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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第二話 カイトとニイトと就職活動と
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カイトとニイトと就職活動とⅣ

「それで、どうして見張りをしていなかった!」


「はいっ!」


「はいではないッ! 答えろと言っている!」


「はいっ! メイドさんの手伝いをしていました!」


 困っている人を助けるのは当然、の精神はこの世界に来ても忘れられず、ついつい廊下で出くわしたメイドさんの仕事をしてしまった。


 洗濯から窓拭き、さらには配膳などほとんど全ての仕事につき合っていたところ、五時間程を費やしてしまったらしい。


 城の中で俺の姿が見られていなかった事もあり、こうして兵長にお叱りを受けているのだ。


「お前は兵士だろうが! 侍女の仕事は侍女にでもやらせておけばいいのだ!」


「兵長ッ!」


「なんだ!」


「メイドさんは指を怪我しているのです! しばらくは手伝わせてもらえないでしょうか!」


 ただ指を怪我しただけならばともかく、メイドさんの仕事は日本の労働基準法を明らかに無視した、苛烈な仕事をさせられている。


 あれでは傷ついた指がすぐには治らず、余計に手間取る事だろう。ならば、せめてその間だけでも手助けをしてあげたい。


「お前は兵士だ! 兵士はただ見張っていればいいのだ!」


「ですがッ!」


「お前は姫様の推薦で特別に許しているだけにすぎない! 幾度として文句を言うのであれば、仕事を辞めてもらう、それでもいいなら勝手にしろ!」


「はいっ! 勝手にさせてもらいます!」


 出社初日、俺は再び無職に返り咲く事になった。


 しかし、仕事としてのしがらみがなくなった事もあり、無事にメイドさんの仕事手伝いは行える。


 傷が完治したのが三日後、その間は俺も手伝い、多くの仕事を行った。


 だが、当然と言うべきか給与が出るはずもなく、ただ働きでシアンの紹介してくれた仕事を投げてしまった。


 後悔こそしていないが、シアンには申し訳が立たない。


 その夜、シアンは現れ、非常に残念そうな顔をしていた。


「いや、なんかごめん」


「いえ、いいんですよ。それにカイトさんには兵士よりも向いている仕事がありますから」


「あるかなぁ……いや、なくても見つけなきゃね」


 異界の地で不安になりそうになるが、後ろを向いては前に進めない。


 それに、シアンは俺の身分を知らずにこうして養ってくれているのだ、それに応えなければ。


「カイトさんは人助けをしたいんですよね?」


「えっ? うん、そうかな……俺って困っている人見ちゃうと見逃せないからさ」


「なら警備隊はどうでしょうか。戦闘する事は増えるかもしれませんが、城下町で人助けをしても、さほど怒られないはずですよ」


「警察みたいな組織って事かな?」


 ついうっかり元の世界の言葉を言ってしまった。これでは理解できないと、そろそろ学んだほうが良いかもしれない。


「えっと、治安維持組織かな?」


「あっ、そうですね! 何か事件が起きたときにはすぐに対処してくれれば、それで良いと思います」


「ありがと! じゃあ早速、入隊させてもらえるように頼んでくるよ」


 椅子から立ち上がり、部屋の外に行こうとしたところ、シアンに呼び止められた。


「あの、私が頼みましょうか?」


「えっ、いいの? じゃあお願いしようかな」


「はい、任せてくださいね」


 シアンは微笑むと、俺に軽く一礼をしてから出て行く。


 今度はすぐクビにされないように頑張らないとな


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