪の東洋女は"新恋人"としては不似合いだわ!だからっ!パパンを愛してる!愛してる!だけどっ"元恋人"の私が殺してやるっ!」


ドイツ語(だと思うw)?


キラキラと輝く金髪に蒼い目。エルフを思わせる北欧系の長身綺麗ナイスバディの登場。

明らかに激昂しつつも発言は白人に珍しく合理的ぽい?内容はハチャメチャなんだけど。


「わかりました。こうなった以上は、新旧恋人同士、お互いメイドらしく…コスプレプロレスで勝負しましょう!」


やっと現れたか、元恋人。

しかし、スゴい美人だな。


まるでスーパーモデルじゃナイか!


第4章 エレベーターが着く前に


広大なパーティ会場の、オークション会場とは対角線上のコーナーにリングがあり、どうやら演し物的にプロレスをやってたようだ。


エリゼと名乗った"元恋人"は、クラシックなメイド服のロングスカートを破き、チャイナドレス風にスリットを入れてリングイン。


そして、ミユリさんの原爆固めを食って呆気なくマットに大の字w3カウントを奪われる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


さて、今回もジグソーパズルのピースが集まり、全体の絵が見えてくる。

最後のピースはパーティを抜け地上へ向かうエレベーターの中で探そう。


最初に退場するのは"元恋人"のエリゼ。

僕と"新恋人"のミユリさんがお見送り。


「貴方ね?私をパーティに誘き寄せたのは?」

「アキバのヲタクにしては優秀だろ?ところで、作者としては"地下鉄戦隊メトロキャプテン"のレイヤーがどうなったのかを知りたいな」

「ああ、ケンタ?里親の間をタライ回しにされた可哀想な子。私がベルリンに連れ帰るコトにしたわ。もうアキバには戻らないと思う」

「君は、彼を一流のレイヤーに育て上げてスピアをたらしこみ、パパンから大金をせしめようとしたんだね?それとも、彼の方から話を持ちかけられたのかな?」


エリゼは溜息をつく。う、美しい…


「私から持ちかかけた。コスプレメーカーのカタログから抜け出たようなレイヤーセンスも短期間で叩き込んだ。小道具とかは冬物のカタログ通りだけど、大事なコスだけはhaute coutureにこだわった」

「スーパーモデルである君の稼ぎなら、そのくらい朝飯前だ。見事なサリバン先生役だったね。でも愛情までhaute coutureというワケには逝かなかったのか?」

「パパンの娘と接触した夜、ケンタが私のトコロに来て、何もかも終わりだと言ったの。計画も…私との関係も。私にそう告げてから、恐らくケンタはパパンの娘に全てを話し、許しを請うつもりだったらしい」

「アキバのマイフェアレディだ。元はピグマリオンの神話だょね。自分で彫った美しく完璧な彫刻に恋をしてしまう物語だ」

「全て運命だと思った。おとぎ話みたいに。そして、その通りだった。ただの夢…でも、ミユリ。いつの日か、私は貴女を必ず倒す」

「え。私?」

「人前でパパンにキスした」

「してない。してないわ」


2度目の"してないわ"は僕に向かってだw


「しようとした」

「でも、してないって。ねぇ!テリィ様、何とかして!元はと言えば…」

「it's not my business」


実はエレベーターはとっくに地上に着いてたンだが、ココでエレベーターガールが開扉。


ナイスタイミング、ミ→ナ!


「エリゼ。君は逆美人局を仕掛け失敗した。でも、それ自体は犯罪じゃない。君は自由の身だ。ところで…君は言葉を濁すが、君の方からパパンを振ったのだろ?」

「そんなコト、何の関係があるの?確かに昔の彼は違った。優しかったわ。私が指輪を返した夜、彼の中で何かが壊れたの。それからは…確かに変なメイドを推しては別れたりスルようになった」

「ちょ、ちょっち待って。その変なメイドって、もしかして…」

「大恋愛が壊れた後って、砕けた心のカケラが元の形には戻らない。パパンにとっても、悪いコトをしたと思ってるわ」


ココでエリゼは金髪を(ひるがえ)しクルリと振り向きミユリさんのコトを白く長い指で指す。


「パパンと別れても、私は彼にとって最高のメイドでありたい!チビでガリガリで黒髪のメイドはパパンには不似合いなの!だから、ミユリ!私は、いつか必ず貴女を倒す!」


ココはミユリさんのTOである僕の出番だ!


「決めつけるな!中には変なキャラに惹かれるヲタだってイルぞ!」


うっ!何でミユリさんの肘鉄が僕の鳩尾に…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


次に退場するのは"パパン"だ。

今度のエレベーターは屋上逝き。


「エリゼが私の"元恋人"だと、君は何処で知ったのかね?」

「ソレは…実は、雑誌のゴシップ記事で読みまして。お相手はドイツ人のスーパーモデルだと」

「2ヶ月前に喧嘩をしてエリゼから暴力を振るわれたw被害届を出すのは控えたが、パパラッチに見つかってしまった」

「その後も2度も警察を呼ばれてますね?ドイツ美人って、ヤタラ自分が合理的だと思ってるから始末が悪い」

「わかってくれるか?女って理屈に合わナイトコロが可愛いンだょな?」

「で、パパンさんはケンタとは会われたのですか?」

「1度だけな。君もいたらしいが、アキバのヘリポートで会ったょ」

「アレは…会ったとは逝え一瞬の出来事だったのでは?」

「数日前、見知らぬ青年が私の東京オフィスを訪ね"全て金を巻き上げるための芝居だ"と告白して来たそうだ。そして"本気で娘を愛してしまった"とも言ったらしい」

「ソレを聞いた貴方は?2人を許したのですか?」

「まさか。当時は裏でエリゼが糸を引いてるとは夢にも思ってなかったが、元より大事なスピアのコトを、そんなイカれたペテン師紛いの餌食にスル気はナイ。直ちに手切れ金として100万ドルの小切手を切った」

「そして、ソレをあのヘリポートで渡したのですか?手切れ金を手渡すためにEC225をタッチ&ゴーさせたのか…」

「別れさせるにせよ、その前に奴を一目見ておきたかった。しかし、その場で"奴"は小切手を破り捨てた。スピアと出逢い、恋したが故に、もっと良い自分になる決心をしたと言っていた。ソレも小気味好い生き方だ」

「彼は、エリゼさんに愛され、一緒にベルリンへ逝くコトにしたようです」


ココで、パパンさんはとても大きな溜息をつく。


「…オークションの金は、いつも通り、慈善団体に寄付するから書類を送るようにトロイさんに伝えてくれるか」

「最後の最後に、脳天気に10万円も値を上げてしまいましたね。スミマセン」

「あはは…ん?10万円?おい、あのオークションはドル建てだぞ?」


えっ?僕は1000万円単位で値を吊り上げてたのか?驚いて危うく腰を抜かしかけた瞬間…

実はエレベーターはとっくに屋上に着いてたンだが、ソコでエレベーターガールが開扉。


ナイスタイミング、ミ→ナ!


1歩出たヘリポートには大型ヘリEC225が翼を休めているが、その前に…スピアがいる。

晴天ながら横殴りの強風の中、ヘリポートに両脚を踏ん張って、僕達を睨みつけている。


「スピア!今回は会えないと思ってた!よくココがわかったね!さぁハグだ!スピアは、パパのものだ」

「どうせ私なんか要らないでしょ?返品して頂戴」←

「…何をカリカリしてるのかな?」

「いつもパパの命を狙う人や恨んでる人がいないか、聞いてるわょね?エリゼのコトは?」

「エリゼ?あぁ、もちろん彼女は怒ってたさ。でも、彼女は、いつだって怒ってルンだ。ってか元カノというモノは、みんな怒ってるモンなんだょ」←

「え?元カノって…そーなの?」

「スピアは、もっとパパには優しくしなきゃ」

「どうして?」

「私はパパで、スピアは娘だ」

「今は親不孝中なの」

「…ショックなのかい?」

「まさか。イラついてるだけ」

「何故かな?」

「パパは、うぬぼれ屋で!傲慢で!大富豪だからよっ!」

「全部、褒め言葉だな…」

「効いてない?!」

「パパのメイド好きは止まらない。コレはもう不治の病で治らないンだ。でも、パパは、どんなメイドを好きになっても、そのメイドのコトを、スピアにママと呼ばせるつもりはないょ」

「…パパ!」


パパンさんは、両手でスピアを抱きしめる。

コレでジクソーパズルは完成!と思ったら…


あれっ?スピアが睨んでる?誰?えっ?僕?


「テリィたん!もう2度と逝わないで。お前は"元カノ会長"じゃナイなんて。そんなトホホなコト、もう決して逝わないで!」


スピアは、僕を睨み殺す勢いだ。

一声かけようとした、次の瞬間。


彼女はワッと泣き出し、今度はミユリさんの胸へと真っしぐらに飛び込んでしまうw


あぁ、ソコは実は僕の指定席なんだけど。

でも、何でミユリさんまで僕を睨むかな。


そして全く理屈に合わない追討ちの科白(セリフ)


「もう2度と恋など追いかけはしないわ。私は、一生テリィたんの"元カノ会長"として生きるのっ!」


うわ!ソレって重過ぎでしょw

僕とパパンさんは同時に叫ぶ。


「ソレだけはやめてくれ!」



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"富豪なりすまし"をネタに、億万長者達、そのセレブな元/現恋人達、常連ストリートギャングの精鋭"追跡チーム"やその女子メンバーなどが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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