束の間の休息を
語彙力が欲しい。切実な願い。
自分で書いてて
「あれ?この設定ってどうなってるっけ?」
ってなってるので矛盾があるかもです。すいません。
誤字もしてれば脱字もしてます。確認はしてるんですけど、見逃しちゃうのでその辺はスルーしていただけると…。
Twitterもやり始めたのでよろしければ。
「はる」という名前になっています。
https://twitter.com/haruhuziyuki
~月綾視点~
腰辺りに手をぐるりと回し、離れないように強い力で抱き着いてくる美花を、引っ付けたまま料理の準備をする。美花は何をしても全く離れる気配を出さなかったので、諦めて今の状況に至るわけだ。
「美花、わたし包丁を使うから少しだけ放してくれないかな?」
「やだ。」
今から野菜などを切るので美花に離れるように諭したが、即答で断られる。わたしはふぅ、と息を放った。仕方ない、そう思いその状態のまま包丁を握った。
「今日は何作るの?」
「んー…。陽さんが仲間になってくれたことだし、ハンバーグでも作ろうかなって。」
「ほんと!!」
陽、という単語を出したときはものすごい形相をしたが、ハンバーグという単語に反応した美花は、わたしと同じオッドアイの瞳を輝かせた。そして、抱き着く力を強くした。そんな愛しい双子の片割れの姿を見て頭を撫でる。そうすれば、その瞳をゆっくりと細めた。
「えへへ。綾、大好きっ!ハンバーグすきっ!」
尻尾を揺らす幻覚が見えるほど喜んだ彼女は、わたしから離れ2階にあるリビングに来ていた蒼翠ちゃんたちのもとに走っていく。その姿を見届けた後、包丁を握り慣れた手つきで調理に取り掛かった。
***
「みんなー、そろそろ夕食できるよー!」
リビングに居るみんなに声を掛ければ、「はーい。」という声が返ってくる。わたしは1階に案内されていた陽さんにも聞こえるよう、部屋の外から声を掛けるが、返事がない。
「綾、どうしたの?」
「あ、いや、陽さんから返事がないなって…。」
美花がまたぎゅうっと抱き着きながら、首を傾げる。しかし、陽、という単語を聞いた途端、表情が一変し
「あんなやつ、放っておいて平気だよ!」
と、頬を膨らませた。そんな美花の頭を軽くたたく人物が、わたしたちに影を被せた。
「こーら。ご飯はみんなで食べるものよ?そんなこと言っちゃダメでしょ?」
その影の主は紛れもなく先程、美花を叱りつけた蒼翠ちゃんだった。美花は先程の説教がまだ響いているのか、肩を少し震わせながら
「ご、ごめんなさい…。」
と言って、わたし達から離れテーブルにそそくさと逃げていった。
「ふふ、別に怒ってないのに…。ま、それはさて置き。月綾、悪いんだけど陽を呼んできてくれる?この家のルールに慣れてもらわなきゃだし、ね?」
美花の後ろ姿を見ていたずらに微笑んだ蒼翠ちゃんはわたしに向き合い、わたしの想いを透かしているような瞳を向けて言った。
わたしは陽さんに対して少しばかりの興味がある。この感情がどういったものかはわからないけど、彼のことがとても気になるのだ。
「う、うん。わかった。」
わたしは蒼翠ちゃんに陽さんの部屋の場所を確認した後、頭を少し下げてから1階に続く階段を下りて行った。
さっき蒼翠ちゃんが言っていたこの家のルールには、『みんなでご飯を食べる』や、『会話と時間を大切にする』などがある。蒼翠ちゃん曰く、「あたりまえをあたりまえと思えることの幸せに気付いてほしい。永遠に『今』は続かないから人との関りを大事にしてほしい。」らしい。とても蒼翠ちゃんらしいと思った。
陽さんの部屋の扉の前まで行ったら、軽くコンコンとノックする。少し待ってみても部屋から返事はなかった。
「ど、どうしよ。で、でもお腹空いてるだろうし…。」
部屋の前でおたおたと狼狽えていたが、意を決して「よしっ!」と両手で両頬を叩く。そしてもう一度ノックをして
「失礼します。」
と言って、入っていった。
部屋の調度品は見覚えのあるものばかりだった。なぜかというと葵ちゃんが創っていたものだったからだ。記憶力はいいほうなので間違いないと思う。だけど、少しばかりの違和感を感じた。だけど、そんなことよりも起こすということの方が大事だったのでベッドに横たわっている陽さんに近づく。
「陽さん?ご飯ができましたよ。起きてください。」
黒いベッドの隣りに膝立ちをして、背中を向けている彼にとりあえず声だけ掛けてみる。
「………。」
陽さんは全く起きる気配もなかった。そもそも、寝ているのかも解らないけど。
「陽さん?ひーなーたーさんっ!」
今度は身体を小さく揺すってみる。
「ん……。」
少し反応があったので先程より動きを大きくした。
「ひーなーたっ……きゃあ!!」
すると彼は急に方向をこちらに向けたかと思うと、わたしの左手をグイっと引っ張った。上半身だけベッドに乗り出し彼の胸元におさまる感じになる。そして、わたしの髪を梳くように撫でてきた。
わたしは突然のことで驚きすぎたせいで何もできなかった。
「ちょ、ひ、陽さん!!?」
「―――――。」
「え?」
陽さんは寝惚けていたのかわたしを誰かと間違えたみたいだった。眠そうなその黒い瞳にわたしを映してはいるのに、わたしではない名前を呼んだ。とても愛おしそうに―――わたしが美花の名前を呼ぶときのように。そのときの陽さんは同い年とは思えないほどの色気を醸し出していた。その顔に胸がドキッと高鳴ったのが判った。
硬直していたわたしだったが、陽さんと視線が交わってハッとする。しかしそれはお互い様だったようで…。
「なんで、お前が居んのっ?!」
「ご、ごめんなさい!!夕食ができたので…。」
わたしも陽さんも顔を真っ赤にさせて、わたしはあわあわとしながら今の状況を整理しようとする。
(こんなところみんなに見られたら…。)
みんなに見られた時の想像をして顔が少し青ざめる。しかしその間、陽さんはわたしの腕を離さなかったので、わたしが陽さんの身を案じて「離して」、という前にドアが開く音がした。
(あ………。)
刹那、強烈な3つの殺気がわたしの目の前の人物に向けられているのがわかった。そして、わたしと陽さんの前に先程見たばかりの大鎌と、圏、大扇が過ぎった。大鎌と圏は壁に突き刺さり、大扇は音を立てて落ち、陽さんの前髪が少量はらりと、落ちる。ふたりの息を呑む音が重なった。
「「「なに、してんの/してるんですか?」」」
明らかに怒気を含む3つの声。わたしの片割れの美花の声と、先程軽く雷を落とした蒼翠ちゃんの声に、普段怒らない大和撫子な葵ちゃんの声だった。その後ろでは隣花ちゃんのため息が聞こえ、蒼空さんの「どんまい…。」という憐みの声がした。
「え、えと…。」
陽さんもわたしも気に負けて口籠ってしまう。わたしは今の状態の美花たちに何を言っても逆効果になるということを知っているから尚更だった。陽さんもそれを悟ってか何も言わない。
何も言わないわたし達を見てか、蒼翠ちゃんと葵ちゃんは自身たちで状況を把握したのか、何も言わないままやれやれと手を上げていた。美花は理解してるのかしてないのか解らないが、「むぅー」、とかなりご機嫌斜めだった。なのでご機嫌を取るように、陽さんに離してもらった手を広げて
「美花、おいで?」
と、言ってみる。いつもならゆっくりと、しかし速く優しく来てくれるのだが、今回はそうはいかなかった。猛烈な勢いで美花が突進してきた影響でわたしはバランスを崩し、陽さんの上に乗りかかってしまう。
「え、ちょ、美花。まっ―――!!」
本日二度目の倒れ方だった。さっきと違いわたしは陽さんに背を向ける感じで倒れてしまう。ごつん、とぶつかる音が聞こえて申し訳ない気持ちになる。
わたしは慌てて美花の体勢を戻そうとするのと同時に、下敷きになっている陽さんに謝る。
「ひ、陽さん、ごめんなさい!!」
「いいからさっさと、どけ!!重い!!」
わたしは「重い」という単語に早く起き上がらねばと思い、美花をどうにか押しのけ立ち上がる。そして美花にも謝るように促そうと顔を見たら…。
「はぁ?あんた今、綾のこと重いとか言いやがったな?ふざけんなぁ!!」
その後美花が陽さんにブチ切れ、それを宥めるのに時間がかかりせっかく作った夕飯も冷めてしまったのだった。でも温め直してみんなでご飯を美味しく食べた。
こんなことがあっても大変などと思わなかった。だって、家の中が騒がしいことが、美花が楽しそうなことがとてもうれしかったから。
(またこんな風に騒げるなんて楽しいな。)
心の中でそう呟きながら、わたしは口元を綻ばせた。そのときわたしは、母を亡くした後の生活を振り返っていた。
***
わたし達が産まれた頃にはもう、父親という存在はこの世にはなかった。ただわたしと美花にそっくりな、美しい【舞姫】を務める母親しかいなかった。父のことについて訊いても母は目を細めて笑うだけで何も答えなかった。
母の笑顔は見る人を元気にするようなそんな明るい笑顔で、母自身も現在の美花同様、天真爛漫だった。騒がしく家の中をかき回しながらも、暖かい春の日差しを持ってくるような…そんな人だった。
しかし母はいつからか空っぽのような―――誰も見ていないような表情で哂うようになった。なぜそうなってしまったのか知る由も無かったが、母のつらそうな姿を毎日見続けていた。次第に家の中での会話も減り、マースリン家では笑顔も消えていた。それに連鎖するようにか否か、わたしの身体は少しづつ病に蝕まれることが増えていった。
そんなある日、母方の叔母がきた。わたしと美花は会ったことのなかった人が怖くて、恐くてすぐに目を逸らした。そしてずっと耳を塞いでいた。でも耳を塞いでいても聞こえてしまった言葉。
―――『あんな男を選ぶから、不幸になったんだ。』
まともな教育を受けていなかったわたしでもこれだけは解った。父と母を侮辱されたということに。
わたし達は叔母が嫌いだった。わたしたちの瞳の色を見ては嫌悪の表情を浮かべ、母にきつく当たる。そのせいで母は、萎れていく花のように精神と身体を蝕まれていった。
母の死因である病が発病したとき、わたし達は12歳だった。ちょうどわたしと美花が史上最年少であり、初代と同じ双子の【歌姫】と【舞姫】に選出された歳のことだった。母はわたしが【歌姫】に選出されたと聞いたとき、目を見開いて驚いていた。だけどその瞳はどこか歓喜の色を含んでいた。そんな気がした。その理由に気付いたのは母が亡くなって暫く経ってからだった。
そして美花が次期【舞姫】に選出され、わたしも次期【歌姫】に選出された翌週。母は突然息を引き取った。たった一言を残して。
「幸せになりなさい。」
そう言った母はどんな思いで言ったのだろうか。知りたいとは思うのになぜか知りたくなかった。
母が亡くなった後は残された美花と、叔母とともに過ごしていた。無知だったわたし達は【歌姫】や【舞姫】としての振る舞いやその歴史など、なにからなにまで教え込まれた。そのときに【舞姫】はマースリン家から、【歌姫】は何という家だったか記されていなかったが特定の家のものから産まれると知った。わたしが【歌姫】と言ったときに母の瞳に歓喜の色が見えたのはこういうことだったのだろうと、納得したのだ。そして、【歌姫】と【舞姫】が姉妹であるのはかなり珍しいことだと知った。わたしと美花は125代目の【歌姫】と【舞姫】であるが、初代の【歌姫】と【舞姫】の方も双子の姉妹だと学んだ。
そんな風に日々を過ごしていく中で、時折皇国の偉い人と思われる人が来たりして挨拶を交わしたり、歌を披露することもあった。美花はその人たちが来て、頼まれたとしても頑なに舞をしようとはしなかった。しかし【舞姫】の家系であるマースリン家にとって、美花が舞をしないというのはマースリン家の一大事に関わることだと思いその理由を訊いてみれば、
―――「ねぇ美花。どうして舞をしないの?」
―――「……綾は、頼まれたからって見世物のように、人形のように唄うの?あいつらは嫌な感じがするから舞いたくない。………ねぇ綾、お願い。もうそんな顔で唄わないで…。」
美花は涙を静かにぼたぼたと零しながら、そう言ったのだ。
わたしはその言葉を聞いたとき、今まで自分がどんな顔で唄っていたのかと考えたと同時に悟った。わたしは誰かから必要とされることが嬉しくて、よく考えずに恵みを与えていた。だけど、結局は自分という存在を擦り減らしていたのだ。そのことに気付いた美花はわたしをどんな瞳で見つめていたのだろうか。
そして同時に気付いたことがあった。美花が舞をしなかったのは、誰も信用できなくなっていたから。わたしが唄っていたのは、心の穴を埋めるために自分を殺していたから、だと。
それからわたしは本当に必要な時以外は唄わなくなった。美花も舞をしようとはしなかったし、部屋から出ることも少なくなった。そのことで叔母からは嫌悪され、暴力だって振るわれたこともあった。でも、美花が教えてくれたことを無下にはしたくなかったから、だだ我慢した。
そうしていくうちに笑顔が取り柄だった美花は笑わなくなり、取り繕った作り笑いが脱げなくなったわたし。血の繋がりではもはや互い同士しか信頼できず、他人も信じられなくなっていた。そんな壊れかけていたわたし達姉妹の前に、彼女は突然現れたのだ。
彼女はわたし達にとって、真っ暗な闇の雲から差した日の光だった。
***
「こんにちは。」
目の前に白いフードを深く被った人が声を掛けてくる。声からして女性のものだろう。わたしは隣にいる美花の手をギュッと握りしめながら、
「…こんにちは。」
と答えた。
ここは母の実家―――つまり叔母の家だった。この家に連れてこられて3年が経っていたが、このような人は見かけたことはなかったので、相手を見定めるかのような瞳を向けていた。彼女はそんなわたしの瞳を見てか、フードを静かに上げ、わたし達に顔を見えるようにしてきた。そして、こう言った。
「あなた達を助けに来たの。」
彼女はフードから長い蒼い髪を垂らしながら、見透かすようなアクア色の瞳にわたし達を映しながら、綺麗に笑った。その笑顔を見て、初めて人を信じたいと強く、思った。彼女の名は、
「私は蒼翠。あなた達と同じで、『魔法』を使えるの。わたしと少しお話しましょ?」
差し伸ばされた右手を意味も解らずギュッと掴み返した。
それが蒼翠ちゃんとの出会いだった。
***
(そうだ、蒼翠ちゃんと初めて会って他人の温かさに触れたんだ…。)
少しの間初めて蒼翠ちゃんと出会ったときのことを思い出す。当の彼女は美花を止め頭をよしよし、と言った感じで撫でている。
(あのときはまたこんな風に笑えるなんて思ってなかったな…。)
わたしは『今』という幸せをもう一度教えてくれた蒼翠ちゃんに対して、
(ありがとう…。)
と、口には出さず心の中で感謝の想いを告げた。
彼女は初めて会った時と同様、優しい陽だまりのような笑顔で微笑んでいた。
***
~???視点~
「お前、いったい何者なんだ?」
本で埋め尽くされた部屋の中で凛として強気な声が響く。その声の主はホチキス止めされた紙束をばさり、と目の前の人物に投げ捨てる。何も言わない人物に対して声の主は、
「もう一度聞く。お前はいったい何者だ?答えろ、―――!!」
人物の名前を呼び、答えを催促する。が、首元に強い衝撃が走り堪らず膝をついた。
「く、そ……。きさまっ!!」
意識をどうにか保って衝撃を与えた人物の顔を見、睨みつける。完全に意識を失う前、凛とした声の主は聞いたのだ、
「ごめん……。」
という、辛そうな声を。
(そんな辛そうな声で言うくらいなら、教えてくれ…。)
凛とした声の主がそう口にすることはできないまま、彼女は意識を手放した。
「ごめん、隣花。」
彼女―――隣花が意識を失ったことを確認してから呟いた、ふたつの人影は彼女を丁寧に持ち上げ、その姿を消すのだった。
―――Next
あたりまえがあたりまえに続くのってとても幸せですよね。
今いつ戦争が起こってもおかしくない状況下ですので、『今』を大切にしていきたいです。
コメント等してくださるとモチベーションが上がって投稿ペースが速くなると思うのでよろしければお願いします。
私事ですが本日横断歩道をsuicaを掲げて歩くというバカな行動をしました。隣にいた心友からも冷たい視線が来ました。そんな頭のねじ100本くらい飛んでいる人間ですがこれからもお願いします。
Twitterの方もお願いします。基本くだらないことしか言ってませんが…。FF好きでグラブルなども好きです。
https://twitter.com/haruhuziyuki 名前:はる