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第三十六話 帰還


 その後僕はクラヴィスに抱き抱えられて(なぜかミリューが膨れていた)ゲゼル家別邸を後にし、誰一人欠けることなくハミルトン家へと帰宅することができた。どうやらゲイマルクとシドは取り逃がしてしまったらしい。最優先は僕の安全と保護らしいのでそれ程気にはしていないようだけど。


 ハミルトン家についてからがまた大変だった。具体的にはミュリエラとなぜかそこにいたソフィーに抱き付かれ、暫く離して貰えなかったのだ。僕が誘拐された経緯にソフィーは責任を感じていたらしく、この家で待機していたそうだ。ようやく二人をなだめて解放して貰えたと思ったら今度はハワードやヴァイドからの『何を聞かれた』とか『何をされた』とかの質問攻め。更にその後はお風呂に放り込まれて隅々までナタリーに身体検査された……何もされてないって言ったのに。一応その後ナタリーのお墨付きを頂いたので一安心。と思ったらお風呂にミリューが乱入してきてまたびっくりさせられた。

 勿論洗いっこしましたよ、ええ、折角同性になったわけですし。男の時は洗いっことかありえない感じだったけど女の子同士だとこれは楽しいものだとよく分かった。また機会があれば一緒に入りたいな。




「今回の件、皆さんには本当に御迷惑をおかけしました。申し訳ありません」


 とはいえ、さすがに申し訳なさすぎたのでお風呂から上がって一息ついた後、皆さんに集まって貰い、深々と謝罪する。


「いや、リファ君には何の責も無い。むしろこれはハミルトン家の落ち度だ」


「リファ君の護衛を増やそうかという案はあったんだが結果として後手に回ってしまった、すまない」


「何はともあれ無事で良かったよ。貴重な研究対象の君を失ったらと思うとぞっとするし」


 ヴァイドの物言いだけはちょっとだけ納得いかないが気にしたら負けだ。そういう人なんだから。


「そうよぉ、リファちゃんは何も悪くないの。悪いのは狙う奴らと守れなかった人達。この場合反省するのは私達の方なのよ」


「皆さん、ありがとうございます。でも今後はもっと気を付けなきゃいけないと痛感しました。それにあのシドって人に私がBPの製作者だとばれたのと、もしかすると神人のことまで気づかれたかもしれません……」


「自白剤まで使われたんじゃ仕方ないと思うけどね。BPに関してはいずれは暴かれると思ってたからさほど問題は無いよ。ただ神人の件だけは今後更に注意しないといけないだろうね。」


「ああ、もしリファ君が神人だと広まってしまえば間違いなく国や天神教が動くことになる。婚姻なり囲い込むなりして必ずリファ君を取り込もうとするだろう」


「神人はあまりにも希少だからね。その能力が途方もなく有能なだけじゃなく、子供を産ませることで神人としての能力までをも受け継がせることができるかもしれないわけだし」


 今後どんな連中から狙われるか全くわからないのが不安で仕方がない。そもそもグランマミエの王族から所望されたらどうやっても断れないんじゃ……。そのことをハワードに聞いてみると、


「確かに神人だと特定された場合は拒否するのは難しいかもしれん。だがそもそも神人だと確定するにはミトラのヴィジャ盤を用いる以外に方法は無い。逆に言えばそれさえ公の場で受けなければどうとでも言い逃れは可能だ」


「胸の神紋を視認するというのもあるけど、そもそも神人毎に模様は違うらしいしただのタトゥーだと言い張ればそれまでだしね。あとはー、王族に捕まる前に僕ら3人兄弟の内誰かと婚約しちゃうのもありだね」


「ふぐっ!」


「ぐふっ!」


 僕とクラヴィスが同時に噴きかける。「あらまぁ」とかミュリエラがコロコロ笑ってるけど僕はそんな気は全くないから勘弁して欲しい。クラヴィスもそんな理由で婚約させられても迷惑でしょうに。


「いえ、あの私はまだそういう男女の感情というのはよくわからなくて……」


「そ、そうだ。何にせよそういった目的で婚姻関係を結ぶのは好ましくない」


「あらやだ、生粋の貴族の貴方が言うことじゃないわよ。政略結婚は貴族の華なんだから」


「だ、だがリファ君は平民だ。貴族の価値観に合わせる必要は無いだろう」


 皆でああだこうだ言ってるがいい加減僕も頭が痛くなってきた……。お部屋帰りたい。


「カ……リファは誰とも結婚しない。私とずっと一緒に暮らす」


 涙目の僕を見かねたのかミリューが僕を背に庇ってくれる。ほんとに可愛い子だ。ミリューの頭を優しく撫でていると気持ちが少し落ち着いた。


「とりあえず婚約の件は保留とさせて下さい。あとお願いがあるのですが、ミリューを私の侍女又は護衛として雇って頂けないでしょうか。給料は私の分をミリューに移しても構いませんので」


「婚約に関しては本人の気持ちも重要だと私は思っている。今は焦る必要もないだろう。ミリュー君に関しても勿論護衛として雇わせてもらおう。事情をよく知り、かつリファ君を裏切る可能性が殆どない人材であるならこれほどありがたいものはない」


「給料は当然ミリュー君の分も出すから安心してね。ハミルトン家は有能な人にはお金を惜しまない主義だし、そもそもリファ君は本来客人扱いなんだから変に気を使わなくても大丈夫」


「ん、私がリファを守る」


「ありがとう、ミリュー」


「……んっ……」


 感極まってまたミリューを抱きしめてしまう。男だった頃はこんなことはできなかったが今は同性だからできる、なんという幸せ!


 改めて皆さんにお礼を言って、ミリューと一緒に自室に戻る。既にミリューの部屋も用意されているそうだが、今日はお互い離れ難く、一緒に寝たい気分なのだ。その後ミリューとこの数か月に起きた色々なことをお互いに話し合い、話疲れたところで気持ちよく眠りについた。



第一章に当たる部分が終わったので暫くは午後6時に毎日1回更新していく予定です。

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