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5 空からの招待客

アルカです。やっと5話目です……メンタルが大変なことになってたので、それどころじゃなかったって言うのが言い訳です。


これで出てきていない子が律華だけになりました。この子にもモデルがいて、当時私の片想いの子でした。その特徴を幾つか取り入れたキャラです。次回出ます←重要


それから、次回から予告に出ている子だけを出します。あまり多いと書く手間がね……許してや

ではどーぞー

翌日の朝、俺はこの休日を利用して、館内を見て回る事にした。エントランスから左は様々な部屋毎に機械や道具で埋まっていた。そこでは、閣琴がガラクタを弄っていたり、甲天が医療器具のチェックを行っていた。エントランスに戻り、扉を背に正面は庭へと続いている。出ると、一面の自然の中で琉瑠歌や中麟達がはしゃいでいるのが見えた。


その横──枯山水の美しい縁側のそばでは、グーテが剣の修行を、巳和子さんはそれをサポートしていた。グーテはどうやら太刀の二刀流のようだが、その太刀筋は9歳とは思えない程身軽で洗練されており、まるで舞っているようだ。巳和子さんも

「ううむ、どうやら儂はお主を甘く見ておったようじゃのぅ」

と感嘆の声を上げている。


気付くと、俺は無意識の内に拍手をしていた。気付いたグーテが照れ笑いしている。

「そった、拍手なんて…オラなんてまだまだ未熟だよ」

「そんな事ないよ。頑張らないと、そんなに上達しないからね」

「左様。日頃の鍛練の成果じゃ、もっと誇るがいいぞ」

薄青の肌が上気している。それを隠すために俯いたが、それでも分かるくらい嬉しそうだった。と、次の瞬間、後ろから琉瑠歌の大声が三人の耳を貫いた。

「ねえねえ!何か変な模様があるよ!」

変な模様?琉瑠歌の事だから、どうせロクでもないモノを見つけたのだろう。俺達は琉瑠歌の方へ急いだ。


その変な模様は割と近くにあった。そばには、声を聞きつけ先に到着していた閣琴や虎乃がいた。

「何や、ただのミステリーサークルやんか」

「もぐもぐ…ミステリーサークル?」

「怪人が付けていった痕跡って言われとる、魔方陣っぽい円やな。まあ、ほとんどは人が作ったモンなんやけど、これは人為的やないな」

「もぐもぐ…じゃあ本当に怪人の仕業なの?」

「せやけど…アンタ、それウチのお饅頭やないか!食べんといてや!」

「えっ、これ閣琴ちゃんのだったの?」

「ウチのやって、メモ置いてたやん!」

「知らないよ!」

どうやら喧嘩が始まってしまったようだ。


と呆れたのも束の間、突然巨大な影が俺達を覆った。上を見上げると、明らかにUFOが遥か上空を漂っていたし、挙動も不審だった。誰もが唖然とする中、UFOはゆっくりと着陸した。すると、出入口と思われる箇所が開くと同時に、誰かがUFOの上から飛び出してきた。それは目の前に着地したが、姿を見てすぐ分かった。小麦色の肌に水色の三つ編み。琉瑠歌が天辺から飛び降りたのだ。少なくとも50メートルはある高さからの跳躍は、最早自殺行為だが…彼女の体躯はどうなっているのだろう?と言うか、琉瑠歌はUFOからサークルを見つけたのか。どういう跳躍力をしているのだろう?


そう考えていると、誰かが俺の袖を引っ張っているのを感じた。見下ろすと、見知らぬ少女と見覚えのある少年が俺の服の裾を掴んでいる。少年の方は、顔を見てすぐ分かった。この子は俺の弟──星汰だ。だが、目の色に違和感を感じる。元々は黒だったが、淡い緑色に変わっている。その奥では星が瞬いていた。隣の少女の目にも星があった。だが、そっちはと言うと…スゴい睨んでいた、ほっぺまで膨らませて。

「二人とも、どうしたの?」

気になり両手でそれぞれ頭を撫でると、やはり反応が違った。星汰は懐かしむように、ただ撫でられているが、少女は

「触れるな、無礼者!」

と、ソッコー払われた。顔しか見てなかったので、全く理由が分からなかった。改めて全体を見てみる。


星汰はお気に入りの、星がプリントされた服を着ているが、少女は桃色のドレスを着ていた。頭には呂布のような飾りまで乗っている。手にはシルクの手袋を嵌め、可愛らしい靴も履いている。正に「童話のお姫様」だった。だが、短い前髪の奥から、もう一つの目が俺を見つめていた。やはりこの子も人外だったようだ。その後も「余を気安く撫でるな」だの、「余を皇女(おうじょ)と知っての狼藉か!」だの言われたが、その時は苦笑で返すしかなかった。


ふと視線を琉瑠歌に向けると、琉瑠歌は巳和子さん達と共に、誰かと話をしていた。珍しく巳和子さんの顔が厳しくなっていた。余程真剣な話をしているのだろう。少し遠かったので、話は聞けなかったが、もし相手が宇宙から来た怪人ならば、侵略云々の話だろうか?だが、少しすると、巳和子の豪快な笑い声が聞こえた。どうやら、俺の想像は大ハズレだったようだ。話のケリが着いたか、誰かが俺達を手招きした。俺達は、まるで引き寄せられるようにその誰かに向かい歩を進めた。


その誰かは、どこか桃色ドレスの少女と似た気品に溢れた雰囲気があった。身長は俺くらいあるだろうか。高価そうな紫色のドレスを着ていた。しかし虎乃程ではないがムッチリしていた。紫色の艶やかな長い髪を靡かせるこの人にも額に何かがあった。近付いてくるにつれハッキリした。第三の目ではなく、美しい赤色の宝石だった。優しい微笑みの上で太陽に照らされ輝いている。それは、贅沢な光を放っていたが、どこか悲しい闇も生み出していた。


そうこう考えている内に彼女のそばまでやって来た。その途端、紫色の女性に抱き締められた。柔らかい体と体温が全身を伝って、漸く置かれた状況に気付き、慌てて押し退けた。桃色の少女は

「貴様、姉上に何をする!」

と叫んで俺の足を叩き始めたが

「ダメよ、ナディアちゃん。今のは急に抱き締めたお姉ちゃんも悪いんだから、ね?」

と優しく制止した。ナディアは納得がいかないのか、ムッとした顔のまま少し離れて睨んでいた。

「ごめんなさい。ナディアちゃんは、本当は民思いのいい子なんだけど、少し人見知りなの。許してあげて?」


違和感を感じた。優しく話しかけている筈なのに、気が付くと、蛇に睨まれた蛙のようにその場に膝まずいていた。紫色の女性は急に膝まずいた俺を凝視していたが、巳和子さんは笑っていた。

「そやつは人の形をしておるが、本来は蜘蛛なのじゃよ。そこの小娘も、真実の姿は蛇なのじゃ。いや、参った参った!上手く魔物の匂いを消しておった故、言われるまで気付かなんだわい」

「この人らは西洋で言う、女郎蜘蛛(アラクネ)蛇女(ラミア)やな。少なくとも、この人らはウチらに危害を加える気はあらへんってさ」


それで俺が安心するとでも思っていたのか?そう言おうと顔を上げると、紫色の女性が俺の目の前に座り込んでいた。どうやら顔色を伺っているようで、急に膝まずいたからか心配そうだった。しかし、少しすると微笑んで

「ソフィア・サイコグラムよ。あの子はお姉ちゃんの妹、ナディアちゃん。怖がらせる気は無かったの。大丈夫?」

すると、先程の脱力感は何処へやら、体に力が戻り、すぐに立ち上がれた。

「さっきは、あなたから[抵抗力]を集めたの。だから、急に立てなくなったり、言葉も返せなかったわけ。お姉ちゃんは戦うのは嫌いだから、こうやってるのよ」

ソフィアさんは()()()()()()()()のか。しかし、そうなるとナディアの能力は引き離す力だろうか?そう考えた瞬間、星汰が思いもよらない発言をした。


「違うよ、結兄。ナディアちゃんは、惑星の力を借りれるんだって。例えば火星なら火とか、冥王星なら人の生死も思うままなんだよ。ナディアちゃん、やってみて」

星汰は俺の考えを読んだのだろう。でなければ、何も言っていないのに「違う」とは言わない筈だ。星汰の発言は、ナディアとソフィアさんを除く全員を驚かせる程だった。それに、惑星の力とやらで、俺達の命も意のままなのか。


それにナディアを見ると、なにやら陽炎が出来ている。それは小さな火種となり、途端に巨大な火の玉となった。

火星の業火(ブレイズマーズ)!」

ナディアがそう叫ぶと、火球は俺目掛けて飛んで来た。俺は死を覚悟して目を閉じたが、身を焦がす熱はやってこない、むしろ暑苦しい空気が俺を包んだ。ふと目を開けると、確かに俺は燃えているが、全く服が焼ける様子はなく、時期的な事もあり、温度の低いサウナ程度だ。それにしても、もう少し被験者を労ってほしいものである。


騒動はほんの数分で終わり、俺と巳和子さん、閣琴と要人は彼女達の事を巳和子さんの部屋で詳しく聞くことになった。

「して、何故地球を……ここを選んだんじゃ?」

「諜報部隊が、ここが一番友好的だと言うのでな。それを信じて降り立ったのだ」

「ふむ。他の諜報結果を聞かせてはくれんかの?」

「他惑星はそれぞれと敵対しあっているわ。水星は火星と、金星は土星と……天、海、冥は三すくみに敵対している。地球は論点の外で、全く情報がなかったの。」

「そこで、余が諜報部隊を地球に送り、和平を結べそうかを調べさせたのだ。すると、最も争いが少なく、かつ平和が十年以上続いている博多エリアが見つかった訳だな」


「なるほど。そして長である儂に、直々に皇女様が会いに来た、と?」

「ええ。民は、戦に囲まれ、恐れている。巳和子さん、貴女の部隊は、自由と平和の為に戦うと聞いてるけれど」

「せや。ウチらからは決して攻撃しない。それに、ウチらは間抜けな戦争屋やあらへん」

「おい、ピンクのガキ……何が望みだ、それを先に言え」

「あ、すまない……我らと和平を結んでほしいのだ」

ダメだ、全く話について行けない。とりあえず惑星間で戦争が相次いでいる事と、彼女達が俺達と同盟を結びたいという事だけは分かった。


「確かに、尊き民が戦に怯えるのは見てはおれぬ。だが、手を組み自衛をしたとて、その恐怖が終わる事はあるまい?」

「その通りだ。自衛とはいえ、最悪死者も出るだろう。だが、貴様の部隊が戦争の抑止力となれば、自ずと手を引くだろう。そして、戦争に介入し、抑止力となるのだ」

「それこそ……テメェらの嫌いな戦争屋に成り下がるんじゃねェのか?」

「ええ。でも、口で解決するなら、こんな事にはならないわ」

「ならねェからこそ、抑止力となる核がいるんだ。ちったァ頭使え」

「貴様、本気なのか?核を使えば、確かに抑止力となるだろうが、それ以前の問題となるだろう!」

ますます分からない……まず、自ら攻撃しないのはいいとして、確かにだからと言って戦争が終結する訳ではない。それに、要人の言う核はきっと、ナディアやソフィアさん達が思う核とは意味が違う筈だ。それはきっと……


「なら、核兵器となる別の何かを考えればいいんじゃないかな?」

「どういう事や?要は核兵器やなくて、核兵器の代わりになるもんを見つけようって事?」

「ほほう、中々良い提案ではないか!皆、何か候補はあるか?」

「信長公は、各地の武将達を召集する方法をとったそうや。なんでも、それで敵と味方をハッキリさせたんやとさ」

「だが、今の情勢でそんなもんが通じるか?」

「じゃあ、敵味方問わずにご飯を出すのはどうかしら?誰でもお腹は空くし、敵同士で交流も図れるでしょう?」

「いい案じゃが、もし取り合いとなったら、結局元通りにならんか?」


「それなら、皆が何を望んでいるかを頭領同士で聞き合うのは?それをハッキリさせれば、他惑星で貿易なんかも出来ると思うし」

「そして、もしそのラインが途絶えれば、貿易先は大打撃を受ける。地球で言う、制裁などに当たるものか」

「そういう事。例えば、君達の星……木星では何が足りない?」

「そうね。私達の国[ギャラクシア]も含め、全地域で全て安定はしているけど、やっぱり紡績かしら?」

「その貿易ラインを切られたら?」

「衣服不足で、最悪疫病になる……皆がそうなるのは嫌よ」

「でしょ?だから、その惑星でたくさん採れたりするものを、他惑星に物々交換の要領で渡っていけば、皆その地域を攻撃しなくなる筈」


「だが、そこの奴等が拉致られたら?それに、中身に毒とか仕込んだっていいし、見つけたら奪ってもいいわけだろ?」

「あ……」

確かに、戦争だと言うのに貿易なんてやっていられないか。困った、どうすれば戦争を止められるのだろう?

「まあ、頭同士が話し合うのは悪くねェな。それでもロクな条件出さねェだろうけどな」

「うむ…それが一番いいだろうな。貴様……結と言ったか?庶民(シヴィ)にしては随分頭が回るな。褒めてやろう」

「あ、ありがとう……それで解決するといいんだけれど」

「いや……戦は、各々の愚かな正義の対立がもたらすもの。各々の正義を伝えんからそうなる。しっかり面と向き合い話せば、分かり合えるものじゃ。儂の時もそうじゃった」

「以前にも、そういう事があったの?」

「うむ。3年前の大戦にな……新人類と数多の戦で血を流した。だが最後は言葉を交わし、和平を結び……八月十五日、終戦を迎えたのじゃ」


そんな過去があったのか。確かにカレンダーを見たら、その位置に「終戦記念日」と書かれ、祝日となっていた。まさかこの人が新旧大戦(オオマワリ)を終戦に導いた人だったとは……すると巳和子さんが急に立ち上がり

「この会談、儂も出向こう。見事こなせた暁には、ここ泰叶郭(たいようかく)を好きに使うてくれて構わぬ。望むならば、住まわせてやるぞ。ただし、お主らの軍を管轄下に置かせてもらえぬか?」

とだけ言うと、すぐに支度を始めた。それに俺たち全員が戸惑いを隠せなかった。

「それは実に嬉しいのだが、何故我が軍を?」

「指揮官はナディアじゃろう?あの者等も、可愛い指揮官(おひめさま)がおらんでは、到底動けんじゃろう?勿論、儂等も要請があれば赴こう」

おいおい、そんなトンでもない誓約しちゃっていいのか?それに準備が整うの速いな!

「!……なんて頼もしい。ナディアちゃん、ここに来たのは正解だったようね!」

「うむ!早速会談を始めよう、姉上は惑星間通話装置(プラネットコール)で全惑星のリーダーに要請をしてくれ、後は現皇女の余に任せよ」

君達もノリノリにならないで!俺が全くついて行けてないから!

「オレは……行ったら終わりだな。大人しく待っているか」

要人はついて行くか行かないか以前に、銀河全域の指名手配だろうが!

「いざ行かん、宇宙の和平を取り戻すが為!」

心の中でツッコミを入れている内に、巳和子さん達は部屋を出て行ってしまった。要人とオレはため息を一つすると、二人で過ごしたいと要人が言い出した為、オレの部屋に向かった

結「なあ、要人。あの人達大丈夫かな?」

要「大丈夫だろ。少なくともあの婆さんは馬鹿じゃねェ」

ユ「要人、君にお客さんだ」

虎「ずっと探してたんだって」

要「て、テメェ……」

虎「次回、[喪われた再会]」

律「もしかして……要人クン?」

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