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第二十六話 ハミルトン家の独白2


※アーヴィン・ハミルトンの期待


 俺はアーヴィン、ハミルトン家の次男にして領軍第四師団の副団長を務めている。自他ともに認める女好きだ。良い女がいれば声をかける、これは女に対する男としての当然の礼儀だと思っている。俺は付き合った女は多いがトラブルに巻き込まれたことは殆どない。これは常に相手は一人に絞り、円満に別れた上でまた次の相手を探すようにしているからだ。女はこんなにも素晴らしい存在なのにクラヴィス兄上もヴァイドも全然女っ気がないのが信じられん。

 なんてことを常々思っていたが、ある時リファという女が家にやってきた。やたらと見栄えの良い文句なしの美少女だが若干俺のストライク領域よりは幼いのと、なぜか手を出そうという気にならなかったので挨拶程度で済ませていた。すると、クラヴィス兄上がこの女に興味を示し出したらしい。今まで一度たりとも浮いた噂が出なかったあの『鉄壁のクラヴィス』がだ!

 面白そうなのでじっくり観察していると妹感覚で接してるようにも見えたから拍子抜けしていたところであのレジェンディア侵攻が起きた。

 聞いた話によるとリファは治療テントで大勢の負傷者を助けた上に死にかけたクラヴィス兄上の命までも救ったらしい。その現場は光に満ちた神々しいものだったらしく、『天上の癒し手』だとかなんとか領軍の間でも恐ろしい勢いで噂が広まっているようだ。弟としても領軍副団長としてもリファには感謝しかないが、最近当の本人同士の会話が少しぎこちない気がする。

 ようやくあの堅物にも春が来る日が近づいてきたのかもしれない、今後の進展が楽しみだ。


※ヴァイド・ハミルトンの歓喜


 僕はヴァイド、ハミルトン家の三男にして魔導士だ。最近リファ君が色々な意味で台風の目になっている。こうなることは予想済みではあったけど実際にそうなってみるとこれはこれで大変だ。元々彼女はミュートリノ市に注文していた魔道具を受け取りに行った帰りに偶然見つけた『男性』だ。経緯は本人にもよくわからないらしいが誰かに襲われ、瀕死の状態になっており駄目元で一応聞いてみると転変の禁術を受け入れると即答してきた。目にはしっかりとした意志の力を感じられたので見込みありと判断し禁術を施行したところ、見事に試練を乗り越え人型どころか女性の≪神人≫として転変を果たしてしまったのだ。


 その後リファ君が間違いなく神人としての能力を持っていると確認できたのでハミルトン家に住んでもらい、僕の研究に協力して貰うことなった。やや強引だった気もしなくもないが僕は彼女にとっての恩人だから問題ないだろう。隣にいたクラヴィス兄上に睨まれていた気もするが気のせいに違いない。


 実際彼女の能力は素晴らしいの一言だった。通常のポーションよりも一段階強力なポーションであるBPを大量に作成可能であり、他者に身体強化(フィジカライズ)を施すことのできる天神の加護まで持ち合わせている。いずれも使いようによっては軍事バランスをひっくり返しかねないほどのバランスブレイカーだ。

 今のところはBPの効果に変化はないが、BPが通常のポーションに戻ってしまうまでの期間は3週間に伸びている。そして天神の加護による身体強化(フィジカライズ)も倍率自体は変化していないが、持続時間は自己に対しては30分、他者に対しては24分とまだ伸び続けている。


 そして今回のレジェンディア侵攻での彼女の働きはあまりにも大きかった、いやむしろ大きすぎたと言ってもいい。多数の負傷者を救った上に師団長であるクラヴィス兄上の命まで救うというその働きは自国のみならず他国にまで広まってしまうだろう。そしてBPの異常性は勿論、下手をすると≪神人≫という極秘情報にまで目を付けられる可能性もある。今後は彼女の護衛と情報管理に一層留意していく必要がありそうだ。

 

 正直彼女がここまで僕を楽しませてくれるとは思いもしなかった。あまりの嬉しさに僕までも戦場に赴き、今まで溜め込んだ攻性魔術を仕込んだ魔道具を敵軍に大盤振る舞いしてしまったのだ。実戦で用いるのは初めてだったが予想以上の成果が得られ、やはり実戦での使用程参考になるものはないと再確認した次第だ。魔道具自体が高価なのでかなりの散財になってしまったが後悔はしていない。

 

 さてさて、リファ君が次になにをやらかしてくれるのか、それが怖くもあり、同時に楽しみでならない。




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