第四話 「新しい仲間」
『いえ、前にここで暮らして居た方々は・・・私たちのような普通の人だったみたいですの』
『え・・・、それって昔は人類が存在してたって言うの?』
早坂が言ったことは信じがたいことだった
もしそれが本当のことなら全員死んだと言うことになるからだ
『それはないんじゃないかな、だって今の状況を考えると・・・』
『あり得るんですの!』
嵐の言葉を遮るほどの声を出した早坂は悲しそうだった
『し、失礼しました。ですがこの家にあったものを整理した時にそれを証明する者があったんですの』
と言って棚から一つの写真たてを手に取り嵐に見せる
『これですわ』
『これは・・・』
渡された写真には家族と思われる写真が入っていた
父、母、娘の三人家族だったようだ
『と言うことは、この家はこの人たちの・・・』
『家ですわ。』
『おそらく、昔の戦争の時に人類は全員・・・』
死んだ。それは言葉にしなくても誰でもわかることだ
嵐はそんな現実を突きつけられて悲しまずには居られなかった
『早坂は、優しいんだね』
『え?』
『だって見知らぬ人たちなのにその人たちが使ってたまま、ここを使ってるんでしょ?』
嵐にはわかった。大昔の戦争時から空き家となって居たのならたくさんのものが腐り果て、それぞれのものは埃をかぶって動かせばそのあとが残る
でも今この家にはそれがなく綺麗にされて使われている。そう言う細かいところに着目するのは嵐が知らないうちに身についていたいわゆる特技なのかもしれない
『嵐さんはなんでもお見通しですのね。ええ、その通りですわ』
『ここを見つけた時はそれは嬉しかったですわ。でも中は汚れていてそれはもうひどい状態でした』
『でも、入ってすぐのところにこの写真たてがあって、これを見て色々調べたんですの』
『そうして確信に至ったと言うわけですわ。そしてこの家族が嫌だと思わないようにこうしてそのまま使って、ものも綺麗にして使っているんですの』
そうやって話しているうちに早坂の目からポロポロと涙が流れていた
そんな早坂を見た嵐はなんて声をかけていいのかわからなかった
『す、すいません』
と、早坂は涙を拭う
『嵐さんは今日ここに来たばかりで疲れていらっしゃるのに・・・』
『いや気にしないでいいよ。少しでもここのことを知らないとこれからどうしたらいいのかわからないし』
『どうするかはもう決まっておるじゃろう』
と二人のやりとりを今まで黙って聞いていた紅月が急に喋り始める
『魔剣使いと戦い、魔剣を手に入れ、魔王となるこれが今のお主に与えられた使命じゃ』
『そ、そんなことできるわけないだろ!他の魔剣使いを殺すだなんて・・・』
『誰が殺すと言った』
『だって魔剣使いを殺さないと魔剣は自分のものにならないんでしょ?』
『もう妾が言ったことを忘れたのか』
と、紅月は呆れはようにため息をつく
『嵐さんの中に未だ眠っている魔剣のことですわね』
『あ・・・』
『忘れていたなんて言わせはせんぞ!』
と嵐の頭を殴る
『イテッ・・・し、しょうがないだろ!ここまでに色々な話があったんだから』
『お主の中の魔剣のことはお主自身が一番気にしなければならないとわかっておるのか!』
『ご、ごめんなさい』
『まぁまぁ今日はもう休みましょ?お二人とも疲れていらっしゃるでしょうし』
と早坂が間に入ってくれたおかげでこの場がおさまった
その後早坂が料理を作ってくれて三人でワイワイ食事をし、寝ようとなった時それは起きた
『なんで紅月さんが嵐さんと同室になるんですの?』
『そんなの当たり前であろう、妾とこいつは契約者同士一緒に寝て何が悪い』
『例えそうだとしてもなぜ人間の姿のままですの!』
『楽だからじゃ』
『そんなの理由になりませんわ!紅月さんは私と同室ですわ!』
『却下じゃ、妾は嵐と夜を過ごすんじゃ、美咲は一人で寝るがよい』
『夜を過ごす!?そんなの家主として認めるわけにはいきませんわ!どうしてもと言うなら私も・・・い、一緒ですわ』
『あの紅月さん?誤解を招くような発言はやめようね?』
『そんなことはないぞ、妾は本当のことを言ったまでじゃ、お主は妾と初夜を過ごすのじゃ』
『初夜!?だ、ダメですわ!嵐さんの初夜は私とですわ!』
『なんで美咲が入ってくるのじゃ、お主は嵐とあってばかりであろう』
『そ、そうですけど!さすがに譲ることはできませんわ!』
『嵐は妾のものじゃ!』
『私のものですわ!』
二人の嵐の取り合いはこの後も数時間続いた・・・
その結果嵐の我慢も限界に達し
『いい加減にしろ、二人とも!』
いきなり怒鳴った嵐に驚き、二人は静まり返る
『俺は一人で寝る!そっちは二人で寝てくれ!』
と言って一人部屋に入る嵐を見送った二人は静かに部屋に入っていくのであった
嵐が怒ってからは二人は部屋に来ることなく静かになった
布団に入って色々考え事をしているうちに嵐は眠ってしまった
夜中になって自分の体に違和感を感じ目を覚ます嵐
体を起こそうとしたが体が動かない
『な、なんだ!?紅月か!?早坂の仕業か!?』
誰も反応せず嵐の視界がはっきりしてきたと同時に自分の体の上に乗っているものが見えた
それは一人の女の子だった
『き、君は?』
尋ねても返事がない。言葉が通じないのか?と思っていたらその女の子が顔を近づけてきた
『な、何かな?』
やっぱり返事をしない。と女の子は嵐の顔に息を吹きかける
その瞬間嵐は意識が遠のいていった
『うっ・・・』
そうして嵐は眠りについてしまった
その夜嵐は夢を見た
『おーい、起きてー?』
そんな声がし目を開くとそこはどこを見ても真っ白な世界だった
『ここは?』
その問いかけに答えたのはさっき呼んでいたであろう一人の女の子だった
その女の子は水色の髪をしていて星の髪飾りをつけていた
その少女を見たとき嵐は見覚えがあるような気がしたがはっきりとは思い出せなかった
『ここは君の夢の中だよ』
『夢の中?』
『うん』
『ところで君は?』
『私?私は・・・ってそう言うのは自分が名乗ってからじゃないかなー』
『あ、あぁ、俺は神崎嵐だ。よろしくな』
『へぇー君が嵐ねー』
『なんだ?俺のこと知ってるのか?』
『まぁちょっとだけね』
『で、お前は誰なんだ?』
『私は君の中にいるものだよ、だから名前はない』
『俺の中に?』
そのことを考えようとしたら激しい頭痛がして座り込んでしまう
『ここではあまりそのことを考えないほうがいいよ、大丈夫必ずまた会えるよ』
『その時のためにも私に名前をつけてくれないかしら?』
『名前・・・?』
『ええ、私の名前』
『じゃあ、蒼波なんてどうだ?』
『あおば?うん!ありがと』
『気に入ってくれてよかったよ』
『私は蒼波、改めてよろしくね嵐』
『あぁ、よろしくな』
そういって二人は握手する
その瞬間、嵐の目の前が真っ白になった
『・・・らしさん、嵐さん!』
自分の名前を呼ぶ声がしたので目をゆっくり開けると早坂が起こしに来てくれていた
『嵐さん、おはようございます』
『お、おはよう、早坂。わざわざ起こしに来てくれたの?』
『はい!旦那様のお世話は妻であるわた・・・んんっ!朝ごはんはできていますわ。紅月さんは先に召し上がっています』
『う、うん、今起きるよ』
そういって起きようとしたら布団の中に違和感を感じた
なんだ?と思い早坂に気づかれないように布団の中を覗くと
青い髪の女の子が嵐にくっついて寝ていた
『えぇ!?』
と嵐はそれに驚きつい大きな声を出してしまった
『どうかなさいました?』
その声を聞いた早坂が問いかける
『い、いや、なんでもないよ。もう少し寝ようかなーなんて』
『もうそんなこと言うなら布団を取りますよ?』
『お、起きるからちょっと待って!』
嵐が止めてももう遅かった。早坂はもうすでに布団に手をかけていた
『えいっ!』
布団を勢いよく引っ張りあげる
『ちょっと待っ・・・』
『嵐さんが起きないからです・・・よ・・・え?』
布団の中を見た早坂の声がだんだん小さくなり、次の瞬間
『えぇー!!嵐さん!一体これはどう言うことですの!?』
『えーっと、そのー、俺にもよくわかっていなくて』
『とぼけないでください!一体この少女はどこの誰ですの!』
『とぼけてない!本当に知らないんだって!』
『嵐さんの初夜は私とのはずですのに・・・』
と涙目になる早坂
そこに朝食を食べ終わった紅月がやってくる
『なんじゃ朝から騒がしいのぅ』
『邪魔をしないでくださいまし!今夫婦喧嘩中ですわよ!部外者は黙っていてください!』
『部外者とはなんじゃ部外者とは!妾は嵐と契約を結んどるんじゃぞ!しかも夫婦とはなんじゃ生意気な』
『ん〜、うるさいなぁ〜』
と二人が言い合っていると嵐にくっついて寝ていた少女が目を覚ます
『さっきからうるさいよ、人がせっかく寝てるのに』
『あ、あなた!どこの誰ですの!あ、あら、嵐さんと・・・』
『そうじゃ!妾の嵐と寝るとはただじゃすまさ・・・んぞ?』
紅月の声がだんだん小さくなり何かに気がついたかのように納得する
『おぉ、お主は妾と同じ嵐の魔剣じゃな?』
『あぁ!私よりも先に行っちゃった炎の人だ!』
二人はお互いを知っていたようで二人で納得し合っている
『二人は知り合いなんですの?』
『あぁ、こやつは妾と同じ嵐の魔剣じゃよ』
『なるほど〜ってなりませんよ!』
『嵐、こやつに見覚えはないか?』
『無視ですか!?』
紅月は早坂を無視して嵐に問いかける
『うーん、言われてみれば・・・あ!』
『思い出した?また会ったね嵐!』
『お前は蒼波か!』
『そうだよ!』
『もう名前をつけていたのか、手が早いのぅ』
と紅月が睨みつけるように嵐を見る
『え!?嵐さんも知っているんですの!?』
『あぁ、夢の中でな』
『むぅ、私だけ仲間はずれは悲しいですわ』
と泣いているかのように手で涙を拭う動きをする
『あはは・・・』
と朝からすごいなぁと人ごとのように思っていた
『これからよろしくね!嵐!』




