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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第七話 フォルティス防衛戦
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フォルティス防衛戦Ⅷ

「くたばりやがれ! 貴族のオヒメサマよぉ――ッ!」


「カイト……さん」


「ごめんな、シアンを最後まで信じれ着なかった、俺のせいだから」


 毒付きのナイフを受けた俺は、最後っ屁で狂魂槌を盗賊に命中させ、そのまま合い打ちのように倒れ込む。


 力が入らず、体全体が冷えていくような感覚に襲われ、大男にされたのとは違う形で、死を覚える。


「カイトさん! 起きてください! カイト! 起きてよ!」


 意識が落ちる刹那、シアンが俺の事を呼んでくれた。


 シアンの作戦からはずれた行動をしたはずの俺を、ここまで心配してくれるなんて、シアンはやっぱりいい子らしい。


 いや、それははじめから分かり切っていた。


 こうして消えていく命を実感しながらも、シアンの声が聞こえないのがただただ狂おしい。


 突如として、目が開いた。これまたいつかのように、俺の自室天井が視界に収まっている。


「ここは……俺は、一体」


「カイトさんっ! よかった……本当に良かったです」


「シアン? ……あはは、また助けてもらっちゃったんだね」


 俺は笑いながらも、強く反省していた。


 あの作戦、無傷で勝利するという条件は俺によって失敗し、シアンが全力で成功にまで筋書きを立てたにもかかわらず、ブラスト達との約束まで違えている。


「カイトさんは、間違った事をしていませんよ」


 俺は感情が表情に現れやすいらしい。


 今回は神妙に反省しようとしたが、それもシアンに見切られてしまった。


「そんな、慰めは嬉しいけど」


「慰めなんかじゃありませんよ。私はあの時、盗賊さんを倒す事を躊躇いませんでした。策略で不意打ちを狙っている事も分かっていましたし、ここまでした時点で話を聞く気はなかったのですよ」


「なら、やっぱり俺が……」


 シアンは俺のベッドに腰を下ろすと、俺を抱きしめる。


「私は、カイトさんみたいに誰もを信じたいのですよ。ですから、出来ない私の代わりにしてくれたカイトさんには、とっても感謝をしています」


 それは建前か本音か、俺には分かりかねた。


 シアンのように頭がよければ、こんな風に悩まなくてもいいのかもしれない。でも、俺は希望だけを見ている。


「俺は、シアンが行っている事が本当だと信じるよ。だから、ありがとう」


「やっぱり、カイトさんは信じてくれるんですよね。昔も言いましたけど、そういうところが好きなんですよ、私は」


「いやぁ、それほどでも」


「では、本題に移りますね」


 役人のように、シアンは素早く切り替えた。


「本題というと」


「今回の盗賊の一件です。ブラスト兵長はこの件に関し、契約が不履行だったとは思っていないですよ」


 結構頑固に見えて、あの人は正義感が強い。こうして柔軟に対応してくれたのはありがたいばかりだが。


「そして、お父様からお呼びが掛かっていますカイトさんが目覚めたので、今すぐにでも向かいたいのですが……」


「俺、あの人好きじゃないんだよなぁ……悪人じゃないんだろうけど、俺の世界のサイコパスっていうのにそっくりなんだよ」


 悪行を悪行と認識せず、狂気を平常として犯罪行為を起こす人間。


 フォルティス王の場合は善と悪がないというよりは、自分の正義がそれらの要素を打ち消しているようにも思える。


「サイコパス?」


「無差別殺人鬼みたいな、悪い事しても何とも思わない人だよ」


「そう……ですか。確かにそうかもしれませんが」


 妙にシアンのテンションが下がった事で、俺はまた余計な事を行ってしまったのだと気付いた。


「あっ! また、言わなくて良い事を言っちゃって、ごめん」


「いえ、そう見えるのは仕方ありませんから」


 部屋の空気がかなり悪くなってしまい、俺は立ち上がった。


「よし! じゃあ早く行こっか。夏休みの宿題もそうだけど、嫌な事は早く解決するに限るよ!」


「……そうですね。では、行きましょうか」


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