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君と1年  作者: しあ
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#01【迷子発見】

―――今日、風強いな…………。


満開になったばかりの桜が散っていくのは、見ていて少し悲しくなる。

もう少し雰囲気というものがあってもいいのではないだろうか、と毎年思うのだが。


「ったく、また眉間にしわ寄せてんぞー」


『うるせぇ黙れ』


「お前他に言うことないの!?」


さすがにおれも泣くよ!?とぎゃんぎゃんうるさいこいつには、きっとこんなふうに思う心すらないのだろう。自分がセンチメンタルなだけ、という可能性は無視する。認めたくない。


『お前が寝坊したせいで遅刻しそうなんだよ、喋ってないで歩け』


「そんな事言うなよーつれないなぁ。そんなだからモテないんだぞ?」


『興味ない』


「うわ冷たぁーい!私ないちゃうわよっっ」


『遅刻したらお前のせいだからな』


「ごめんって!精一杯のオネエ言葉をスルーしないで!?」


真面目に遅刻しそうなのに、こいつには一切慌てた様子もない。今日は事前登校だってのに、どこからこんな余裕が生まれてくるんだか。


少しイライラして歩調を速めると、はえーよ!待って!?という文句が聞こえる。無視。全力でダッシュして置いてってやろうか。方向音痴め。


すると、小走りでついてくる足音がふいに聞こえなくなった。いや急げよ。立ち止まるなよ。ここは1発ゲンコツでも…………そう思って振り返ると祐太郎はぼーっとした様子で立ち止まっていた。


「なぁ、あそこにいる子、もしかして迷子かな」


『は?なんで俺に言うんだよ』


こいつとは小学校からの腐れ縁だが、方向音痴は年々悪化している。だからこうして、4月から通う高校の事前登校も一緒に行っているのだ。

そんなこいつが迷子と言うのだから、100%迷子で間違いない。でも急がないと。どうするか……。


彼の視線の先を追うと、そこには確かに迷子なのだろう、きょろきょろと辺りを見回したり手元のスマホを眺めたりしている(地図アプリでも開いているのか?)女の子がいた。よく見れば同じ高校の制服を着ている。まじか。これはまずい。


「一緒に行きませんか?って誘おうぜ!」


こいつはお人好しだ。そう言うと思った。


『なんでだよめんどくさい、遅刻するって言ってるだろ』


「あの子は遅刻どころかたどり着けないかもしれねぇのに?」


『それはそうかもしれないけど……』


「……………なぁ、助けてやってくれよ、薫……」


何故お前が涙目になるんだ……。

仕方ない、と諦めのため息をついて、俺はその子に声をかけた。


『あの…………』

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