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第二話 獣人の少女


 少女を見つけて看病を始めてから3日経つがまだ目を覚まさない。翌日に熱を出したが既に今では解熱しており、顔色も悪くない。見るからに痩せていたことと幼いことから体力が極端に落ちていたのだろう。

 さすがに水分だけは摂らせないといけないので体力回復剤(緑ポーション)を吸い飲みで飲ませてはいたが、これ以上意識が戻らないとさすがに体力が持たないかもしれないなと心配しながら腕を取り、脈を確認していたら


「……うう……ん。……誰?」


 と少女が目を開け、ぼんやりとした表情で僕の顔を見つめていた。


 まず感じたのは目を覚ましてくれたことに対する嬉しさだったが、すぐに取って代わったのは(この子可愛い!!撫でたい!!)という激情だった。

 元々猫であろうと犬であろうと狸であろうと見かけたらすぐに駆け寄り撫でまわしたくなるほどの動物好きだ。獣耳の少女なんて好きにならないわけがない。


 とはいえいきなり撫でようものなら嫌われるのは目に見えている。激情をなんとか抑え込むために一度咳払いをし、


「大丈夫?僕は君を保護した薬師でカリスって名前なんだ」


「カ……リス?ゴホッケホッ」


「起きたばかりで口の中が乾いてるみたいだ。とりあえずこの水を飲んで……自分で飲めるかな?」


 体力回復剤(緑ポーション)入りの吸い飲みを少女に差し出してみると、数秒ほど吸い飲みをじっと見つめた後に受け取ってくれた。まず数口ゆっくりと飲み、味に問題ないとわかったのかその後あっという間に飲み干してしまう。


「これ美味しい……お代わり欲しい」


「それは良かった。喉が渇いてるからってのもあるんだろうけどね。ちょっと待ってて」


 その後は二本分の体力回復剤(緑ポーション)を飲ませ、キノコと野草をミルクで煮込んだスープを時間をかけて食べて貰う。三日食べていないところに重い食事を急いで食べると胃の負担が大きいからだ。

 少女はスープがお気に召したらしく、慌ててがっつこうとしたのでそれを抑えるのがむしろ大変だった。

利き手の右腕を骨折して動かせない状態だったので介助して食べさせてあげた。勿論「あーん」して貰い、ゆっくり一口ずつスプーンでだ。うん、可愛い。


「このスープ美味しかった。また食べたい」


 少女は完食した後、満たされたお腹を左手で撫でつつ、上目遣いで僕の顔を見上げてきた。


「気に入ってもらえたなら明日もまた出すよ。少しずつ固形の食べ物も増やしていくからね」


 少女は無口なタイプらしく、要求以外はほとんど話すこともなかったがさすがに名前も知らないと呼びかけるのも苦労するので聞くことにする。


「君の名前聞いてもいいかな?言いたくなければ偽名でもいいんだけど」


 少女は暫く考え込んだ後、聞き取るのが難しいほど小さな声で囁くように答えた。


「……ミリュー……」


「ミリュー……君にピッタリの可愛い名前だね!」


 可愛らしい容姿に全く違和感のない名前を聞いてとても嬉しくなった僕は満面の笑顔でミリューの頭にポンと手を置き、撫でてしまった。自分でもびっくりするほど自然にそうしてしまい、手を払われて嫌われるかと冷や汗をかいたがミリューは大人しくうつむき加減でじっとしていてくれた。

 嫌がってはいないようだがあまりやりすぎるのもまずいので数度撫でたところで手を放し、


「事情はよく分からないし言いたくなければ言わなくてもいい。ある程度怪我が治って動けるようになるまではここにいていいよ」


 とできるだけ優しい声で提案してみた


 少女は黒い目を大きく見開いて僕の顔をじっと見つめた後、そっと目をそらし、


「……お世話になる……」


 とこれまた聞き取るのが難しいほどの小声で答えてくれた



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