日本的には夏休みⅣ
「前に色々した仲だろ?」
「やー! それあんたが勝手にやっただけじゃない! 放してよ!」
明らかに攫われているようにしか見えないが、日本社会の如く無関心で、雷の国の住民達は見逃している。
「これは俺が介入した方がいいのかな」
「カイトさんなら聞くまでもなく突っ込みそうですけどね」
「いやいや、あれ本当に誘拐犯か分からないし。一撃目から頭に一発喰らわれたらまずいかなぁ……と」
そうしてしばらく見ていると、白い雷撃の槍が放たれ、男を大きく仰け反らせた。
「おい馬鹿! こんなところでそんな火力の術使うなよ!」
「あんたがいつまでも放さないからでしょ!」
超近接からの術、それも攻撃速度が速い雷属性の攻撃を、あの男は回避している。
攻撃の軌道が読める俺ですら、狂魂槌で撃ち落とすのがやっとだというのに、どのようなテクニックを使っているのだろうか。
「あたしから離れて行動しなさい! さもないともっかい打つから!」
「はいはい……でもなぁ、一応俺はラグーン王から頼まれているんだぞ? そこまでは離れられない」
「そういえばそっか。じゃあ、少しくらいなら近づくのを認めるわ!」
「じゃ、お言葉に甘えさせてもらって」
男はライカを肩車すると、そのまま何処かに向って走り去った。
その間際、ライカが恐ろしく嫌がっていたような仕草を見せたが、そこまで気にするべき事でもないだろう。
「何だったんですかね」
「……さぁ? でも、ラグーン王から頼まれているっぽいし、大丈夫じゃないかな」
それに、あの男は強い、と言いたくもあったがそれは余計な事なので黙っておく。
「一国の姫にあの態度なんて、よほどすごい冒険者なんですかね」
身形こそは貴族だったが、貴族に護衛を任せるとは思えなかった。
趣味が悪いコスプレ冒険者、といったところだろうか。むしろ、そちらの方が不敬罪などに問われそうでもあるが。
念には念をと、俺とニオは散策を続行しながら彼らが通っていったと思わしき道を進んだ。
壁には大きな穴が開き、地面は抉られ、壁がなくなって解放感が上がっている店まである始末。
全てが黒こげになっていた辺りで、それらがライカの仕業と判断するに至った。
こう見ると、シアンと比べて過激だったミネアすら、子供の割に理性的だったのだと気付かされる。
普通に考えれば、ここまで規格外の力を与えられた子供が、理性でその行動を縛り上げるなど不可能に近いのだ。
残り四人の《星》がどんな子なのかが気になる一方、そんな七人が集結してこの国は大丈夫なのだろうか、と心配してしまう。
「カイトさん、そろそろ戻りましょっか」
「そうだね。俺も少し疲れたし」
そうしてこの日の散策は終わり、シアンの待つ部屋へと戻った俺達は夕食まで待つ事になった。
「どうでした?」シアンは問う。
「なんか、あれだね……奇抜だったよ」
「ライカ姫もすごかったですよね!」
話を聞いた途端、シアンは微笑んだ。
「善大王さんも相変わらずみたいですね」
「善大王?」
「――それはそうと、誰かに襲われませんでしたか?」
不意に物騒な話をされ、俺は真面目な顔に戻す。
「いや、特に見なかったけど……何かあったの?」
「この国は防衛力が弱く、犯罪者などが紛れている可能性があったので……何もなかったのであれば、それで問題はありませんよ」
妙な怖さを残しながら、ここで会話は終わった。




