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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第十話 倒すべき相手と守るべき者
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倒すべき相手と守るべき者Ⅴ

ノックをした後に扉を開ける。


すると、そこには退屈そうな顔をしたフォルティス王が崩した格好で玉座に腰掛けていた。


「おっ、カイト君か。どうしたの?僕に何か用事?」


いつもは突っかかれるが、今回はニオの身分を守る為に戦わなければならない。下手に出る事も辞さないつもりだ。


「フォルティス王、ニオを解雇するというのは本当でしょうか?」


「畏まっているね、もっと気軽に呼んでくれてもいいよ」


「して、どうなのでしょうか」


「解雇にしないと面倒だからね。職を追われ、処刑(・ ・)される……これなら民も、何かをやったと勝手に思いこんでくれる」


 処刑、フォルティス王は確かにそういった。


「それはどういう事なんだ!」


「当たり前だ、あの女は国庫の金で生きていたんだよ。国で養っていた存在をどう扱おうが、僕の勝手じゃないか」


「なんでニオを殺す必要があるんだと聞いている!」


「まったく、そんな風に怒らなくても教えるよ。僕としてはね、カイト君を高く評価している。だからこそ、迫る戦争時にはその力を水の国の為に役立てて欲しい」


 水の国、と言っているが、この男にとってそれは大義名分でしかない。


 今までの暴虐をみてきたからこそ、それが分かってしまうのだ。


「本当は、自分の為だろ?」


「違うね、僕は初めから水の国の事を考えている」


「嘘はそのくらいに——」


「そう、この世界最強の軍国にする為には、君の力が必要なんだよカイト君!」


 軍国、それがどれほど愚かしい発言かは、異世界人の俺にすらよく分かっている。


「文化の国でもある水の国を軍国になんて……」


「文化なんてどうでもいいよ。僕からすれば、強さこそが絶対。強い人間は生きる価値がある……それどころか、生きていて然るべきなんだ」


なに一つとして迷いのない、悪い意味で純粋なフォルティス王に気圧され、俺は黙り込んだ。


「だけど、文化だ芸術だなんていう、軟弱な人間は必要ない。戦えない言い訳なんて、していいはずがないんだよ」


「なら、戦えない人の代わりに戦う、それでいいじゃないか」


「馬鹿馬鹿しいね。その戦えない人を全部根絶すれば、代用(リペア)なんかじゃなく、全員が己の役目に戦える主要(オリジナル)になれるんだよ! その方が素晴らしいとは思わないかな? 強者の君になら、きっと分かるはずだ!」


 英語教師の如く、追い立てるような演説風景を前に、俺は何も言い返す事が出来ない。


 論理的な会話が苦手である以前に、フォルティス王は誰よりも子供で、純粋なのだ。


 だからこそ強く、だからこそ芯がある。


 どれほど間違っていても、彼のその力強さはどんな無理も道理も破壊していくような勢いを持っていた。


 小学生同士でバリア合戦をするように、フォルティスは論拠を潰し、彼の正義という理不尽を最優先事項として押し出していた。


 これでは勝負にならないどころか、こちらが敗北を認めるか会話を中断する以外に道がない。


「俺は間違っていると思うよ」


「そうか、少し残念だね。しかし、君もまた国庫を食い荒らしている……つまりは国の所有物だ。不満があったとしても、命令には従ってもらうよ」


「僕はフリー、よくてシアンの私用騎士程度のはずだけど」


「それは屁理屈というものだね。それに、カイト君が戦わないのは勝手だけど、その場合は余計な犠牲者がでるね。君はそういうの、嫌いだろ?」


 見透かされたような態度を取られ、俺は表情を厳しくした。


「安心しなよ、カイト君程ならば戦場での扱いは将軍……騎士団なら団長クラスで扱う。報酬も弾むよ」


「ならその報酬はいらないから、ニオの助命をしてほしい。それなら、俺は提案を呑む」


「面白い事を言うね。君は強者でありながら、足手まといでしかない弱者を救うのかい?」


 相も変わらないフォルティス王の態度に苛立ちながらも、俺は判断だけは冷えさせる。


「命を賭けて救ったんだ、守り続けないと損、という事くらいはフォルティス王にも分かるはずだけど」


無理だと、不可能だと分かっていても俺は諦めたくなかった。


しかし、そうした俺の考えを嘲笑うように、フォルティス王は平然とした様子で口を開く。


「その命を賭けざるを得ない状況を作ったのは誰なのかな?」


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