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第八十一話 異変の始まり


 エルハルト王子の忠告を受けてから数日後、私の周りでも色々なことが起こり始めた。最初は王都に買い物や食事をしに行くとこれまでのような好奇の視線ではなく、温度を感じられず寒気を伴う様な視線を頻繁に感じるようになり外出を控えざるをえなくなった。


 それからまもなくレイナがハミルトン領の自宅に帰ることになった。元々病気がちだった父親の病態がここ最近急激に悪くなったとの報告を受け、看病のために一時帰宅することになったのだ。本人は連絡を受けたことを暫く黙っていたのだけど明らかに様子がおかしいので問い詰めた所事情を話してくれた。私の護衛を放棄するわけにはいかないと渋っていたレイナだが万が一のことがあった場合後悔させるわけにはいかないと説得し、帰宅することを決めてくれた。

 数日後にレイナが出発したけれど、「私がいない間くれぐれも無茶なことはしないでくださいね!」と何度も何度も念を押して行った……私そんなに信用ないのかしらとミリューに聞いてみると、無言で目をそらされた。解せぬ。


 護衛がミリュー一人になったことで完全に屋敷に籠ることになったのだけれど、それから2週間後に……ミリューが書置きを残していなくなった。「どうしても確認しなきゃいけないことがある。数日で戻る」と書いてあったが、それから1週間経ってもミリューは戻らず、どうしようもなく心配になったのでヴァイドに捜索依頼を出して貰うことにした。

 不安が募る中二人がいなくなって寂しくなった別邸でいつものようにBPを作っていたところ、ヴァイドが血相を変えて研究室に飛び込んできた。


「リファ君、落ち着いてこれを見てくれないか」


 そう言ってヴァイドが差し出したのは20cm四方の木製の箱だった。ヴァイドの顔色から碌なものが入っていないのは予想できたけれど、見ないわけにもいかないので蓋をゆっくりと開けてみる。


「……っ!?……」


 箱の中には栗色の髪と黒色の髪、そしてレイナとミリューにプレゼントしたブローチとチョーカーが入っていた……。


「僕の方で確認したところ、レイナ君の親御さんが危篤というのも嘘だったらしい。誤情報に釣られて彼女が家に向かう途中で拉致された可能性が高い」


 あまりのショックに声も出ない私にヴァイドがレイナの消息について説明する。


「そ、そんな……じゃあ私が無理やり説得して家に帰そうとしたからレイナは……」


「いや、君がそうしなかったとしてもまた別のやり方で彼女を拉致していたと思う。君が責任を感じる必要は無いよ」


「で、でも……ミリューまで……そもそも犯人は何のためにこれらを送りつけたんですか?」


「うん、一緒にこの手紙が入っていてね。『一切他者に余計なことを言わずに今日の夕方までに一人で大聖堂に来るように』と書いてある。勿論君宛てに」


「そう、ですか……私が目的なんですね。そして犯人は天神教にいると」


「フェリクスあたりが怪しいとは思うけど確証はない。僕たちはどう動くべきだと思う?」


「……私が一人で行きます」


「正気かい!?確実に君は無事では済まないと思うけど」


「私の命よりミリューとレイナの方が大事です。ただ、私が翌日になっても誰も戻らなければ王族や警備隊に通報して下さい」


「僕としては君自身を最優先して欲しい所なんだけど、言って聞くような子じゃないよね……わかった。今から何が起きても対応できるように準備を進めておくよ」


「宜しくお願いします。何としてでも皆で無事に帰って来れるように私も頑張ります」


 夕方まであと2時間も無い。クラヴィスとミュリエラは生憎外出中だったのでナタリーにも言伝をお願いしておく。二人が怪我していた場合のためポーション類を持てるだけ持ち、大聖堂へと馬車に乗って向かうことにした。

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