第二十一話 強化訓練の結果とソフィー
グラム強化訓練は順調に進み、今のところは特に大怪我を負うこともなくたまに軽傷を受ける程度で済んでいる。そして僕の護身術も最終段階に入り、最後に受け身の練習を受けることになった。近接戦では地面に叩きつけられることもあるのでうまく衝撃を吸収し、怪我を負わないようにするためだ。
まず自分に身体強化をかけた状態で投げて貰い、手足の裏で地面を叩き背中への衝撃を和らげることになる。早速三人に順番に投げて貰い受け身の練習をしていくことにしたが、
ダンッ!!「……んぅっ!……」
ダンッ!!「……ふぅっん!……」
ダンッ!!「……んっくぅっ!……」
受け身を取る時に時々衝撃を吸収しきれず変な声が漏れてしまい、その度に三人が顔を赤くして挙動不審になってしまい、なぜか少し時間を置かなければいけなくなった。そんな感じで予定外のトラブルもあったが、なんとか全ての護身術の指導が終わり、その後もグラム強化訓練の補助のため訓練施設に通っていた。
そしてある日いつものように馬車で訓練施設に向かい、執務室に入ったところで
「リファさん、おはようございます!僕やりました!リファさんのおかげです!!」
グラムが駆け寄ってきて僕の手を両手で拝むように掴んできた。
どうやら先日の演習でグラムが大活躍し、指導教官からべた褒めされたそうだ。更にアーサー、ルイスも明らかに以前よりも対応力が上がっておりこの短期間で三人に何があったのかと話題になっているらしい。
予想以上の結果に僕も嬉しい気持ちでいっぱいになったが、
「私はただ提案しただけです。成果が得られたのは皆さんの努力があってのことですよ」
「そんなことはありません!リファさんは僕の恩人です!」
「恩人はいいからとりあえず手離せ」と掴んだままの手をルイスが取り払う
「どさくさ紛れに女性の手を握ろうとか騎士の風上にも置けませんね」とアーサーがジロリとグラムを睨み、溜息をつく。
「何はともあれ、リファさんの提案のおかげで僕ら全員が力を伸ばすことができました。ありがとうございます」
「やっぱりいつ矢で狙われるかわからないっつう緊張感がいいんだろうな。目の前の相手以外にもちゃんと注意を払えるようになったのが大きいと思う。ほんとありがたいよ」
「ぼ、僕からも改めて、ありがとうございました」
「いえ、私も皆さんに護身術の指導をして頂いたのでお互い様ですよ。お役に立てたなら何よりです」
こうして領軍の訓練施設へ通う日々も終わりを告げ、今後はまたハミルトン家でBP作りに励むこととなる。後で聞いた話だが、クラヴィスが今回の訓練法を元に新しい訓練カリキュラムを作り領軍全体の底上げを進めているそうだ。
あと領軍の訓練施設には担当薬師が数人いてその人達ともBPの納品のついでに色々と話をしたが、その中でもソフィーという少女と特に仲良くなった。
ソフィーは20歳のストレートで赤く長い髪に蒼い瞳を持ち、そばかすが少し目立つ純朴な印象の女性だ。薬師としての腕は確かで知識量も多く、やや自信に欠ける所はあるが話もしやすいので今後も手紙でやり取りしようという話になった。ただ、僕がBPの製作者であることは薬師達にも伝えていないのでボロが出ないように気を付けないといけない。
「折角仲良くなれたのにリファさんに会えなくなるのは寂しいです」
「またポーションを納品する際に会いに来ますよ。その時はまた一緒にお茶しましょう」
「約束ですよ!絶対ですからね!!」と詰め寄るソフィーに首肯し、別れを告げて訓練施設を後にした。




