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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第8.5話 日本的には夏休み
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日本的には夏休みⅠ

 ――盗賊の集団を倒し、身分が認められたカイトが歩んできた、三年間の内の出来事である。



 ベッドで横になっているシアンを見ながら、俺は首を傾げた。


「祭典?」


「はい、西にある雷の国で祭典を行うので、私は向わなくてはなりません」


 頭の中では大統領などが行っている、所謂西洋的な物を思い浮かべてしまう。


「どんなお祭り?」


「異世界の文化を取り入れたもの、と聞いていますね」


「……異世界人って多いの?」


「いえ、ごく稀に現れるくらいですかね。ですが、異世界の道具はたくさん来ているみたいですよ」


 そういう事があるならば、最初に言ってほしいところでもあった。


「じゃあ雷の国に行ったら、元の世界に戻る手段が見つかるかもしれないね」


「そういう事ですので、カイトさんには護衛をお願いしますね」


「へぇ、護衛か。それくらいは朝飯前だよ」


 などと言い、俺はシアンの要求を何の迷いもなく受け入れる。


「他国の姫も集まるというので、覚えてもらっていた方がいいかもしれませんね」


「まだ会った事もない子が多いんだろうなぁ。シアンの話だと、まだ四人とは面識がないからね」


「そうですね。ライカちゃんにも、アルマちゃんにも、ライムちゃんにも、フィアちゃんにも会った事はありませんからね」


 言われてみても、やはり全員がどんな子なのかが分からなかった。


 ただ、シアンが巫女と呼ばれている事からも《星》は女の子だけの同類だと判断ができる。


 ちなみに、同類内では《星》と呼ばれているシアン達なのだが、本人曰く「《星》は役職で、《巫女》は呼称のようなものですよ」との事。


 俺にもそんな呼ばれ方があるのかと思ったが、歴史の表舞台に立ち続けている《星》と違い、《太陽》も《月》も認知はされていないらしい。


「こっちの世界のお祭りは初めてだし、楽しみだなぁ」


「きっと面白いですよ。雷の国は水の国と違って奇抜ですから」


「奇抜かぁ、早く見てみたいなぁ」


 妄想に浸りだす俺を、シアンはじっと見てきていた。


「あれ、どうしたの?」


「いえ、奇抜というのは皮肉ではないのですよ? 本当に変わっていて、面白い国なのです」


 何を言われているのかよく分からなかったが、シアンがどちらとでも取れる事を言っていた事に対して、反省していたのだろうと一歩遅れで気付く。


 何分察しが悪く、悪意を肯定しないだけに、俺は全く思いもよらなかった。


 ただ、こうした事を他国でしたらならば問題になりかねない、シアンならともかく、平民の俺ではなおさら。


「精進しておくよ」


「えっ? ……あっ、の……お願いします?」


 困惑しきっているシアンを他所に、俺はもう一つの考えを巡らせ始めた。


 せっかくのお祭りなのだから、ニオを連れていった方がいいのかどうか。


仮にも国が違うという事もあり、部外者立ち入りは禁止されているかもしれない。


 一応は身分保障がされている俺とは違い、ニオはそうした法的なパワーを持ち合わせていない事も含めると、かなり怒られそうな気がした。


「ねぇねぇ」


「どうしました?」


「ニオは連れて行っていいかな?」


 シアンは五秒ほど黙った後、笑顔で答える。


「いいですよ。他国に堂々と入れる機会は、早々ありませんからね」


「おっ、サンキュ」


 そうして、俺とニオとシアンは雷の国に向う事となった。


ニオについてはほとんど完全に独断決行だったが、きっと許してくれるだろう。

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