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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第八話 放浪するベテラン冒険者
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放浪するベテラン冒険者Ⅶ

「それで、聞きたい事って何かな?」


 少し話をしてから迎えに行くから、それまで待っておくようにとシアンに頼んでから、俺はウルスと話を始める。


「カイトは異世界人だな?」


「そうだね。元は日本って国にいたけど」


「ならばなぜ、同類(・ ・)の力を持っている」


 同類、久しい単語に俺は表情を硬くしてしまった。


「難しい事は聞いていないはずだ。カイトとて、事情を知らないと言い張るつもりもないだろう?」


「ところが、俺もその事情は知らないんだよ。この世界に来て、狂魂槌を使い始めてから《水の星》の力が目覚めた事は知ってるけど……ダーインさんも深くは教えてくれなかったからね」


 ダーインの名前を出した途端、ウルスは顔を顰める。


「杯のダーインを知っているのか?」


「えっと……ウルスさんも?」


 互いに頷くと、若干だが共通認識を持った事で親しみが湧いてきた。


「二年か三年前――この世界に来てすぐだね、その時にシアンが呼んでくれて、色々聞けたんだよ」


「あいつは光の国の貴族だったな……なるほど、事前に同類と接触していたならば問題はない」


 どうして安心しているのか分からず、俺は素直に問いを投げかける。


「何の事かな?」


「他の同類と会った事は」


「ミネアとヴェルギンさんとシアン……あと話してはいないけど、ティアって子も知っているね」


「雷親父とまで接触していたのか。やはり異世界人の同類というのは悪目立ちするらしい」


 同類の世間は思ったよりも狭いようだ。ウルスさんはほとんど全員を認知しているように見える。


「エルズという少女は知っているか?」


「あっ、その子は前に話したよ。何でも友達が危ないからって医者を頼まれたんだけど、いざ行ってみたら誰もいなかったんだ」


 これまたエルズまで知っていたらしく、ウルスは頭を抱えだした。


「その娘も同類だ。《闇の太陽》という精神干渉系統の使い手だが、その様子だと何もされてはいないらしい」


 なぜか驚きはない。


 むしろ、通りで《魔導式》なんて物をあの年で使えたわけだ、などという納得の文章が頭に浮かびあがる程だ。


「それで、他の同類がどうしたの?」


「カイトは会っていないらしいが、同類にも危険な奴は存在する。過ぎたる力を振い、この世界の秩序を脅かすような者が」


 そう言われても、俺は実感に乏しい。


 なにせ、最初に出会ったシアンは俺を助けてくれた。次のダーインさんは力の使い方を教えてくれて、その次のミネアは術や《魔導式》や《導力》――俺は覚えられなかったが――を教えてくれたのだ。


 雷親父、などという硝子を割ったら怒りそうな呼ばれ方の師匠もまた、俺に神器の力を伝授してくれている。


 そんな人達の中に、悪人が混じっているなど、俄には信じがたいのだ。


「少なくとも、新世代組にまずい奴が一人いる事は分かりきっている」


 それにしても、どんな人がその悪人なのだろうか。これに関しては信じたくはなくとも、知りたい。


「どんな人なんだい?」


「破壊の力を持つ《滅魂槍》の使い手。おそらくは《雷の月》と思われる者だ」


 《月》という事は俺が属する側の同類のようだ。


 俺としては、ダーインさん以外の前例を知らない為に、《月》にいい人が集まっているのかどうかは判断が出来ない。


「《雷の月》……かぁ」


「仮面に黒いマントを羽織っていた。遭遇すれば、おそらくすぐに分かるはずだ」


 刹那、俺の頭の中にはフラッシュバックのように、槍を突き付ける仮面の男のイメージが浮かび上がった。


突撃槍(ランス)型で、その槍部分に絡みつくような螺旋の刃がついた槍……」


 記憶のままに槍の造形を話してみると、ウルスは驚いたような顔をする。


「カイトは遭遇していない、それで間違ってはいないな?」


「まだ会っていないよ」


「ならば、なぜ滅魂槍の外見を知っている」


「夢で見ただけ……かな」


 素直に答えた瞬間、ウルスは呆れたような態度を見せた。


「神器のホルダーならば予知夢のようなものを見る事も、そこまでは珍しくはない。だが、推測や憶測で言うのはあまり感心できないな」


「いやぁ、ついつい」


 一度ため息をついた後、ウルスは真剣な顔つきになる。


「おそらく、ティアの件にはイーヴィルエンターが関わっている。気になったとしても、出来るだけ干渉するな」


「イーヴィルエンター……」


「間違っても、カイトは力の使い方を違えるな」


 それだけ告げると、ウルスはその場から立ち去っていった。


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