友達より‘チョット’うえ5
最終話『明日になれば』
あのあと、鈴音と波ともふつうの仲に戻って、楽しい毎日を送っていた。
私は、今、中学3年生。今は、受験勉強の嵐がわたしを苦しめる…
そんな時期だから、逆に頑張れる!!
「おす、千夏。病院ちゃんと行ってきたか??」
「うん!大丈夫だよ!!」
陸とは、今付き合っている。陸は、わたしのありのままを受け入れてくれた。
「無理すんなよ?お前、いつも笑ってるけど、ほんとは苦しんでるんじゃないかって…」
「…ちょっとー!わたしをバカにしてんの?ほんとに大丈夫だって!!」
…陸がわたしのことを心配するたびに、胸が苦しくなる。
なんで、わたしがこんな思いしなきゃならないのだろう……なんで、なんでわたしなのだろう―――
「そっか…なら、いいんだけどさっ!!そんじゃ〜行こっか♪」
「…うん!!じゃぁ、出発〜♪」
落ち込んでる場合じゃない!!今を楽しまなきゃ♪
今日は、陸と2人きりで☆久しぶりに海に来た。なつかしい空の色、暖かい太陽、海のにおい…昔、ここに陸ときたっけ?
覚えてる。知っている。ここの暖かさ…
「ねぇ、陸。昔ここにきたことあったっけ?」
きょとんとした顔で、陸はわたしを見ている。そして、ため息をついた。
「はぁ〜お前、忘れてたのかよ!!よく遊びに来ただろ?」
「う〜ん…あっ!思い出した!!おぼれかけてた私を、陸が助けてくれた海だ〜」
「お前…そこから思い出すのかよ!!」
「えぇ〜別にいいじゃん。今となってはいい思い出だよ♪」
そう言って、わたしは海までダッシュで駆けぬけた。
「つめたーい。陸もおいでよ!気持ちいいよ!!」
「おい!!あぶねーだろ!!無理すんなよ!!」
陸が、私の腕をしっかり掴んだ。
…わたしの頬に、一筋の雫がながれた。
「おい、どうした?!どっか、痛いのか?!」
「…ない…で…」
「えっ?」
「わたしが今、すごく幸せなのは…死にたくないくらい幸せなのは…誰のおかげだと思ってんの?……わたしのせいで不安になんかならないで―――」
静かに流れる涙と、ゆっくり流れる時間…大事な時間…
わたしの病気なんかのせいで、無駄にしないで!不安な時間なんかいらない!!
「ごめん…ほんとに大好きだよ。ずっとずっと、そばにいる。」
気づけば、わたしは陸の腕のなかにおさまっていた。暖かな陸のぬくもり。
「なんでだろ?昔から、陸のとなりはこんなにもホッっとする…」
―――突然、目の前がまっくらになった。
「千夏、千夏…千夏ーーー…」
…陸?
陸がわたしを呼んでいる。ちゃんと、聞こえている。
陸!!ここにいるよ!!陸の声、ちゃんと届いてるよ!!!
「なんでだよ…なんで俺を1人にすんなよ!!目を覚ませよ…」
なんで?なんで、陸は泣いてるの?
お母さんも、お父さんも、実夏も…鈴音も、波も!!
なんなの?どうなんてんの、これ!!
「お前は、死んだんだよ。今から、わたしと一緒に天国に行くんだ。」
見ると、そこにはおじいさんがいた。
「誰?あなたは誰なの?私が死んだって…」
「わたしは、お前を天国まで導くもの。見てわかるだろう?みんな、泣いている。」
…そっか、わたし死んじゃったんだ。
「さぁ、行こう。朝吹千夏。」
「待って!!最後に、一つだけお願いしていい?」
「陸と、話がしたい。最後のお別れをいいに…」
おじいさんは、びっくりしていた。
「いいだろう。」
ここは…病院かな?あそこで、陸が泣いている…
「陸!!」
「…千夏?!お前…」
「へへっ、びっくりしたでしょ?わたし死んじゃったんだってね…」
「なんで…」
「だから、最後のお別れを言いに来たの。あのね陸、わたし後悔なんてしてないよ。すごく幸せだったんだよ。笑ってる陸が大好きだったんだよ…だから、泣かないでほしい、ずっと笑っててほしい、幸せになって欲しい。陸はわたしの分まで、生きるんだよ。」
「…分かったよ、もう俺泣かないから。」
「ほんとに、ほんとに大好きだよ。ありがとう。ばいばい・・・」
次の瞬間、千夏が消えた。
「千夏…俺、もう泣かないから。だから、見守っててくれよ…」
青い空に、一筋の雫が流れた。
流れ星のように、綺麗に輝きながら―――
わたしの小さな恋は、永遠に輝き続けるよ。
陸、いつもキミは…
友達より‘チョット’うえ…だよ。
ばいばい。
ずっとずっと、ありがとう。