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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第七話 フォルティス防衛戦
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フォルティス防衛戦Ⅸ

「いやぁ、よくやってくれたよカイト君! やっぱり君は僕が思った通りの有能な(・ ・ ・)人間だったよ」


 誰かに似ていると思ったら悪の教典という映画に出ていた、教師役の人とそっくりだ。


 英語教師のようなハイテンションさ、という比喩が思い浮かんだのも、そこに起因していたのかも知れない。


「なんで盗賊達を事前に倒さなかったんですか?」


「ここまで到達できるなら、それでも構わないと思ったからだよ」


 相変わらず、フォルティス王はその他の人間の事を考えていない。


「騎士も兵士も、城までくれば戦うだろうし、それを越えてきたならそれなりに強い相手、ということだしね」


「盗賊と戦いたかったんですか?」


「いいや? 僕が興味を持つのは強者だけ。ただの雑魚、雑兵には何も感じないね。言うまでもないけど、カイト君は高く評価しているよ」


「それで、何で呼び出したんですか?」


 俺は半ば怒りながら、フォルティス王に本題移行の催促を行った。


「あれ? 嬉しくないんだ。騎士達はこうして呼び出してやるだけで喜ぶから、それで報酬となると思ったんだけど」


 無性に帰りたいと思うが、シアンが後ろで頭を下げているので、軽く流すことも出来ない。


「まぁいいや、なら本題に入るよ。君に騎士称号を授与してもいいと思っているんだ」


 俺はさほど驚かなかったが、後ろのシアンやフォルティス王の両脇に立つ男達は驚愕の表情を浮かべていた。


「シアン、それってすごい事なの?」


「はい。平民からの騎士称号授与は普通はあり得ないんですよ。訓練所の上位者が選抜に選ばれるくらいで、実績での授与ともなれば、零に近いかと」


 それを聞いて、俺はようやく驚く。


「どうかな? 僕としては妥当な褒賞だけど」


「…………騎士になったら仕事は増えるの?」


「当然さ。戦う事も、必然的に増えてくる」


「なら、止めておくよ」


 驚いたのはこれまたシアンと二人の護衛だけで、フォルティス王は朗らかに笑ったままだ。


「僕としてはそれでも構わないけど、断った理由くらいは聞いてもいいかな?」


「俺は人助けをしていたい。だから、その足を引っ張る職ならいらないと思っているんだ」


「なるほど、もったいないけど、それなら納得だ」


 フォルティス王が立ち上がろうとした瞬間、俺は一つの思いつきをする。


「代わりに一つ頼みがあるんだけど、それを受けてもらう事は可能かな?」


「なんだい? それなりなら叶えてあげるけど」


「この国で不自由しない程度の権利が欲しいんだ。今回みたいな事は起きないようにしたい」


 今回、平民という事で騎士の大半と交渉できなかった。


 だからこそ、火の国でもらった勲章のように、少なくとも話し合う機会だけでも手に入る権利が欲しい。


「そんな事か。うん、じゃあ良いよ。騎士称号の労働責務を解除する。勲章については追って送るから、それまでは普通に暮らしておいてよ」


 意外にあっさり要求は通され、俺は謁見の間を出た。


 自室にまで戻ると、シアンは口を開く。


「カイトさん、あんな無茶はしないでください。寿命が縮まるかと思いました」


「ごめんごめん、でも必要だと思ったからさ」


 シアンはため息をついた後、俺の顔を見合わせた。


「でも、今回は本当にありがとうございました」


「いえいえ、どういたしまして」


「……私、本当はすごく怖かったのですよ」


 急に真剣な顔つきになった事で、俺は事態の深刻さを悟る。


「よく、あんなに頑張れたね」


「はい……カイトさんが助けてくれるって思っていましたから、勇気が出せました」


 一筋の涙が流れ、シアンは俺に抱きついてきた。今度は抱擁というより、泣きついてきているという感じに近い。


「あの時、カイトさんが助けてくれなかったら、私は……怖かったよ、本当に怖かったの」


「よしよし、守れる時は俺がちゃんと守ってあげるからね」


 俺は不意に、シアンが俺を呼び捨てにしたことを思い出した。


「ねぇシアン。俺の事はカイトって呼んでくれよ。そっちの方が、気負わなくて済むし」


「でも……」


「俺だってお姫様のシアンを呼び捨てにしているんだから、おあいこだよ」


 そう言うと、シアンは涙を拭い、ぐしゃぐしゃになった顔のままで笑顔を見せる。


「は、はいっ……これからもよろしくお願いしますね、カイト」


「ああ、任せておいてよ!」


 この日以降、俺の知名度はさらに上昇する。


 色々思うところはあるが、なんだかんだ有名ならば有名で嬉しい気分になってしまう。


 少なくとも、元の世界ではこんな風に活躍する事は出来なかったんだ。おとなしく狂喜乱舞するとしよう。


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