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第十六話 辺境伯と一人称


 僕がお世話になっているハミルトン家は物凄く豪勢な、お城のような屋敷だと先日庭の温室に案内された時に初めて気が付いた。聞いたところによるとハワードは辺境伯であり、この辺境伯というのは国境付近の軍事地区の指揮官として設けられる役職らしい。他国と接しているため一般の伯爵よりも遙かに広大な領地と大きな権限が与えられているとのことだ。

 ハミルトン領はいつ隣のレジェンディア王国と諍いになるかわからないため、5千もの領軍を所有している。領軍は五つの師団に分かれており、クラヴィスは第二師団長だそうだ。有事の際には当主であるハワードが領軍を率いて出陣することになる。ちなみにハワードは騎士、ヴァイドは魔導士(魔術を扱うが基本的に研究職であり戦闘には参加しない)である。


 グランマミエ王国とレジェンディア王国は現在休戦状態となってはいるものの、なんだかんだと言い掛かりをつけてはハミルトン領に侵攻をしかけてくるらしい。頻度としては2か月に1回位らしく毎回きちんと撃退してはいるが、さすがに無傷というわけにもいかず死傷者もそれなりに出てしまう。

 そこで色々と相談した上で、僕の当面の仕事は身を削って国防にあたる領軍の被害を減らすために各種ポーションを供給することとなった。ポーションは万年不足気味な上に神力を籠めたポーションは効果が高いため非常に重宝される。更に神力は魔力と同じように使用すればするほど少しずつ量も質も向上していくとされているので、僕自身の修行にもガッチリ噛み合っているというわけだ。というわけで、この1か月はポーション作製と天神の加護の使用を繰り返す毎日となっていた。


「ナタリーさん、各種ポーション100本ずつ完成しました!」


「はい、確かに受け取りました。ですがリファ様、最近頑張りすぎではありませんか?」


「うーん、最初は確かに加減もわからなくてぶっ倒れたりしちゃいましたけど、今はさすがにここまでやったら倒れるな、というギリギリのラインが分かってきたのでもう大丈夫です!」


「いえ、その『ギリギリのライン』まで踏み込むのを頑張りすぎと言わずして何というのでしょうか……」


「ナタリー、いい加減学んだ方が良いよ。リファ君は僕らが思っていた以上に真面目でかつ自分を追い込んでしまうタイプだ。そして集中している時は、基本的に人の話を聞かない」


「話を聞かないなんて、そんなことは……」


「ヴァイド様の仰る通りですね……真面目なのは美徳ではありますが、何事にも限度というものがあります。まさかもう一人ヴァイド様のような方をお世話することになるとは思いもしませんでした」


ジロッと横目でナタリーがヴァイドを睨むと「うわ、藪蛇!」と矛先が自分に向いたのを理解し、苦笑いしながら去っていった。マッドなヴァイドのことだ、小さい頃から無茶をし続けてきたのは想像に難くない。反面教師として僕も注意することにしよう。


「そもそもリファ様は神力よりもまず女性らしさを身に着けることの方を優先して頂きたいのですが。具体的には一人称の『僕』を最優先で直してください」


「うぅ……ど、努力はしてるんですけど、やはり長年男として生きてきて突然女の子らしくしろと言われても……『私』とか恥ずかしくて言えないし……」


「ええ、ですから最初は大目に見ておりました。ですがもうリファ様がお屋敷にいらして一カ月が経とうとしています。もはや突然ではありません。そろそろ努力の成果を見せて頂きたく存じます」


「き、今日はいつになくグイグイきますねナタリーさん……わかりました。ぼ……私も明日から女の子らしい振る舞いをしっかり意識していこうと思います!」と前向きな意思表明をしたのだけど、「いえ、今からです」と鬼のようなお顔のナタリーに迫られ、僕にできたのは首肯することだけだった……



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