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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第二話 カイトとニイトと就職活動と
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カイトとニイトと就職活動とⅥ

「無理しないでください」


 シアンはお姫様だというのに、世話係の一人もいない俺の看病をしてくれた。


「なぁ、なんでシアンは俺に良くしてくれるんだい? 俺はただの流れ者のはずだよね」


「……最初は可愛そうだと思ったからですよ。でも、カイトさんが自分の身をすり減らしてでも、人助けをしているところを見て……憧れてしまいました」


 頬を赤らめているシアンを見て、俺は急に悪い気がしてくる。


 理由がなかったとはいえ、今まで俺は正体を隠してきたのだ。ただの迷い人として憐れみを覚えてくれていたとすれば、嘘をついたにも等しい。


「シアン、俺は君に黙っていた事がある」


「何ですか?」


「俺はこの世界の人間じゃないんだ」


「知っていましたよ」


 俺は驚くが、シアンは口許を隠してお淑やかに笑った。


「何で知っていたんだい? それに、知っていたならなんで――」


「カイトさんが言ってくれなかったのと同じですよ。聞かれないのに言うのは、あまり良くないですからね」


 俺も隠していただけに、これには異論を出せない。


「それに、カイトさんの黒い髪……すごく珍しいんですよ。今ではほとんど残っていない種族か、異世界人以外には考えられません。そして、カイトさんはその種族じゃなかった――これだけで分かりました」


 言われてみれば、青い髪や茶髪や金髪こそいたが、黒髪は一人も記憶にない。偶然だと思い込んでいだけに、この世界では存在しないという説を考慮していなかった。


「なら、なんで助けてくれたの? 流れ者なんかよりも、よっぽど面倒な奴だと思いそうだけど」


「理由は同じですよ。カイトさんが真っすぐで、それに憧れたからです。それと……」


「それと?」


 俺が聞き返すと、シアンは僅かに俯き、髪で目を隠しながら頬を染める。


「その、異世界の話を聞かせてほしい、と思いまして」


「……なんだぁ、そんな事だったんだ」


「わ、私は気になっているんですよ!」


「分かっているよ。じゃあ、何から話そうかな」


 シアンが顔を挙げた時、目には煌めきが宿っていた。興味津々とした様子で瞳を輝かせ、若干興奮しているように口許を緩ませている。


「いっぱい、いっぱい聞かせてほしいです」


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