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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第七話 フォルティス防衛戦
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フォルティス防衛戦Ⅰ

 フォルティスに到着した俺は全速力で城へと向い、シアンの部屋へと入った。


「シアン、どうしたんだ!」


「あっ、カイトさん来てくれたんですね」


 ミネアが呼びにきたというのに、シアンはさほど焦っているようには見えない。


 走っている最中に見ただけだが、人々も慌てている様子はなかった。


「……何があったの?」


「大勢の盗賊がフォルティスに攻撃を仕掛けようとしています。この様子なら、三日後には到着するかと」


 平然としているシアンとは違い、俺は普通に驚いてしまう。


「それってまずいじゃないか! まずフォルティスに住む人を避難させて、後は俺が向って――って、水の国の兵力を使えばいいんじゃないかな」


 冷静になった瞬間、あっさり答えは提示された。


「それが、盗賊は三百人以上いるという話なんですよ。上位の騎士は参加取り下げ、下位の騎士も同じくです。警備隊や兵士達も数に怯えて参加はしないようですね」


「えっ、じゃあ誰が対処するの?」


 シアンは俺の方をじっと見てくるが、まさかそういう事ではないだろう。


「ん? 誰?」


「カイトさん、お願いできますか?」


 どうやらそういう事だったらしい。


「よし、じゃあ俺に任せてよ! ちゃんと向こうで修行してきたから、たぶん三百人でもどうにかなるからさ」


 根拠はないが、自信はあった。勝てるというイメージもあった。


「では、十人くらい助けを呼んできてもらえますか? 兵士でも警備隊からでも、出来れば騎士からでも構いません。戦闘経験のある人を揃えてください」


「うん! 任せてよ……って、なんで別の戦力が必要なの?」


「カイトさんと十人がいれば、全員無傷で勝つ算段があるから……ですかね」


 シアンは笑うと、城の外を眺める。


「できれば、皆さんに怪我を負わせたくなるので、カイトさんお願いします」


「それはいいけどさ、シアンが言った方が早いんじゃないかな」


「それもそうですけど、出来るものならカイトさんと協調が取れる人がいいのです。集団戦、それも少数戦なら連携は重要ですからね」


 前々から思っていたが、シアンは子供だというのに戦い慣れている気がした。


 直接戦闘型のミネアとは違って、シアンは軍師のように作戦立案する側ではあるが。


「でも、俺に味方してくれる人はいるかな」


「そこは――頑張ってください!」


 目をぎゅっと閉じ、子供らしい真正面に感情が表されている。つまりは、具体的な方法の指示が一切ない、という事なのだが。


 全てが全てをシアンに任せるわけにもいかず、俺は部屋を出てから人探しを始めた。


「盗賊の迎撃? そんなものは冒険者にでも任せとけばいいさ」


 上位の騎士はこんな風に言う。


「それは騎士の仕事じゃない。本国に入ってから迎撃しても遅くはない」


 これが下位の騎士の意見。


「俺達がやらなくても騎士団が動いてくれるだろ」


 警備隊の考えはこんな感じ。


「我々は王宮の警護をしているのであって、外部に戦力を回すわけにはいかない」


 とまぁ、兵士もこのように言ってくるので、取りつく島などない。


 これを約二日掛けた時点で、俺は諦めかけていた。


 皮肉にも、自分が貴族に嫌われているのは明らかだが、他者から見てもいい存在に映っていない事は理解している。


 最悪の場合は俺一人で戦おう、そんな風に考えていながらも、最後の砦として兵長のいる部屋へと向った。


 扉を開けて入ってみると、そこにはいつもと変わらない調子で兵長が座っている。


「何だ」


「兵長、盗賊の件については」


「無論、聞き及んでいる。兵士側の意見としては、王宮の警備に全力を当てるとも」


「……無理を承知でお願いします! 迎撃部隊に十人貸していただけないでしょうか」


 兵長は渋柿でも食べたような顔をし、俺を睨みつけてきた。


「そういう事を頼むのであれば、警備隊か騎士に回せ。兵士がどういう仕事かは、理解していると考えているが」


「十人だけでいいんです! それで誰も傷つかず、無傷で倒せますから」

 数秒の間を開けた後、兵長は疑惑の目を向ける。


「無傷だと?」


「は、はい! 無傷です」


 兵長は目を細めた後、俺から視線を外し、背中を向けた。


「少し考えてやろう……だが、それは今ではない」


「ありがとうございまっす! 出来るだけ早くに頼みますよ!」


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