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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第八話 放浪するベテラン冒険者
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放浪するベテラン冒険者Ⅴ

 医者を連れ、エルズの指定した場所に行ってみたところ、そこには誰もいなかった。


 聞いたところによると、少し前までは二人の冒険者が滞在していた事は事実だったのだが、気付いた時にはいなくなっていたという。


 シアンが呼んでくれた医者に謝罪を述べた後、俺は単身でエルズの捜索を開始した。


 それから何日も経ち、一人の冒険者が牢獄へと幽閉された。


 聞くところによると、有力貴族の一人に抗い、その従者を虐殺した罪に問われたらしい。これが事実ならば、受けて当然の報いと言えた。


 だが、どうもそうとは考えづらかった。これもまた根拠なき推測や憶測にすぎないとはいえ、意図して行ったとは思えない。


 その冒険者が処刑される日、俺はシアンの護衛として付き従い、牢獄の入り口付近を見る事が出来る特等席へと向った。


 俺としては処刑など見たくなかったが、その者が本当に悪かどうかを調べたくはある。


 もしも、そうでないと確信できたならば、シアンには悪いが助けに入らせてもらうとしよう。


 大勢の観衆の元に現れたのは、かつて俺が会ったエルズと、緑色の髪と瞳を持つ少女だった。


 あの時、ただの迷子と思っていた幼女が冒険者だった事は驚きだったが、それ以上に興味を引かれたのはもう一人の少女の方。


 頭にはシアンやミネアと同じ、妙に目立つアホ毛が生えている。


 冒険者、貴族の護衛を虐殺する程の力、アホ毛、それらが導き出した答えはただ一つだ。


「シアン、あの子は君の同類なんだよね?」


「そうですよ。打てる手は打ちましたが、あとは間に合ってくれるか……ですかね」


 シアンが意味深な事を言ったかと思うと、群衆を割いて一人の男が現れる。


 全く見覚えのない男なだけに、俺はさほど反応を示す事はなかったが、隣のシアンは目的のカードが来た時のような喜びの表情を浮かべていた。


「善大王さん、やっぱり来てくれたんですね」


「善……大王?」


「この世界に二人いる最高権力者の一人ですよ」


「なるほど。大統領みたいなものね」


 同類を助ける為にそんな大物を呼ぶとは、いつも思うが、シアンはこうした場では割と手段を選ばないように思える。


「カイトも会った事がありませんか? カイトが修行に行った際、ミネアちゃんと一緒に火の国へと向かったはずですが」


 言われてみると、あの馬車にはもう一人誰かが入っていた気がした。


 何を話しているかは分からないが、どうにも冒険者二人組は許されたらしい。


 雨のような歓声が満ちている辺り、エルズともう一人の少女は人々に好かれている冒険者なのだろうか。


 なまじ、いままで碌な冒険者にあってこなかった事が原因で、俺としては疑わしくもあった。


「あの子、誰なの?」


「《放浪の渡り鳥》のティアちゃんです。《風の星》でもありますね」


 《放浪の渡り鳥》と聞き、俺はようやく理解する。


 幼いながらも、驚異の身体能力を持つとされている冒険者だ。


 それだけなら有名にならないが、彼女はその名の通りに各地を放浪し、困っている人の依頼を受けてまわっているとの事。


 高いランクではあるのだが、困っているならばえり好みせずに受けている為、民からの人気もこの通りだ。


「やっぱこっちの世界でやっている人はすごいなぁ」


 目に映る範囲の俺とは違い、ティアは世界各地で人を救って回っている。


 同じ力を持つ人間として、俺もそうした方が良かったのだろうか、などと僅かばかりの後悔を抱いた。


「……そういえばさ、最高権力者って二人いるんだろ? もう一人はどんな奴なんだい?」


「夢幻王ですね。私は見た事がありませんが、闇の国の王をしていますよ」


 善大王とは正反対のイメージを覚える名前。天を二分するような権力者だとすれば、二人の仲は悪そうである。


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