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第六十五話 孤児院の調査結果


「まず孤児院の数だけど、この王都には5つ存在しているんだ。そして収容可能な孤児の人数はそれぞれ100人~200人とばらつきがある」


 ヴァイドが資料を見ながら調査結果について説明を始める。


「同じ孤児院でも結構収容人数に差があるんですね」


「そうだね、その理由までは建てた天神教の責任者にでも聞かないとわからないけど。そもそもこの国では孤児院は天神教が管理していてね、国はその経営を補助している形になっているんだ。勿論補助といっても実際にはその経費の7割位は国が出してるから発言権はあるんだけど、あくまで孤児院の持ち主は天神教ということになる」


「つまり、国も関与はしているけれどあくまで経営主体は天神教ということですね」


「そういうこと。で、王都に路上孤児が増えてる要因についてだけど、ここ10年位各孤児院の収容人数が上限を大きく下回ってるんだ。100人上限なら30人前後、200人上限なら60人前後って具合にね」


「……何らかの理由で収容できるはずの孤児を受け入れていないってことですか。それであぶれた孤児が路上に増えていったと……」


「その理由がまた問題だらけみたいでね。ざっと調べた範囲だけでもかなりきな臭い」


「私達が調査したところ、相手方は資金繰りが厳しくこれ以上の孤児は受け入れが難しいと言っていたんだが、国から得ている補助金を考えれば今の収容人数の倍は軽く養えるはずなんだ」


 クラヴィスが具体例を挙げて補足してくれる。


「帳簿も見せて貰ったけどあれはどう見ても裏金が動いてるね。その上孤児院に入れた孤児達の動きまでもが怪しいときてる」


「どういうことですか?」


「孤児院に入れる時点でかなりの篩にかけられてるみたいで、どの子も何らかの特技や異能力を持ってるか、容姿が優れてるといった特徴があるらしい。そしてある程度育ったところで貴族や商会に引き取らせている。そしてここにも多額の金が動いている節がある」


「それってつまり……」


「人身売買」


 ミリューが聞いた事も無いような冷たい声で呟く。彼女も姉と一緒に売られた経緯があるから無理もない。思わず隣にいるミリューを抱きしめ、頭を優しく撫でてあげると「……んみゅ……」と小さく声が漏れ、強張っていた体から少し力が抜けたようだ。


「その可能性が高い。それもあえて少数精鋭にした上で高く売りつけているようだ」


 クラヴィスまでも苦虫を噛み潰したように渋い顔をしている。本当に胸糞悪い話になってきた……。


「元々孤児院は孤児達がある程度手に職を付けるまで保護して、その後は引き取り先を探して斡旋するための施設ではあるんだけど……極端に儲けに走ってる時点で限りなく黒だよね。纏めると、収容する孤児を厳選して少数にすることで経費を減らし、浮いた金は上層部の懐に。そして孤児は高く売りつけてまた懐を潤すと。こんな感じかな」


「その結果としてティアやカインのような子達がどんどん増えていくわけですね……想像以上に酷いです」


「確かに酷い。なんとかしてやりたい気持ちは私も同じだ。だが、実際問題ハミルトン家としてはこの件について動けることが殆どないのが現状だ」


「はい、ハミルトン家の役目は辺境伯として隣国との紛争に備えることであって、孤児院の件とは全く無関係だと私も思います」


「リファ君もそれはわかってるわけだ。じゃあ……どう動くつもり?」


「……まずは孤児院の現状を把握したいので視察しようと思います。その上でできることなら国王に相談をと考えています」


「ふむ、結構現実的な線から入ってきたね……もしかして、リファ君、気づいてる?」


「何となくですけど、私に天神教からの勧誘とかが来てるのかなとは思っていました。そしてハミルトン家の方でそれとなく処理してくれてるのかと」


「うまく隠してるつもりだったけどバレてたのか。確かに天神教の大聖堂や教会から見学に来ないかって話はしょっちゅうきてるんだ。特に君が『天神の巫女』になった頃からは急増してる」


「天神の巫女と天神教は何の関係も無いのだが、奴らはその二つを結びつけることで天神教の権力強化を目指してるんだろう」


「本当はあまりやりたくはないんですが、今回はその誘いに乗る形で孤児院の視察を申し出る形でお願いしたいんです」


「ふむ……あのうさん臭いフェリクス枢機卿がいる大聖堂は危険すぎるけど孤児院の視察位ならそこまで問題はないかもしれないね。じゃあその方向で打診してみるから数日貰えるかな」


「はい、お手数かけて申し訳ありません」


「勿論私もその時は護衛として付いて行こう」


「ありがとうございます。クラヴィス様が一緒なら頼もしいです」


「私も行く」


「ミリュー、あまり行きたくない所なら無理しなくても……」


「だいじょうぶ。むしろ私がその子達を助けたい」


「……わかった、一緒に行こうね。でも絶対無理だけはしないこと。約束だからね」


「ん」


 もう一度暖かいミリューをギュッと抱きしめると私の中の不安も少し和らいだ気がした。まずは孤児院の現状把握から開始だね。

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