フォルティス防衛戦Ⅳ
しかし、シアンは非常に子供ではあるが、こうした場面での動きは比較的上手に見える。
よく味方のお姫様キャラが、配下の物にはやんごとなき態度を見せて従わせるなどを目にするが、実際にもある事のようだ。
「して姫様、作戦というのは」
「単純ですが、比較的難しい作戦です――えっと、難度は高くないのですが、連携をうまくとらないといけない、という意味ですね」
ちょっと分かりづらかっただけに、この修正はかなり有り難い。むしろ、これは俺に向けて直したようにも思えるのだが。
「この作戦の要は皆さん、戦闘員十名です」
「あれ、俺じゃないの?」
口を挟んだ途端、兵士とブラストから睨まれ、俺は縮こまる。
「こほん、皆さんには私の護衛をお願いします。敵軍の正面から少数部隊で接触を図り、その間にカイトさんには、最後尾へと向ってもらいます」
「なるほど! 挟み撃ちって事だね」
「ちょっと違いますね。作戦実行時から、カイトさん一人で戦闘を行ってもらいます。数が減った時点で、護衛役の兵士さん達が戦闘に加わる形となりますね」
「何で最初から全員で戦わないの?」
疑問を言ってみた瞬間、またもや兵士達に睨まれた。
「狂魂槌は攻撃範囲拡散の能力があるので、相手の人数が減った場合に不便なのです。ですから、多人数の状態で大きく数を減らしてもらい、最終的には全員で総攻撃をしてもらいます」
師匠から習ったばかりの技術だが、シアンは初めから知っていたように見える。
教えてくれなかったのは意地悪ではないとして、修行をしていなかったら土壇場で使えるものではなかったような気がしてならないのだ。
「姫様が前衛に立つなど、フォルティス王に面目が立ちません」
「この作戦に私の存在は不可欠です。ですから、ブラスト兵長、そして集まってくださった兵士さん方に、私の命を任せますね」
「……分かりました。命を賭してでも、姫様をお守りします」
ブラスト将軍に続き、兵士達は全員が似たり寄ったりな事を言う。
男女平等、格差なしの日本に生きていた俺には分からないが、きっとこの世界では高貴な身分の人を守れる事は名誉なのだろう。
「では、私は最終調整してきます。皆さんは宿屋で休憩していてください」
自分が自分が、と兵士達が志願するが、シアンはお淑やかな様子でそれを断っている。
きっと、シアンにしかできない仕事なんだろう、と俺はすぐに判断して特には接触を図ろうとしなかった。
後少し、この村に到着する前に戦いが始まる。




