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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第七話 フォルティス防衛戦
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フォルティス防衛戦Ⅲ

「兵長、盗賊達はもうアックアに到着します。今にも動いていただけませんか!」


「……本当に無傷で倒せるのか?」


「はい!」


 兵長は椅子から立ち上がった途端、壁に掛けてあった長剣と盾を手に取る。


「分かった。では、ついていってやろう」


「兵長がきてくれるんですか?」


「私が行かなければ示しがつかないだろう! この件については、私が全ての責任を取る」


 以前こそは頑固者の上司とばかりに思っていたが、この土壇場では責任をもっくれるという、上司の鑑にも思えた。


「ありがとうございます!」


「既に話は通してある。私とカイトは馬車でアックアまで向い、その間に作戦を聞くとしよう」


「……他の隊員は?」


「今言っただろう! 既に話は通してある――第一接触予定地点であるアックアに、お前の指定した九人を向かわせている!」


「はっ、はい! ありがとうございます!」


 その後、シアンから用意してもらっていた高速馬車に乗り込み、早速俺と兵長はフォルティスを発つ。


 揺れる馬車の中、兵長は困惑したように内装を眺めていた。


「どうしたんですか?」


「カイトが姫様のお気に入りだとは聞いていたが――ここまでの馬車を用意できるとは」


「そりゃ、シアンが作戦の立案者ですし、これくらいは貸し出してくれますよ」


 しばしの沈黙の後、兵長は驚愕の表情を浮かべる。


「姫様が?」


「はい。言ってませんでしたっけ? シアンが俺の他に十人居れば勝てるって言ってたんですよ。で、今はアックアの人を守る為に、先んじて向ったという形でして――」


「姫様の命令とあれば、騎士や警備隊からでも増援は呼べたであろう。なぜそれを先に言わない!」


 以前そのままの迫力で叱責を受け、俺は震え上がってしまった。


「す、すみません! うっかり言い忘れてました!」


「……まぁいい。私としてはカイトの言葉を信じたいと思えたのだ。姫様の命令でなくとも、力を貸してやった」


 警備隊長の事もあり、俺は不意に一つの事に疑問を持つ。


「なんで兵長は、俺の言葉で動いてくれたんですか? 確証もないし、自己保身の強い官僚の人達はみんな断るのに」


「仮にもカイトは姫様の危機を幾度となく救っている。そして、《星霊》の件についても聞き及んでいるのだ――兵を出せなかった事は、私も歯がゆく思っていた」


 俺の正義をいの一番に否定した兵長だった、それ以上に正義感を持ち合わせていた。


 多くの人と接触を図ってきたが、このような真剣な態度で国を思っていた人は何人いただろうか。


「もし、私が力を貸さなかったとして、お前は一人で向かったのだろう?」


「ええ、まぁ……そうなるかもなーとは思っていましたね」


「そうだろうな。あの時は仕事としてお前を愚と罵ったが、そうでなければその行動に間違いなどあるはずがない」


 それについては俺も反省している。


 人助けはいい事であり、出来る事ならば進んでやった方がいいのは当たり前だ。


 だが、例えばバイトしている最中にその仕事をほったらかしてやるのは、決して正しい行動ではない。


 俺はそれを理解した上で、人助けを優先したいと考えて無職の道を選んだ。


 シアンという救いの手があったからこそ、選べた道でもあるのだが。


「この戦いではお前と私は戦友だ。私の事は、ブラストと呼べ」


「それが兵長の名前ですか」


 兵長は無愛想に頷き、首を窓の方へと向けた。


「うん、よろしく頼むよ、ブラスト」


「敬語!」


「はっ、はい! よろしくお願いします、ブラストさん!」


 時は進んで行く。だが、今進んでいる時は無意味な時ではなく、歩み進んで行くような経過だ。



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