第二話 「早坂美咲」
ーそう、それがお主の魔剣じゃー
『魔剣・・・これがあの、アニメとか空想のものだと思ってた』
ー感心してる場合か!今は戦闘中じゃ!ー
『そうだった!』
と我に帰り、相手の女性に視線を向ける。
『あなた本当に不思議な方ですね。ただの人だと思ったら魔剣を出すなんて、私の獲物にぴったりです』
『なんで魔剣のことを知ってるんだ?しかも獲物って・・・』
『私の言う獲物、それは魔剣使いですわ、魔剣のことを知っているのは私も魔剣使いですから』
『あんたのも魔剣なのか!?一体いくつあるんだよ』
わからないことすぎて嵐の頭の中はパンク寸前だ。
ーなるほどな。あやつもあやつで使命を果たしているだからこそ嵐を殺そうとするー
一緒に話を聞いていた紅月の話す声が自分の中で響いてるのを感じながら警戒を続ける。
『少々話しすぎましたね。今度こそ終わりにしましょう』
と言って再び姿を消す。
『またか!』
ー右に跳んで着地したらすぐに魔剣を振れ!ー
紅月の指示が来てすぐに右に跳ぶ。彼女の攻撃を避けることができた、が、攻撃はしなかった。
ー何をしておる!戦うのが初めてのお主は一撃一撃が重要なんじゃぞ!ー
『だからと言って女の子を傷つけることなんてできるわけない!』
ーお主は甘すぎる。情けをかけたら死ぬぞ!だが・・・ー
紅月の話の途中で再び攻撃を仕掛けて来た。
相手は刀のような魔剣を使い慣れてるかのように素早く連続攻撃をしてくる。
嵐もなんとか連撃を防御する。
ーこのままじゃやられるのも時間の問題じゃ!妾は主人であるお主には逆らえん。だったら一か八か!
嵐!今から教える呪文を魔剣を構えて唱えよ!一回で妾を魔剣の姿にしたお主ならできるかもしれんー
いきなり紅月が協力的になったので、嵐は少し驚いた。でも、この状況を打破する方法は紅月の言うことを聞くことしかないとなぜか確信できた。
『わかった、その呪文って?』
ーそれは・・・ー
今まで防御でしか使わなかった魔剣を連撃の一瞬の隙に相手よりも早く振った。その攻撃は避けられたものの相手が警戒して距離をとった。
『やっとやる気になりましたの?でも、もう遅いです。』
と言うと同時に直進してくる。魔剣を装備しているからか、見慣れたのか、相手がどうくるのかはっきりわかった。そして、呪文を唱える。
『赤き竜、黒き竜よ今こそ目覚め我に力を貸したまえ』
唱えてるうちに嵐の前に魔法陣のようなものが現れ、そしてあたりに竜の咆哮が響いた・・・気がした。
でも、それを確証できた。相手の動きが止まっている。それを見逃さなかった嵐はすかさず呪文を唱える。
『ダークフレイム!』
その言葉を言った直後魔法陣から紅月と同じ炎の弾が打ち出される。
相手は我に帰りそれを避ける。
『そんな遅いもの当たるわけがありませんわ。』
軽々とダークフレイムを避けて前進してくる。
・・・が、バーンッ!と後ろで爆発が起きる。
『くっ!!』
彼女は爆風で飛ばされ木に勢いよくぶつかる。
『ど、どうして・・・』
微かな声を発して気絶してしまう。
そう、嵐の放ったダークフレイムには仕掛けがあった・・・
それは、彼女が避けた時すかさず嵐は
『爆!』
唱えていた呪文は続いていた。
そうして炎の弾は爆発したのだ。
『せ、成功した・・・』
嵐は自分がしたことが信じられなかった。
力が抜けてその場に座り込む。
『情けないのう、ここまでのことをしておいてそれっきりとは』
と、人の姿に戻っていた紅月は嵐を見下すように言う。
『こ、こんなこと、初めてなんだから仕方ないだろ。ところで、お前はなんなんだ?』
今まで疑問に思っていたことを口に出す。
『妾は魔剣じゃ、さっき見ただろう?』
『そ、そうじゃなくて!なんで急に俺の前に』
そう、ずっと疑問に思ってたこと、紅月がなぜ自分の前に現れ助けてくれたのか。
『妾はずっとお主の中にいたんじゃ。だからお主のことは小さい頃から知っている。』
『ずっと・・・って』
『魔剣とは、主人がいないと存在することのできないもの。主人を失えば魔剣は存在することができない』
『っ!!じゃ、じゃあ、俺は彼女の・・・』
『安心しろ、あやつは死んでおらん。気絶しているだけじゃ』
『よ、よかった』
『だが、なんなんじゃあの戦いは!死にに来てようなものじゃ!』
『す、すいません・・・』
といきなり紅月に怒られ、がっかりする。
それを見た紅月は
『ま、まぁあれじゃ、初めてにしてはよくやったな』
『あ、ありがとう』
『さてこやつをどうするか』
と、気絶している彼女に近づく
『ら、乱暴なことはしないでよ!?』
『わかっとる!だが、魔剣使いとなると・・・』
『どうしたの?』
『魔剣使い同士の戦いでは主人が殺されて負けた魔剣は相手のものになると言う決まりがある』
『なんだよそれ・・・』
『それが魔剣使いの使命なんじゃ。魔剣使いを倒し、魔剣を得て、6本集めたあかつきにはこの世の魔王となる。』
『ま、魔王?そ、そんなもののために殺し合いを・・・』
嵐は混乱した。自分も魔剣使いになった今自分もそうしなければいけないのかと・・・
『ただの殺し合いではない、この世界はお主のいたところとは全く異なった世界でな。』
『異なった世界・・・?』
『あぁ、ここでは六つの種族がいて、それぞれが領土を持っておる。そして、それぞれの種族には主がいてなその主によって領土の取り合いをしておる。いわゆる戦争じゃな。』
『戦争・・・こんなところでも』
『六種族といってもそこには魔剣使いは含まれておらん、なぜなら主人であるものがいないのじゃ』
『だから魔剣使い同士で争い、魔王となろうとする。』
『魔王はやろうと思えばこの世の全てを支配することもできる最強の存在』
『じゃ、じゃあ、他の種族も領土も関係ないじゃないか!』
『そう、だから他の種族たちはそれを妨害しようと魔剣使い達を殺そうとする。』
そう言われて嵐は疑問に思う
『でも魔剣使いっ魔剣を装備しなければわかりにくいんじゃないの?』
『ふふ、簡単なことじゃ、魔剣使いにはある条件があってな、見た目はお主のような普通の人なんじゃからの』
『だから、この人は・・・』
『あった時には確信していたのかもな、お主が魔剣使いだと』
それを聞いた嵐は愕然とした。
自分はこの人と会った瞬間に殺されるのが確定だったことに
『そして、六種族達もお主らを見れば魔剣使いとわかりすぐに殺しにくるじゃろう』
『じゃ、じゃあどうすれば・・・』
『まぁ、大丈夫だろう』
『どこが大丈夫なんだよ!ここにいたらどこにも行きようがないじゃないか!そもそもここが日本じゃないってどう言うことなんだよ』
『お主ももうわかっておるんじゃないか、帰宅途中見知らぬ道に入り空間転移してここに至ると』
『あれはお主が魔剣使いになった証拠みたいなもんじゃ』
と紅月と話しているうちに彼女が目を覚ました。
『うっ・・・な、なんで私を殺さないんですの?』
その問いが目を覚ましてからの第一声だった
嵐のその問いへの答えは決まっていた
『俺には女の子を殺すなんてできない、ただそれだけ』
『・・・ふふっ、面白い方ですのね』
彼女は笑みをこぼした。そして
『あ、名前を申し上げるのを忘れてましたわ、早坂美咲と申します』
『俺は、神崎嵐だ。よろしくな!』
『ええ、よろしくお願いします。嵐さん』
その様子を黙って見ていた紅月は呆れたような顔でこちらを見ていた。
『自己紹介は済んだか?あんな戦いしておいて今更とはの』
『あんな戦闘中に名乗れるわないだろ!』
『ふふ、目覚めたばかりの魔剣さんとの連携はバッチリですのね。ちょっと妬いてしまいます。』
『お主何を言っておる、妾と嵐は契約者同士じゃ』
『はい、だからこそです。』
『えーっと?』
嵐は二人の会話についていけてない。
『それはともかく美咲とやら、魔剣が一つしかないところを見るとまだ誰とも戦ってないか、狙われたの二択かの』
『戦ったことがないならあの戦闘能力はなんなんだよ。戦闘経験があるはずだ。』
『嵐さんの言う通りですわ、私は戦闘経験があります。でも、それは魔剣使い相手ではなく、種族の方々ですけど。』
それを聞いた嵐は驚きを隠せなかった。
『もしかして狙われてるの?』
『ここじゃどこの種族にあっても同じ対応をされるんですのよ。でも、私にはこの大蛇がついている、ただそれだけで魔剣使い以外の種族には負けませんわ』
『君の魔剣は人の姿には・・・』
『なれませんわ、私の中では会話できますけど』
それを聞いた紅月が説明する。
『魔剣で人の姿になれるのは妾達だけじゃな』
『達とはどう言うことですの?』
その部分は嵐も聞き逃さなかった。
『これは仮説なんじゃが・・・』
『嵐の中には、複数の魔剣が眠っている。』