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プロローグ



 僕の名はカリス。37歳、寂しい独り身ながら薬師としてはそこそこ優秀(なつもり)であり、数年前に薬屋を開業しこれから一流の薬師を目指す……はずだった……。


 でも先程姿見に映っていた自分?はどこからどう見ても十代後半位の少女で……


「それじゃ、君はこれから暫くの間僕の研究対象(モルモット)になってもらうね!!」


 テーブルを挟んで反対側に座っている胡散臭い男がそれはもう、本当に嬉しそうに止めを刺してきた。



_________ ……何がどうしてこうなった…… ___________




 フォンタエ大陸有数の大国の一つであるグランマミエ王国、その東方辺境にミュートリノ市が在る。

人口8000人程度の中小都市であるが気候も温暖で、隣国と近いこともあり交易都市として賑わっていた。

 ミュートリノ市には中央を横断する大通りがあり、服飾、宝石、家具、食材など様々な種類の店が並んでおり、その中に僕の店、カリス薬局がある。

 数年前にようやく開業にこぎつけた念願の薬局ではあるが、従業員が僕一人ということもあり、住宅兼用のこじんまりとした二階建ての建物になっている。


 父親は僕が小さい頃に戦争で、母親は僕が18歳の時に病気で亡くなり天涯孤独になってしまったわけだが、親の残してくれたお金をなんとかやりくりして王都唯一の学院であるポラリス学院、その薬学科に入学することができた。


 正直周りの学生は皆優秀でついていくのがやっとであったが、元々そこそこ真面目な性分が幸いしたのか無事卒業した後は様々な師に従事し、色々な地で修業を積むことでようやく数年前に薬師として独立、開業に至ったというわけだ。


 薬師と言ってもただ薬を処方し販売する、それだけが仕事なわけではない。

 王都のようなありとあらゆる職の人間が揃っている所ならいざ知らず、人口の少ない市では薬師が医師の仕事も兼任することが多く(法的には限りなくグレーではあるが)、軽傷や単純骨折などの治療を行うことも珍しくはなかった。


 研修で初めて出血を目の当たりにした際には貧血を起こし具合が悪くなったこともあったが、今ではさほど気にすることもなく処置ができるようになっていた。

 そして僕は幸いにして薬の調合に関しては才能があったらしく、他の薬師と比べて効果が高めの薬を調合し、時には負傷者にその場で投薬して治療することにも強いやり甲斐を覚えていた。


「お待たせしました。こちらに入ってるのがが咳止めと解熱剤でこちらの袋が胃薬になります。解熱剤は必ず胃薬と一緒に飲んでくださいね」


「いつもありがとうね。先生の薬はよく効くからほんと助かってるよ」


「お役に立ててるならなによりです。風邪が長引くようならまた来てくださいね!」


 最後のお客さんが手を振りながら店を出ていくのを見届けて今日の仕事は終了。軽めの夕食を摂った後に新しい傷薬の調合を試そうと乳鉢でゴリゴリと薬草を潰していた時に、


ドォン!!


と建物全体が一瞬揺れたように感じるほどの爆音が耳に飛び込んできた。



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