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第六十九話 王との直談判


 そして国王との面談当日。マティアス国王、サヴァリス宰相、私にクラヴィスの四人で会議室に集まり、これから話を始めるところだ。


「よく来てくれた、リファ。エルハルトから聞いたが孤児院の件で相談があるそうだな」


「はい、マティアス国王陛下。御忙しい所私のために時間を割いて頂き大変申し訳ありません」


「いや、其方は王族の恩人。そのたっての頼みとあらば時間位は用意しよう」


「勿体無いお言葉ありがたく存じます。それでは孤児院の件を説明させて頂きます」


「うむ」


 エルハルトに説明したのと同じ内容をマティアスとサヴァリスにも聞いてもらう。


「ふむ、なるほど。確かにこのまま捨て置ける話ではないな」


「全く、神に仕える者が私欲のために子供らを食い物にするとは、嘆かわしいものですな」


「人材は国の財産だと私は思います。孤児の中から傑物が生まれて将来国を支える人物になるかもしれません。今の孤児院の偏った選別法ではそういった子を簡単に見落としてしまうでしょうし、それが国益に繋がるとはとても思えないのです」


「だがいくら国が多額の補助金を出しているとは言っても孤児院の経営母体はあくまで天神教だ。天神教は国教であり信者もかなりの数に上る。表立って国と天神教が衝突するのは望ましくは無い」


「真っ二つに割れる、とまではいかずとも国が荒れるのは避けられないでしょうな。その隙にまたレジェンディアあたりが攻めてこないとも限りません」


「そういうわけだ。確かに王都の孤児院において天神教の関係者らが不正を行い私腹を肥やし、子らを半ば売買するかのように扱っているようだ。だが国王としてそれを指摘し、断罪するには国への影響が大きすぎる」


 マティアスが無念そうな顔を作って私を見る。でもその表情は諦めてるようにはとても見えず、何か含み笑いすらしているようにも感じる。


「……はい、仰る通りだと思います」


「其方には何か良い案はないのか?」


 多分、ここまでは向こうも予定調和の流れだったのだろう。先日エルハルトから査問会の話題が出たことも承知の上だとすると、ここはこのまま相手の思惑に乗る形で話を進めるしかない。


「……陛下が表立つのが望ましくないのであれば、私が『天神の巫女』として彼らの罪状を査問会で暴露するというのはいかがでしょうか」


「ほう、査問会で其方が、か」


「確かにそれであればあくまでリファ殿が彼らを罪人として取り上げるのであって、実際に非があることが明らかになった後に陛下が沙汰を下す形になりますな。天神教本部の抵抗も少なく、国への影響も最小限に抑えられるでしょう」


「うまく事が運べば国にとってもさほど無理なく天神教の力をも削ぐことができるな。しかしその場合、確かな証拠を揃えることが必須になる上に、仮に成功したとしても其方の名が更に知れ渡ってしまう結果になるだろう。其方は目立つのを嫌っているように見えるがそれでもよいのか?」


 よいのかって、よいわけがない。私の希望はのんびりと薬を作りながら家族みたいに仲のいい人達とまったり暮らすことなのだから。

 でも、今はそんなことを言っていられる状況ではないこともわかってる。


「……本当の所はあまり目立ちたくはありません。ですが、あの子供達を見てしまっては自分だけが良ければいいとは思えません。何より一度決めてしまった以上は最後までやり通したいのです」


 ここが正念場だと思い、マティアスの目をしっかり見て本音そのもので答える。


「……暫く会わない内に何かがあったようだな。一本芯が通ったような印象を其方から受ける」


「最近孤児を二人引き取ったことが彼女に何らかの影響を与えたのかもしれません」


 マティアスの疑問にクラヴィスが代わりに答える。確かにそもそもあの二人が今回の件の切っ掛けになったのだからその通りかもしれない。

 というかあの二人に偉そうなこと言っちゃった分大人としてはみっともないところは見せたくないんだよね。結局の所私は見栄を張りたいだけなのかもしれない。


「よし分かった、その案を飲もう。2週間後にレヴァラス孤児院の院長を査問会にかける方向で動く。其方らはそれまでに証拠を集め、準備を整えるように」


「「畏まりました、全力を尽くします」」


 とりあえず舞台の準備は整ったけど、後は証拠集めに奔走する必要がありそうだ。ヴァイドに動いて貰ってはいるけれどどの程度進んでいるか確認が必須だね。

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