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第十九話 騎士達と護身術


 今日は護身術を学びに領軍の訓練施設(グランチェスタ)に行く日だ。朝食後に身支度を整え、動きやすさを重視した服に着替える。髪もそのままでは邪魔になるのでポニーテールにして貰った。


「リファ様、お怪我なさらないようにくれぐれも御注意下さい」とナタリーに見送られ、クラヴィス、レイナと一緒に馬車で出発した。レイナが初めて行く所ということではしゃいでいたが、僕も同様にわくわくが止まらなかった。僕自身子供の頃は騎士に憧れたこともあったし男としての感性がまだ残っているのかもしれない。


 訓練施設(グランチェスタ)は3階建てになっていて敷地面積が非常に広く、演習場のグラウンドも含めるとハミルトン家の御屋敷が10個程すっぽり入ってしまうそうだ。グラウンドで走り込みや模擬戦闘を行う騎士達を横目に見ながら第二師団の執務室へと案内される。そこには立派な机とテーブルがあり、テーブルを挟んでソファが二つ置かれていた。そしてソファに3人の騎士が座っていたがクラヴィスが部屋に入った途端勢いよく立ち上がり、


「「「おはようございます!本日も御指導のほど宜しくお願いいたします!!」」」とピッタリ同じタイミングで叫んできた。


「ああ、おはよう。昨日決まったことだから急で申し訳ないが、君達にはこれからこの子に護身術を指導して貰うことになる」


 すると騎士全員がグルンと首を回して僕の方を見たあと、そのまま硬直してしまったので不思議に思いながらも「リファと申します。御指導宜しくお願いします」とお辞儀をして顔を上げると、皆何か妙に挙動不審になっていた。それを見かねたクラヴィスが「お前たち、呆けてないで一人ずつリファ君に自己紹介しなさい」と苦笑しながら言うと、3人はそれぞれ咳払いをして背筋を伸ばし、


「私はアーサー・ハウエルです。年齢は18歳で階級は少尉、得意な武器は片手剣です」

 

 と最初にボブヘアの金髪に蒼い瞳で綺麗な顔立ちの騎士様が、


「俺はルイス・グラントです。年齢は19歳で階級は少尉、得意な武器は槍です」


  と次に長い栗色の髪に碧色の瞳で野性的な顔立ちの騎士様が、


「僕はグラムです。年齢は18歳で階級は少尉、得意な武器は弓です」


  と最後にふわふわとした癖っ毛の黒髪に茶色の瞳で女性的な顔立ちの騎士様が自己紹介してくれた。


「リファ君はハミルトン家にとって非常に重要な意味を持つ客人だ。彼女が訓練施設(グランチェスタ)にいる時は騎士の誇りにかけて彼女を護ってほしい」などとクラヴィスが言ってしまったので慌てて自分が平民であること、過度に敬意を払わないで欲しいことを伝えたが騎士様達の反応を見る限り伝わっているかどうかは疑問である。


「リファ君は身体強化(フィジカライズ)を行えるが、基本的な筋力は普通の女性と変わらない。君たちには一般の女性が最低限身を護るために身につける範囲の護身術を彼女に伝授して欲しい」


「「「わかりました!騎士の誇りにかけて!!」」」と嬉しそうに彼らは答えていたが、こちらはますます不安になった……護身術を教えるのに誇りをかける必要は無いと思う。顔が引きつりそうになったけどここは昨日レイナに教わった≪困ったらとりあえず笑顔作戦≫でいくことにしよう。練習通り小首を傾げながらニッコリしたのだけど、また3人が固まって動かなくなった。何か失敗したのだろうか。


※※※※


 その後屋内にある演習場へと向かい、早速3人の剣、槍、弓における基本動作を見せてもらう。僕自身がそういった武器を使うわけではないけれど、それらの武器を扱う相手と対峙した際に基本的な動きを知っているかどうかで随分と対応力が変わってくるらしい。なるほどと思いながら、3人の演武をじっくりと見させて貰った。「皆さん動きが凄く綺麗で見ているだけで楽しかったです」と素直な感想を述べるとまた3人が挙動不審になった。溜息をついたクラヴィスが柏手を打つとまた元に戻ったが、一体何なんだろう。


演武を見学した後は実際に腕や首を掴まれたり地面に抑え込まれた際にどうやって抜け出すのか、反撃するのかを実技を交えながら教えてもらった。さすがに初日でマスターするのは無理なので数日かけて身に着けていくことになり、食堂で昼食を食べた後に御礼を言って帰宅することにした。


「皆さん訓練でお忙しいのにお時間を取らせて申し訳ありません。なるべく早く指導が終えられるように頑張りますので宜しくお願いします」


「とんでもありません!指導が終わってもまたいつでもいらして下さい」


 気遣ってアーサーがそう言ってくれたがさすがに用もないのに来るわけにもいかないとは思いつつ、ニッコリ笑顔で答えておいた。


帰りの馬車の中でレイナに騎士達が時折挙動不審になったことについて聞いてみると、


「あー……あの人達は普段女っ気の無い生活を送ってるでしょうしねぇ。そこにリファ様みたいな子がニコニコしながら接してきたから破壊力がありすぎたんでしょう。慣れていけばましになるでしょうからリファ様もなるべく突っ込まないようにしてあげてくださいね。彼らの名誉のためにも……」


 破壊力?がなんなのかわからないけど慣れれば大丈夫らしい。最後のあたりが小声でよく聞こえなかったけど多分重要なことではないのだろう。私とレイナの話に聞き耳を立てていたクラヴィスが珍しく口許に手を当てて肩を震わながら笑っていたのが印象的だった。


 




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