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第八十話 王族とのお茶会


 その後の二日間は大きなトラブルもなく、学術集会が終了した。私にとっても非常に勉強になるものばかりで初日の件を除けば招待してくれた学長とグリフィス王子にはとても感謝している。


 だけど、なぜか今私はグリフィスの私設研究室のソファに座っていて、向かいにはグリフィスとエルハルトが、隣にはミカエラ王女が座っている。どうしてこうなったのかというと……初日のお茶会が終わった後にグリフィスから今度私設研究室に来ませんかとのお誘いがあったのだ。天才だからか王子という肩書だからなのかはわからないけども、学院の敷地の一画を借りて彼専用の研究室が建てられているとのことで、翌日の口頭発表を聞いた後にお邪魔することになった。


 研究室は二階建てになっている真っ白い建物で二階が実験室、一階は実験室の他に応接間や寝泊まりするための寝室が置かれていた。実験室には非常に高価で希少な実験器具などが取り揃えてあり、ヴァイドが物凄く喜んであちこちキョロキョロと見回していた。


 グリフィスは様々な分野に興味があるらしくヴァイドとは魔道具関連、私とは医療関連の研究について話し始めると誰かが止めない限りいつまででも喋り続けられるほど熱心な学者なのだとよくわかった。私達も学者肌なので彼と話をするのは非常に楽しく、それからも時々研究室にお邪魔して時には一緒に論文についてああだこうだと意見を言い合う仲になっていったのだけど、いつの間にかミカエラ王女がお菓子を持参してお茶をしに来るようになり、そしてまたどこで知ったのかミラハルト王子までもが毎回花束を持参してお邪魔するようになったのだ。そして今日はたまたまミカエラとミラハルトが一緒のタイミングで来室し、現在に至る。


「今日はお二人揃っての御来場とはまた珍しいこともあるものですね、兄上、ミカエラ」


「ミカエラがえらく嬉しそうに外出の身支度をしているのを見かけてな、リファに会いに行くのだろうとピンときたから便乗させて貰うことにした。ほら、今日はピンクの薔薇にしてみたが好みに合うか?」


「あ、ありがとうございます、エルハルト王子。可愛らしい薔薇ですね」


「え、エル兄様!?私は別に嬉しそうになんてしてませんわよ!」


 いつものように渡される花束を受け取った私の横でミカエラが顔を赤くして否定する。


「いやいや、君がリファさんのことが大好きなのは皆もう知ってるし。彼女は君が王女だからって変に媚を売ったりも自分を売り込んだりもしない、そんなところが良いってこの前も言ってたじゃないか」


「グリフィス兄様!そういうことは本人の前で言うことじゃありませんわ!」


 ますます顔を真っ赤にしてミカエラがグリフィスを怒鳴りつける。それにしても、そんな風に思ってくれてたんだ……。本当にミカエラは可愛いなぁ。もう少し素直になってしまえばもっと沢山の友人が出来ると思うんだけど、逆に王女という肩書が邪魔してるのかな。


「そう思って頂けているなら私もとても嬉しいです。私も心根が真っ直ぐで綺麗なミカエラ王女のことが大好きです」


「えっ!?あ、あの……その、わ、私も……綺麗で優しいあなたのことが……き、嫌いじゃないわよ!」


「ふふ。ありがとうございます」


 彼女はなんだか実年齢より幼く見えるので小さな女の子に懐かれている気分になり、とても嬉しくなってニッコリと笑いかけてしまう。するとなぜか彼女はまた顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。あれ、何か期限損ねちゃったかな。少しだけ不安になると、


「リファさん、あまり無防備に笑顔を向けるのは控えた方がいいかもしれません。同性までも虜にしかねませんからね」


 とよくわからないことをグリフィスが苦笑しながら言ってきた。


「同性までも虜に、ということであればエルハルト王子にこそ注意が必要かと思われます」


 そういうことは私じゃなくて超絶美形と名高いエルハルトに言ってくださいと矛先を変えてみる。


「私も異性には好かれる方だがさすがに同性には全く興味がないのだがな。それにしてもお前の自己評価の低さは相変わらずといったところか」


「そこもまたリファさんの美点だと思いますよ」


 貶されてるのか褒められてるのかよくわからず首を傾げていると今度は二人揃って苦笑していた。


「それにしても最近この4人で集まることが急に増えたな」


「ええ、これもまたリファさんのおかげと言ってもいいでしょう。最近私達兄弟もやや疎遠になりつつあったのですが彼女が間に入ってくれたことでまた絆を深めることができました」


「そ、そうね!私もこのお茶会はいつも楽しみにしているのよ、美味しいお菓子は皆で食べた方が楽しいものですしね」


 確かにここ最近王子や王女と頻繁にお茶会をしているせいで私も随分と気楽に彼らと接することができるようになった気がする。数か月前にはこんな風になっているなんて想像もつかなかっただろう。

 王族ということでビクビクしていたけどこの3人は皆実際に話をしてみると決して悪い人ではなく、むしろ性根は真っ直ぐな人だということがよくわかる。婚姻関係は別として、友人としてなら変に忌避する必要は無いと最近は思い始めている。


 ここで急にエルハルトが表情を引き締めて、真面目な声で話し始める。


「そういえば、最近天神教の動きが怪しいらしい」


「え、天神教が、ですか?」


「それは私も小耳にはさみました。フェリクスを筆頭にどうにもきな臭い動きがあると」


「ああ。元々あいつは色々な噂が絶えない人物ではあったが、ここ数か月は天神教の幹部が他国の人間や身元の怪しい人物と陰で交渉しているなんて話が急激に増えてきている。何が目的なのかは調査中だがリファ、お前が標的となる可能性も否定できん。警護は厳重にしておくことだ」


「……はい、御忠告ありがとうございます。ハミルトン家の方々とも相談して警備体制を強化します」


「お前は最早国の最重要人物の一人と言っても過言ではない。何か不安でもあればいつでも私に言うことだ」


「はい、ありがとうございます」


 とうとう天神教が動き始めたらしい……。フェリクスは何を考えているのか全然わからないけれど、私にとっても国にとっても良いこととはとても思えないことを今後やらかしそうな気がする。しっかりと身を守れるように準備をしていこうと決心した。



※※※※



 ある日、天気も良く買い物日和ということでミリューは一人で朝市へと好物のリンゴを買いに来ていた。彼女の好みは少し変わっていて甘いリンゴよりも酸味の強い酸っぱいリンゴがお気に入りなのだ。大半はそのまま丸かじりで食べるつもりだが、いくつかはリファのためのアップルパイ用にする予定である。


「ふふん。これでリファのナデナデは私のもの」


ケーキ好きのリファが喜ぶ顔を想像するだけでミリューの顔も緩んでしまう。そうして妄想を交えながら果物屋でリンゴの選別をしていたところ、視線を感じ振り返ると、そこには白髪に白い耳、白い尻尾が生えた女性の獣人が立っていた……。


「なっ!?……そんな……あっ!」


 その女性の顔はどう見ても最後に見た姉の顔、そのもので……一瞬ミリューが固まった、その間に女性は振り返って駆け出し、あっという間に見えなくなってしまう。


「リムル……お姉ちゃん……?」


 リムルは殺されたと聞いてはいたが、実際に遺体を自分で確認したわけではない、ないが……あまりにも衝撃的な出来事に頭が混乱したミリューはリンゴも買わずに帰宅することにした。明らかに様子のおかしいミリューにリファやレイナが心配してくれたが「なんでもない」と嘘をつき、きっと見間違いだと、あれは自分の願望が見せた幻だと言い聞かせてその日は眠ることにした。


 しかし、そんな彼女の気持ちを嘲笑うかのようにそれから数日おきに白ずくめの獣人の姿を街で見かけることになるのだった……。

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