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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第十話 倒すべき相手と守るべき者
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倒すべき相手と守るべき者Ⅰ

 意識は戻るが、俺は世界を飛ぶ少し前、絶命寸前という最悪の状況からのスタートとなる。


「もうちょっと、気の利いた状態に出来なかったのかな」


「貴様ッ――」


「でもこれで十分!」


 俺は残っていた力を振り絞り、狂魂槌を放った。


 その一撃がただの一発で相手の意識を奪うと知っていただけに、この時点で勝負がつくとは予想できている。


 ライアスは倒れるが、それとほとんど同時に俺もその場に倒れる。


 傷の状態は世界を移動する前と同じ、きっと死の間際に次元転移がおこなれてしまっただけなのだろう。


 誰が行ったかは分からないが、少なくとも勝負を終わらせるには十分な機会を与えてくれた。


 父さんに会えなかった事は未練になるが、元の世界を見て、その上で俺はこの選択を信じ抜く事が出来ている。思い残す事など、あるはずがなかった。


 そのまま全てを投げだそうとした時、ニオの声が耳に届く。


「カイトさん! 死なないでください、カイトさん!」


 そうだ、俺はまだ死ぬわけにはいかなかった。


 この場にニオだけを残しては、生き残れるはずがない。そんな事を一瞬でも忘れるなど、俺はどれだけ追い詰められていたのか。


 生命の活力が充填されていくと同時に、俺は起き上った。


「あはは、どうにか生きていたみたいだね」


 俺は頭を掻きながら自嘲気味に笑うが、ニオは瞳に涙をいっぱい溜め、抱きついてくる。


「本当に、死んじゃったかと思いましたよ! もう、心配させないでください」


「それはこっちのセリフ。俺のせいでもあるけど、ニオが攫われて心配したんだからね」


 自然と痛みはない。傷口は残っているが、体にもさほど影響はないように思えた。


 皮肉にも、向こうの世界で友人が指摘してくれたからこそ、もう一つの隠された能力に気付けたのかもしれない。


「生きているならばさっさと手を貸せ! 俺も決して楽ではない!」


 そこでウルスの存在を思い出し、俺は血が噴き出したままだが、黒ポンチョの集団に向っていった。


 元よりウルスが大幅に減らしていた事もあり、十分も待たず敵の九割を制圧する。


 それで戦いは決着、そう思い込んでいただけに、俺は傷の治療もせずにラストスパートを掛けた。


 刹那、途轍もない殺意が周囲に撒き散らされ、空気が変わる。


 それに気付いたのは俺だけではなく、ウルスも黒ポンチョ達も気付いたらしく、足を止めた。


 倒れている黒ポンチョ達を避ける事なく踏みつけ、黒いマント――サイズが小さいのでケープとも言える――を羽織った者が現れる。


 その顔には仮面、その手には螺旋状の刃を纏わせた突撃槍(ランス)


 間違いない、ウルスの言っていた悪い同類だ。


「これだけ増員し、ただの一人も倒せんとは――」


「久しいな、《雷の月》」


 ウルスは一人、素手のまま仮面男へと近づいていく。


「貴様はあの時の……再び計画を邪魔するか」


「残念ながらその通りだ。そして、本隊の方にも手は打ってある」


 本隊、その言葉を聞いた途端に、一つの予想を立てた。


 非公認とはいえ、水の国に属している同類は俺だけになっている。


 同類が莫大な戦力として運用できる事は周知の事実とし、敢えて組織はニオを囮に俺を遠くへと誘導し、空になった水の国を襲おうとしているのではないか。


 ミネアもいない。シアンは戦えるかどうかわからない。そんな状況の水の国に組織の人間が現れれば、すぐに総崩れを起こしてしまう事だろう。


「《放浪の渡り鳥》か」


「それもまた少し違う。悪の組織を潰すには、お誂え向きの人物に任せてきた。こう言えば分かるだろう?」


 間違いない、あの善大王だ。


「面倒な真似を」


「面倒? 安心しろ、その部隊は壊滅させられている頃だろう。都合とはいえ、最強の《星》も善大王には同行していた」


「《天の星》……か。初めからそのつもりで私をこちらに誘導したか」


「そうだ。《水の月》はまだまだひよっこ、それでも俺が適当に手を抜いても遅れは取らない戦力は組めた――後はお前さえ倒せば終わりだ」


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