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第九十三話 天上の旋律


「あまりにも力の差がありすぎてはただの蹂躙になってしまいますしね。戦士としてはやはり歯ごたえのある相手の方が望ましいというものです」


 そう言うと、シドが呪文(カズィクル・カレン)を唱え床から闇で構成された鋭い槍が数十本同時に真上に向かって射出される。


「なっ!?」


「くっ」


 槍同士の隙間は小さく間に入ってやり過ごすこともできない。クラヴィスとミリューはそれぞれ真下から射出される数本の槍を鉤爪と大剣で弾き、砕くことでやり過ごす。


「下ばかり見ていてはいけませんよ」


 間髪入れずにシドが魔剣を連続して振りかざすと魔剣から射出された漆黒の剣閃がいくつも二人に向かってくる。サイズは小さいが数が多く、避けるのが難しいものを選んで弾き飛ばす。が、見た目以上の威力と勢いに大きく体勢を崩されてしまう。


「……重いっ」


「剣閃自体は小さいのになんて破壊力だ……」


「お次は上からですよ。落雷に御注意を」


 シドが呪文(シャドウライトニング)を唱え、右手をパチンと鳴らすとシドの上方から黒い稲光が数条蛇行しながらクラヴィス達に向かって疾走してきた。雷だとすると武器で受けては感電する恐れがあるため、回避に専念するしかない。やっとのことでやり過ごした二人だが三連続の攻撃を凌いだだけで息が上がり始めていた。


「……鬱陶しいっ!」


「……奴相手に距離を置いていたらジリ貧だな。時間も無いし予定通り近接戦で終わらせよう」


「んっ」


 クラヴィスの気剣術もミリューの源獣外装も残り時間が少ない。二人が同時に別の方向からシドに向かって駆け出し、星辰武装を振りかざす。近づけまいと剣閃を放つシドだが、最小限の動きでそれらを躱す二人が接近するのを止められずに右手の魔剣でクラヴィスの大剣を、左手の短剣でミリューの鉤爪をガードする。


「ふむ。近接戦ならそちらに分があると……錯覚したんですね?」


 シドがそう言った瞬間、その全身を覆う黒いオーラが鋭く輝く黒い光となって迸り、二人の武器を軽々と押し返し、大きく弾き飛ばす。


「「くっ!?」」


 予想外に膂力が強化されたシドからまた距離を離されてしまった二人に焦りの表情が浮かび始める。


「闇神化装の本質はその強大な身体強化(フィジカライズ)にあるのです。『闇』と『元』の二つの力で超強化されたその力は本来の力の実に10倍に相当します」


「10倍……だと!?」


「これであなたたちに勝ち目がないことがわかりましたか?それではそろそろ終わらせましょう」


 シドがミリューに向かって一歩踏み出すと、瞬時にしてミリューの目の前に現れ袈裟がけに切り下す。


ガキィンッ!!……バンッ!


「……くぁっ……あぅっ!」


 ミリューはすぐに反応しクロスした鉤爪でガードするも凄まじい勢いで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。シドの追撃を防ごうとクラヴィスが動線上に入り、横薙ぎに大剣を振るうも魔剣によりあっさりと防がれ、その直後にシドの回し蹴りをまともに横腹に受けたクラヴィスもまた大きく吹き飛ばされ、地面を転がる羽目になる。


「……ぐぁっ……!」


「貴方方もよく頑張った方ですが、これまでですかね」


「いいえ、これから(・・・・)です」


 壁際に崩れ落ちたミリューに駆け寄り、ポーションを飲ませていたリファがそう言って立ち上がる。


「ほぅ、まだ何か手が残されているとでも?それとも戦闘力の殆ど無いあなたが戦うというのですか?」


「私自身には戦う力はありません。ですが、最近漸く気が付いたのです。私はサポート特化の神人だと」


「サポート特化、ですか?」


「ええ。それを今から見せてあげます。いえ、お聞かせしましょう」


 リファが右手の中指に嵌めた魔道具(マイク)と呼ばれる指輪を口元に当て、大きく口を開き唄い出す。


『神よ、我らが大神よ。今こそ我が敵を蹴散らし降伏せしめる力をお与え下さい』


 グランマミエ国歌の最初の一節を唄い終えるとリファの体が白く輝きはじめ、それに連動してクラヴィスとミリューの体も輝き始める。


「……なんですか、これは!?」


 流石のシドも驚きを隠せず驚愕の声を上げる。


『鍛えし我らが民の力、今こそその猛威をもって悪辣な輩を打ち破らん。正義を右手に。神威を左手に。今こそ心を一つに神の代行者たる王の元に集わん』


「『天上の旋律』、リファの切り札の一つだ」


「力が湧いてくる……負ける気がしない」


「馬鹿な……貴方は一体いくつ特殊能力を持っているというのですか……!?」


 シドが驚くのも無理はない。大多数の神人は一つ、少数が二つ、ごく稀に三つの加護を持つ者がいたと言われている。『天神』に、『神医』、更に『天上の楽師』まで持ち合わせているとするなら、それは最早神人としてもあまりにも希少と言わざるを得ないのだ。


 リファが唄い続けると更にクラヴィスとミリューの光も増し続け、心身共に癒されていくのを感じる。そして天上の旋律の最大の特徴は標的とした仲間を癒すことではなく、その身体強化(フィジカライズ)効果そのもの(・・・・・・)を引き上げることにあった。リファが唄っている時間だけという制限はあるが、最大で2倍にまで効果を高めることが可能となる。神力による強化倍率は5倍、更にその倍で10倍。これで強化倍率における不利はほぼ無くなったと言えるだろう。


『さあ、行け。進むのだ。我らが敵は大神の名を穢すもの。決して許しはしない、許してはならない。討て!怨敵を!』


 リファが国歌を唄い終えるとクラヴィス達の纏う光がこれまでにないほど強くなる。二人はリファに片手の親指を立て、決着をつけるべくシドへと疾走した。その姿を心配そうに見つめながらも、リファは再び国家の斉唱に戻った。





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